【懐かしの名車をプレイバック】3代目ソアラ ビッグクーペの魅力にはあらがえない

  • 懐かしの名車をプレイバック ソアラ3代目3.0 GT S パッケージ

    ソアラ3代目3.0 GT S パッケージ

一世を風靡(ふうび)したあのクルマ、日本車の歴史を切り開いていったあのエポックメイキングなクルマを令和のいま振り返ってみれば、そこには懐かしさだけではない何か新しい発見があるかもしれない。今回は、当時最高のステータススシンボルとして君臨した、日本初の本格パーソナルクーペ「トヨタソアラ」の歴代モデルに注目する。

ゆとりあるボディーサイズと、ラグジュアリーな2ドアクーペのデザインが織りなす豊かさへの憧れから、3代目「ソアラ4.0GT」を手にした自動車ライター渡辺敏史氏。所有していたからこそ分かるその魅力を語ってもらった。

豊かさへの憧れ

1970年代のスーパーカーブーム、1980年代のハイソカーブームを横目に青春時代を過ごしてきた僕にとっては、ソアラは高性能と高級を兼ね備える日本車の代表選手といった趣のクルマでした。それでも、クルマの性格がラグジュアリーすぎることもあって、若かりし頃は自ら選んで乗るイメージがあまり湧きませんでした。同じようなプライスなら「スープラ」とか買うよね普通? みたいな感じで。

そんな僕がソアラを購入したのは2001年、齢(よわい)30半ばの頃です。モノは3代目すなわちZ30系の「4.0GT」。いつも通る道沿いにあるトヨタのディーラー系中古車店にポトッと並んでいた個体に即応してしまいました。

確か走行3万km台でお値段は80万円。認定保証を延長しても、支払いは2桁万円で収まったと思います。今のように相場情報も逐次アップデートされるでもなく、値づけも店舗ごとの裁量によるところが大きかった、つまり巡り合い次第では中古車が中古車らしい掘り出し値で買えた、今からしてみればいい時代だったんでしょう。

なんでZ30系ソアラに乗ることになったのか。ひとつは年も重ねて嗜好(しこう)も変わり、大きなボディーと2ドアクーペのデザインが織りなす豊かさに憧れがあったからです。

  • 懐かしの名車をプレイバック ソアラ3代目4.0 GTリミテッド ブルーイッシュグリーン

    ソアラ3代目4.0 GTリミテッド ブルーイッシュグリーン

国際化に踏み出したソアラ

その頃……といえば、ちょうど最大消費地であるアメリカでスペシャリティーの嗜好がクーペからSUVへと移行しつつある真っただ中で、「キャデラック・エルドラド」や「リンカーン・マークVIII」といったアメリカを代表してきたモデルたちの命運が尽きそうになっていたんですね。だから経験できる今のうちにデカいクーペに乗っときたいなぁと思っていたところに、ポンと現れたそのソアラがビビッとつながったわけです。

Z30系といえば国外では「レクサスSC」として販売されるなど、ソアラとしては初めて国際化の一歩を踏み出したモデルでして、ふんわりとアメリカンな雰囲気もまとっていたところも心引かれた理由のひとつかもしれません。
それがゆえに自分で選ぶならパワートレインは絶対V8だよなぁと思っていたわけで、そういう要素も含めて諸々がピタッと重なったのかもしれません。

その個体で唯一の残念なところは色です。昔流行(はや)った深緑系でしたが、どうせならアメリカンなシャンパンゴールド系がよかった。が、色より程度という中古車買いの個人的鉄則に従い泣く泣く妥協。

でもヌメッとしたデザインはなるべく生かしたかったので、前オーナーがオプションで付けていたリアスポイラーは取っ外してもらいました。ちゃんと板金で撤去痕も整えてひと磨きしてくれるなど、丁寧な販売店だったことを思い出します。

高級車ブランドにも影響を与えたV8

車台は当時の140系「アリスト」や「マジェスタ」、後に80系「スープラ」にも用いられるものをベースとしていましたが、レクサスブランドにおいては「LS」と対をなすラグジュアリークーペという位置づけだったこともあってか、3代目ソアラは山坂道をブンブン走るのが気持ちいいというタイプのクルマではありませんでした。
それを補って余りあるのが乗り心地の丸さで、恐らく過去、自分が所有したクルマのなかでは初代「プリウス」と双璧だったように思います。

加えて感心したのが1UZ-FEユニットの静かさや滑らかさです。初代「セルシオ」用に開発されたそのV8は動的質感において、ドイツ勢だけでなくキャデラックやジャガーといった高級車ブランドの開発にも影響を与えたといわれています。

21世紀に入り僕のような大衆の手に渡る段に至っても、ドイツ勢の最新のV8にはパワフルさで劣るも回転フィールの上品さにまったく見劣りはありませんでした。トヨタが生んだ内燃機としては五指に入る傑作ではないでしょうか。

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ソアラを持つ歓びを堪能

日常的な走行の大半が2000rpm前後のとろ火でこと足りる、アクセルを踏んでも無粋なキックダウンなど要らず、にじみ出るトルクでもって息の長い加速が味わえる。今やすっかりぜいたく品となった大排気量マルチシリンダーのおうようさが、クーペの優雅な体躯(たいく)とともに味わえたのは自分のクルマ人生にとってもいい思い出です。

過去の車歴を振り返りつつ、ああ同じクルマにあってこういう金持ち喧嘩(けんか)せず的な世界もあることを思い知り、ときに「ブリヂストン・レグノ」などと身の丈に合わないタイヤなどに手を出しつつソアラを持つ歓びを堪能しまくりました。

今も乗っている「RX-7」とこのソアラとの2台生活はお察しのとおり、財布に穴が開いてるんじゃないかと思うほどのガソリン浪費による財政圧迫で終焉(しゅうえん)を迎えます。

そのソアラの代わりにやってきたのが58万円の「ホンダ・ビート」と真逆に振れたのも、無意識のうちにそのぜいたくからの決別を意図していたのでしょう。が、知ってしまったビッグクーペの魅力にはあらがえず、その後も19万円の危ういV8の「マスタング」などにちょっかいを出してしまうような堂々巡りを繰り返すことになるわけです。

(文=渡辺敏史)