東京オートサロン2022に行って感じたこと…安東弘樹連載コラム
40回目を迎える東京オートサロンが2022年1月14日(金)(ビジネスデイ)、15日(土)、16日(日)の3日間で行われました。
昨年は新型コロナウィルスの影響でオンラインでの開催になった事から2年ぶりでのリアル開催です。
来場者の人数制限はあったものの、3日間で12万6869人が足を運んだという発表がありました。今回は再入場が完全に禁止されていましたので、実際に会場に来た人の純粋な数という事になります。
会場は、人数制限も有った事から、これまでの様に通路がラッシュアワーの電車の中の様にはなっていませんでしたが、相変わらずの熱気で、イベントとしては成功だったと言えるでしょう。
しかも自治体と国のコロナウィルス対策アプリによるダブルチェックなど、コロナウィルス感染防止策は、かなり徹底していたとも感じました。勿論、人が集まる以上、完璧とは言えませんが最大限の努力を感じ取る事は出来たと言えます。
近年は自動車メーカーが多数参加しており、今回も日産が新型フェアレディZを日本市場向けに発表し大きく注目されていました。
私自身、前回のオンライン開催を除くと、ここ数年は仕事も兼ねて来場しており、当初の目的、「カスタムを文化に」という趣旨が見事に具現化されてきた事を感じています。
1983年に始まった当初は「非合法のパーツなどを展示しているイベントに会場は貸せない」との理由から会場探しにも苦労していたという事でしたので、法律の規制緩和等も含めて今では、すっかりクルマ好きの目玉イベントになり世界三大カスタムカーとして認識される等、眉をひそめられる様な空気は殆ど無くなったと言えるでしょう。
実は「陰キャ」の私には毎回会場全体に掛かる音楽の音量が大きすぎるという悩みはありますが(笑)、その華やかさは多くの来場者が楽しめる要因にもなっているようです。
ちなみに私は今回、自分のレギュラーラジオ番組の公開録音の仕事で最終日の16日(日)に参加しました。
毎回、ゲストの歴代の愛車を紹介したりクルマへの思いを語って頂く番組なのですが、今回は番組にもご出演頂いた方、お二人をゲストに迎えての公開録音です。
お一人目はクルマ好きで知らない人は皆無、と言って良いでしょう。ドリフトキングこと土屋圭市さん。もう、お一人は最近はMT女子としてクルマ雑誌などで連載を持ち、ファッション雑誌VIVIの専属モデルで女優としても活躍されている古畑星夏さん。
そして私の三人で、カスタムも含めてクルマに関しての話をさせて頂きました。
トークショーを、そのまま収録して1月30日(日)と2月6日(日)に放送するという趣旨のイベントです。
手前味噌ですが、生ける伝説、土屋さんとMTが好きだけど、まだ初めての愛車を買ったばかりの古畑さん、そして常軌を逸したクルマ好きの3人のトークは、とても楽しく聴いて頂けると思います。放送日前に、このコラムを読まれた方はラジオの方も聴いて頂けると幸いです。このコラム始まって以来、初めて番宣をさせて頂きました(笑)
あ、放送後一週間以内でしたらRadiko のタイムフリー機能で聴くことも出来ます。
ちなみに、この番組の冠スポンサーが「UP GARAGE」というカー用品の中古買い取り、販売の会社なのですが、会社独自に「Japan Car Awards」という、ユーザーが選ぶ良いクルマの投票を行っています。その本年度の1位がTOYOTA GR86/SUBARU BRZだったのですが、14日(金)のビジネスデイに、そのアナウンスを偶然聞いた、TOYOTAの豊田章男社長が、UP GARAGEブースを訪れ、急遽ブース内のステージでUP GARAGEの社長から豊田社長にトロフィーを直接、お渡しするというサプライズもあったようです。残念ながら、当日私は来場していなかったので、その場面は見ていないのですが、リアルでのイベントならではのサプライズですね!
