【試乗記】ホンダN-WGN(FF/CVT)/N-WGNカスタム(FF/CVT)
- ホンダN-WGN L Honda SENSING(FF/CVT)/N-WGNカスタム L・ターボ Honda SENSING(FF/CVT)
素晴らしき人、ホンダに乗る
ホンダの軽ハイトワゴン「N-WGN」がフルモデルチェンジ。「New Simple!」をキーワードに、より日々の生活に寄り添うクルマとして開発された2代目は、どのようなユーザー像を想起させるクルマとなっていたのか? その仕上がりを、仕様の異なる2モデルの試乗を通して確かめた。
好調「N」シリーズが抱える問題点
ホンダにとって「N」シリーズがドル箱的存在になっていることは疑いない。2011年のスタート以来、わずか7年で累計販売台数が200万台を超えた。万々歳と言いたいところだが、悩みもある。シリーズの中で、「N-BOX」が突出した存在になっていることだ。2018年の販売台数は23.7万台で、登録車を含む新車販売台数で2年連続の第1位を獲得した。
「ダイハツ・タント」や「スズキ・スペーシア」と同じで、最大の売れ筋となったスーパーハイトワゴンのジャンルに属しているのだから当然ではある。しかし、ハイトワゴンのN-WGNが6.3万台というのはさすがに離れすぎだ。6年ぶりにフルモデルチェンジを受けた新型N-WGNの使命は、N-BOXの牙城を侵食することなく販売を伸ばすことである。
その意図は、エクステリアデザインを見れば一目瞭然だ。2017年に登場したN-BOXが先代の見た目を受け継いだのに対し、N-WGNは明確に方向性を変えている。N-BOXは特にカスタムモデルが立派さと力強さを強調していて、開発責任者の白戸清成氏は「デザインに関しては、北関東ではやはり『カスタム』に人気がありますね」と語っていた。しかし、少しずつユーザーの好みは変化しつつある。
2017年に出た「スズキ・ワゴンR」の「スティングレー」は“ストロング”をテーマにしていたが、少々苦戦しているようだ。今年フルモデルチェンジの4代目タントは先代モデルのイメージを引き継いでいるように見えるが、ゴテゴテ感はかなり減らしている。いわゆる“カスタム顔”ではあるものの、オラオラ系のコワモテではなくなった。三菱が「eKワゴン」から「eKクロス」に車名を変更してSUV風味を取り入れるなど、各メーカーが新しい道を模索している。
「ダイハツ・タント」や「スズキ・スペーシア」と同じで、最大の売れ筋となったスーパーハイトワゴンのジャンルに属しているのだから当然ではある。しかし、ハイトワゴンのN-WGNが6.3万台というのはさすがに離れすぎだ。6年ぶりにフルモデルチェンジを受けた新型N-WGNの使命は、N-BOXの牙城を侵食することなく販売を伸ばすことである。
その意図は、エクステリアデザインを見れば一目瞭然だ。2017年に登場したN-BOXが先代の見た目を受け継いだのに対し、N-WGNは明確に方向性を変えている。N-BOXは特にカスタムモデルが立派さと力強さを強調していて、開発責任者の白戸清成氏は「デザインに関しては、北関東ではやはり『カスタム』に人気がありますね」と語っていた。しかし、少しずつユーザーの好みは変化しつつある。
2017年に出た「スズキ・ワゴンR」の「スティングレー」は“ストロング”をテーマにしていたが、少々苦戦しているようだ。今年フルモデルチェンジの4代目タントは先代モデルのイメージを引き継いでいるように見えるが、ゴテゴテ感はかなり減らしている。いわゆる“カスタム顔”ではあるものの、オラオラ系のコワモテではなくなった。三菱が「eKワゴン」から「eKクロス」に車名を変更してSUV風味を取り入れるなど、各メーカーが新しい道を模索している。
N-BOXとの差異化を図る
新型N-WGNは、ほかのハイトワゴン、スーパーハイトワゴンとは異なる路線を選択した。ノーマルはどことなくレトロな雰囲気をまとわせつつも、わかりやすくカワイイ系の見た目にはしていない。カスタムはその名に反して力強さにはまったく関心がなく、むしろクールで都会的な空気が漂っている。両者に共通するのは、シンプルさを志向していることだ。
開発陣は、意図してN-BOXとの差異化を図ろうとしたようだ。先代N-WGNは“先鋭・主張・充足”というスローガンを掲げていたが、新型は“New Simple!”である。同じ土俵の上で競うのでは、ボリューム感の強いN-BOXにかなうわけがない。マーケットを食い合わずに別のターゲットを目指すための路線転換なのだ。トレンドははっきりとスーパーハイトワゴンのものとなっているが、ハイトワゴンを好む人々も多い。そこにフォーカスするためのキーワードが、“暮らし”である。
