フリードのスロープ仕様車からクロスターへの変革

  • ホンダ・フリード

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初代から大人気を維持している「フリード」の良さをひとことで表現するならば、街なかでも遠出でもちょうどいいサイズで、3列シート7人乗りの設定があって、ミニバンとしてもしっかり使える、ということになりますが、私はもうひとつ、陰の立役者がいると思っています。

それが、当初は福祉車両の車いす仕様車として設定されたスロープ仕様。これは「N-BOX」などと同様に、ホンダ独自の低床技術で実現した広大な空間と低い地上高を最大限に生かしたモデルとなっていて、これまでも、市街地で使うことの多い人の福祉車両として重宝されてきました。

でもこれ、過去のモデルでも「福祉車両だけに使うにはもったいない!」という隠れファンが多く、ミニバイクを積む時に便利だったり、バンドマンが楽器を運ぶために使っていたりと、なるほどと思う場面で活躍していたのです。開発チームもそれを把握しており、新型フリードでは「用途が限られる、使用期間が短い、価格が高い」といった福祉車両のイメージから完全脱却するため、呼び名も新たに「3ウェイユニバーサルムーバー」として生まれ変わっています。

その決意が見て取れるのが、スロープ仕様車をあえてアクティブなキャラクターの「クロスター」にだけ設定しているところ。日常の買い物やアウトドアなどのレジャーにも存分に使ってほしいとの思いがあふれているのです。試乗会場でも電動キックボードやパーソナルモビリティーを積み込んだり、キャンプ道具を満載にしたワゴンを積み込んだりと、ワクワクするような使い方の例を見せてくれました。

その際のスロープを引き出す操作も、とっても簡単。リモコン式のボタンで電動ウインチを使って車いすや台車をラクラク引き上げることができ、荷物の向きが途中で曲がってしまっても自動で軌道修正してくれるなど、思わず使ってみたくなるところがいいですね。「私なら何を引き上げようかしら?」なんて妄想がふくらみます。

ここがすごく大事なところだと思うのです。実際にスロープ仕様の購入には至らなくても、フリードにはそうした「毎日を楽しくワクワクさせるチカラがある」というイメージ。それがフリード全体のイメージをアップしているのではないかと思います。

積載容量が先代から15リッターアップした広い荷室は、スロープを畳めば2段フロアとして使えるのもうれしいところ。もうひとつ、助手席リフトアップ仕様車もラインナップしていますが、車いすからの乗り換えはもちろん、足腰が弱い人でも頭や足先がぶつからない絶妙な動作で乗り降りがラクになるほか、アウトドアレジャーの時に野外でのチェアとして使っている人もいるそう。アイデア次第で、フリードはもっと自由な使い方ができるミニバンですね。

(文:カーライフ・ジャーナリスト・まるも亜希子)

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まるも亜希子さんが解説するホンダ・フリードの注目ポイント

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