番宣は、これくらいにして中身についてお話すると、近年の特徴が顕著に出ていたオートサロンになっていました。
土屋圭市さんも番組で、おっしゃっていましたが、一年空いていた事も有って驚いたのが、アウトドアやキャンプを意識したカスタムが目立っていた事です。
これまでは「ドレスアップ」や「走りに特化した」カスタムメーカーが圧倒的多数を占めておりオフロードや、ましてやキャンプを意識したような爽やかな?展示は少数だったと、土屋さんは感慨深げにコメントしていた事が印象に残っています。土屋さん曰くコロナの影響も有るかもしれない、との事でした。
メーカーとして大きなブースで展示をしていたダイハツは完全にアウトドアやキャンプに特化していましたし、これもコロナの影響か、クルマを、そのままオフィスとして使えるようなカスタムカーも複数見られ、カリカリのエンジンチューンメーカーや、法律ギリギリのエアロパーツ満載のクルマも、勿論、存在感を発揮していましたが、全体的には癒やし系のチューニング、カスタムが多かったのは確かです。
そして個人的には自分がジムニーに乗り始めた事があるせいか、ジムニーのカスタムカーの数に驚きました。特に4ドアのジムニーの展示には多くの方が集まっており、あらためてジムニーの人気を感じる良い機会になりました。
(日本自動車大学校(NATS)が作った、ジムニーベースの「CARS」キャラクターのメーター)
今回の会場の中で、ベースになったクルマでは車種別で恐らくジムニーが1番多かったのではないでしょうか。
これまでのオートサロンでは、スポーツカーやミニバンベースのカスタムが多かった記憶があるので、やはりオートサロンでも新しい傾向が生まれてきたという事でしょう。
少し語弊が有るかもしれませんが、新型コロナウィルスというものが我々の生活様式や意識に大きな影響を与えている事は疑いの余地が無いようです。
しかし、これでクルマの新しい楽しみ方を知った人がいれば、それは悪い事ではありませんし、これまで以上に「自動車」というものが存在感を発揮してくれるのであれば、クルマ好きとしては嬉しい限りです。
そのきっかけが、東京オートサロンなどのイベントになる可能性が高いだけに、こうしたイベントが中止や延期になったり、オンラインのみになったりしない事を祈るばかりです。
そして、今回私自身が楽しみにしていたのが前述した新型フェアレディZと私自身がロータスエリーゼに乗っていることから気になっているロータス・エミーラという新型車です。
どちらも一般公開は初めてですので、ドキドキしながら実車を見る事になりました。
日産ブース 新型Z
まずZですが、写真に劣らず、とにかくカッコイイ!ドアの外からではありますが内装も見られて、その質感を感じる事も出来ました。最初にデリバリーされる限定販売車の価格も発表されて約700万円という事でしたが、これには賛否がある様です。
私はエンジンスペックや装備などを勘案すれば妥当だと思いますが皆さんは如何でしょうか?
もう少し価格を抑えてスペックを下げると、それこそ既存の日本メーカーのスポーツカーと同じようなクルマになってしまいますし、私、個人としては、日産の判断は間違っていないと感じています。
バブル時代のZ32や、その後のZ33、Z34等と比べると日本人の平均収入比で、今回の新型は高くなり過ぎたという印象を抱くかもしれませんが、S30というロングノーズのZになった最初のモデルは1969年当時、85~105万円、71年、発売の高性能版Z432は150万円!で、69年当時の大卒初任給が3万5千円弱、71年当時が4万円弱ですから、今の価値に換算すると、69年発売のベースモデルで600万円前後、71年のZ432は852万円。
発売当時からZは高嶺の花だった事が分かります。
しかし欧州の高性能スポーツカーと比べれば、まだ割安と言えるでしょう。
唯、気になる事も有ります。それこそ欧州のスポーツカーでは当然の様に装備されている運転支援機能が、皆無とは言えないものの、日産が誇る「プロパイロット」ではない簡易型であったり内装の素材に関しても欧州勢と比べると若干、見劣りするそうで、それを考えると「割高」と感じる人が多いのも頷けます。
実際に市場が、どう判断するか注視していきたいと思います。
そしてロータス・エミーラですが、エクステリアと、外から見る内装に関しては写真の通りで満足のいく物でしたが、こちらも既に発表されていたファーストエディションと言われる、初期モデルの価格しかアナウンスされませんでしたので、肩透かしを食らったというのが正直な感想です。
メーカーやインポーターの、このような勿体ぶった姿勢は個人的には好きになれません(笑)
Zもエミーラも初期モデルの価格が出ているという事はベースモデルの価格も基本的には決まっているはずなので、さっさと発表して欲しいというのが本音です。
話が逸れましたが、東京オートサロンに今回も参加してみて、まだまだクルマに対する情熱を持っている人は沢山居て、形を変えても「クルマ」という物が人間に、あらゆる感情を喚起させる、という事を確認できました。
これは電気自動車の世界になっても変わらないのではないでしょうか?
将来は全車、自動運転になりクルマというものは所有欲の対象にならなくなる、という専門家もいますが、100年以上、先の事は分かりませんが、暫くはクルマというものが我々をワクワクさせてくれるに違いない、という事を確信できるイベントでした。
少なくとも会場に足を運んだ方は、そのように感じたのでは無いでしょうか?
安東 弘樹
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