N-BOXも同じ流れの中で開発されていて、発表時には “本当につくりたいのは、いいクルマじゃなく、いい生活”というキャッチコピーが示されていた。ただ、N-BOXが家族の暮らしをメインに考えているのに対し、N-WGNは暮らしの中での1人でいるシーンが想定されている。自転車が積めるN-BOXほどの積載能力は持たないが、1人で乗るなら十分なスペースがあり、走りがいい。もちろん、時には家族を乗せることもできる。
ドライバーを重視していることは、運転席のつくりに表れている。チルトに加えてテレスコピックを採用したのは、ホンダの軽自動車としては初のこと。50mmの調節幅を持つシートのハイトアジャスターと合わせ、ベストなドライビングポジションをとりやすくした。アクセルとブレーキのペダルを従来モデルより右側に移したことも、自然な姿勢をとる手助けになる。
開発陣は、意図してN-BOXとの差異化を図ろうとしたようだ。先代N-WGNは“先鋭・主張・充足”というスローガンを掲げていたが、新型は“New Simple!”である。同じ土俵の上で競うのでは、ボリューム感の強いN-BOXにかなうわけがない。マーケットを食い合わずに別のターゲットを目指すための路線転換なのだ。トレンドははっきりとスーパーハイトワゴンのものとなっているが、ハイトワゴンを好む人々も多い。そこにフォーカスするためのキーワードが、“暮らし”である。
N-BOXも同じ流れの中で開発されていて、発表時には “本当につくりたいのは、いいクルマじゃなく、いい生活”というキャッチコピーが示されていた。ただ、N-BOXが家族の暮らしをメインに考えているのに対し、N-WGNは暮らしの中での1人でいるシーンが想定されている。自転車が積めるN-BOXほどの積載能力は持たないが、1人で乗るなら十分なスペースがあり、走りがいい。もちろん、時には家族を乗せることもできる。
ドライバーを重視していることは、運転席のつくりに表れている。チルトに加えてテレスコピックを採用したのは、ホンダの軽自動車としては初のこと。50mmの調節幅を持つシートのハイトアジャスターと合わせ、ベストなドライビングポジションをとりやすくした。アクセルとブレーキのペダルを従来モデルより右側に移したことも、自然な姿勢をとる手助けになる。
積載の自由度を上げる2段収納
暮らしに役立つ新しい工夫は、荷室にあった。従来モデルより180mm低床化し、2段収納を実現したのである。もともと床下収納ボックスとなっていたところを後ろからアクセスできるようにしただけのことだが、積載の自由度が上がって使い勝手がよくなった。ボードを使って2段ラックモードにすれば、下に重量物を入れておいて上段には買い物袋などを置くことができる。約730mmというボードの高さは買い物カートに合わせているというから、細かい気遣いが行き届いている。
背の高い荷物を積みたければ、ボードを折りたたんでシートの背後につるすローフロアモードにすればいい。2列目シートを前に倒せば、ボードを使ってフラットで広大な荷室として使える。収納力はこの手のクルマにとって商品力を左右する重要なポイントである。後席の下にぬれた傘を置けるリアシートアンダートレーを設置しているのは従来どおりだ。助手席前のインパネトレーには、スマホ2つを置くスペースがある。
試乗したのは自然吸気(NA)のノーマルモデルとターボのカスタムの2台。どちらのモデルにもNAとターボの2種のエンジンが用意されている。ボディーはN-BOXで採用された新プラットフォームをハイトワゴン用に最適化し、ハイテン材を多用したものだ。最初に乗ったのは「カスタム L・ターボHonda SENSING」。小径ターボの恩恵で低回転から十分なトルクがあり、アクセルを踏み込まずに済むから室内は静かである。
高速道路では渋滞追従機能付きになったアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使って走った。0km/hまで作動を続けるようになったわけだが、設定最高速度が135km/hになっていたことにも驚いた。以前は115km/hだった記憶があるが、一部の高速道路の規制速度が120km/hになったことに対応したそうだ。現在の軽自動車は十分な高速性能を備えているから、登録車と設定を変える必要はないのだろう。
背の高い荷物を積みたければ、ボードを折りたたんでシートの背後につるすローフロアモードにすればいい。2列目シートを前に倒せば、ボードを使ってフラットで広大な荷室として使える。収納力はこの手のクルマにとって商品力を左右する重要なポイントである。後席の下にぬれた傘を置けるリアシートアンダートレーを設置しているのは従来どおりだ。助手席前のインパネトレーには、スマホ2つを置くスペースがある。
試乗したのは自然吸気(NA)のノーマルモデルとターボのカスタムの2台。どちらのモデルにもNAとターボの2種のエンジンが用意されている。ボディーはN-BOXで採用された新プラットフォームをハイトワゴン用に最適化し、ハイテン材を多用したものだ。最初に乗ったのは「カスタム L・ターボHonda SENSING」。小径ターボの恩恵で低回転から十分なトルクがあり、アクセルを踏み込まずに済むから室内は静かである。
高速道路では渋滞追従機能付きになったアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使って走った。0km/hまで作動を続けるようになったわけだが、設定最高速度が135km/hになっていたことにも驚いた。以前は115km/hだった記憶があるが、一部の高速道路の規制速度が120km/hになったことに対応したそうだ。現在の軽自動車は十分な高速性能を備えているから、登録車と設定を変える必要はないのだろう。
NAモデルでも走りは活発
ノーマルの「L Honda SENSING」に乗り換える。インテリアの意匠は変わらない。ブラウンとアイボリーの2色使いで明るい印象になっているが、メーターパネルなどのデザインは共通である。エクステリアも共通部分は多く、ランプの形状を変えることで表情を変えている。金型の数は最小限に抑えなければコストがかかってしまう。シックであることを追求したカスタムに対し、ノーマルはニュートラルなデザインを目指している。
試乗車のボディーカラーは、新色の「ホライズンシーブルーパール」にホワイトのルーフを組み合わせたツートン。ルーフモールをなくしたことで、スッキリとした見た目になっている。走りだしてみると、やはり最初の100mほどは加速が鈍くてもどかしい思いをする。しかし、ガマンが必要なのはそこだけだ。スピードに乗ればターボ版に引けを取らない活発な走りを見せる。N-BOXも含め、スーパーハイトワゴンやハイトワゴンに乗るとターボでなければツラいな、という感想を持つことが多い。しかし、新型N-WGNはNAで十分だと思わせた。
エンジンはN-BOXのものと基本的に同じだが、エキゾーストマニホールドの形状を変更することで、触媒による排出ガス浄化性能を向上。さらにCVTの変速制御をセッティングし直し、アクセル開度に対してナチュラルな加速が得られるようにしたそうだ。このクルマの通常の使われ方なら、NAで不足を感じる場面はほとんどないだろう。価格差を考えると、NAモデルは相当に魅力的だ。
試乗会のランチタイムには、特別なランチョンマットで食事が提供された。9種類のシチュエーションで使われるN-WGNがポップなイラストで描かれ、「YOU MEET THE NICEST PEOPLE ON A N-WGN」と記されている。もちろんこれは、1963年にホンダがアメリカで展開した「スーパーカブ」のナイセストピープルキャンペーンへのオマージュだ。ちょっとした遊び心で用意したものだというが、N-WGNのコンセプトにぴったりハマっているように思える。56年後の日本のナイセストピープルには、シンプルなデザインで暮らしに役立つN-WGNがよく似合う。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
試乗車のボディーカラーは、新色の「ホライズンシーブルーパール」にホワイトのルーフを組み合わせたツートン。ルーフモールをなくしたことで、スッキリとした見た目になっている。走りだしてみると、やはり最初の100mほどは加速が鈍くてもどかしい思いをする。しかし、ガマンが必要なのはそこだけだ。スピードに乗ればターボ版に引けを取らない活発な走りを見せる。N-BOXも含め、スーパーハイトワゴンやハイトワゴンに乗るとターボでなければツラいな、という感想を持つことが多い。しかし、新型N-WGNはNAで十分だと思わせた。
エンジンはN-BOXのものと基本的に同じだが、エキゾーストマニホールドの形状を変更することで、触媒による排出ガス浄化性能を向上。さらにCVTの変速制御をセッティングし直し、アクセル開度に対してナチュラルな加速が得られるようにしたそうだ。このクルマの通常の使われ方なら、NAで不足を感じる場面はほとんどないだろう。価格差を考えると、NAモデルは相当に魅力的だ。
試乗会のランチタイムには、特別なランチョンマットで食事が提供された。9種類のシチュエーションで使われるN-WGNがポップなイラストで描かれ、「YOU MEET THE NICEST PEOPLE ON A N-WGN」と記されている。もちろんこれは、1963年にホンダがアメリカで展開した「スーパーカブ」のナイセストピープルキャンペーンへのオマージュだ。ちょっとした遊び心で用意したものだというが、N-WGNのコンセプトにぴったりハマっているように思える。56年後の日本のナイセストピープルには、シンプルなデザインで暮らしに役立つN-WGNがよく似合う。
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