日本カーオブザイヤー選考委員のお仕事…安東弘樹連載コラム

今年で第43回目を迎える日本カー・オブ・ザ・イヤー。
先日、48車種のノミネート車の中から、我々、日本カーオブザイヤー選考委員の投票によって10ベストカー11車種が選出されました。(10位のクルマが同数だった為、11車種)

選ばれた11車種は下記のクルマたちです。

(※最終選考会まで10ベストカーは全車同等扱いのため、掲載はノミネート番号順)

この中から、日本カー・オブ・ザ・イヤーが、決定されます。

またノミネートされた48車種の中から、4つの部門賞
「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」
「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」
「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」
「K CAR オブ・ザ・イヤー」

も選出されることになります。

全ての部門を選考委員が投票で決めるのですが、以前も書かせて頂いた様に、近年、選考をする度に身が切られるような思いをしています。

というのもクルマのパワーユニットの種類も増え、クルマに求めるものも多様化し、完全に別の種類のクルマの中で1番を決めるという事に、敢えて申し上げますが「もはや意味があるのか」、という疑問にもさいなまれます。

部門賞はともかく、「カー・オブ・ザ・イヤー」(以下COTY)を決めるのに、前回も悩みましたが、今回は更に悩みが深くなりました。

純内燃機関のクルマ

「日産 フェアレディZ」、「ホンダ シビック TYPE R」の1.5車種だけ。(CIVICはe:HEVとの同時ノミネートの為0.5表記)

マイルドハイブリッド車

「SUZUKI アルト」と「LAND ROVER レンジローバー」の対極的な車と「MAZDACX-60 e-SKYACTIV D」の計3車種。

ストロングハイブリッド車

「TOYOTAクラウン」、「日産 エクストレイル」、「ルノー アルカナ」、「シビック e:HEV」の3.5車種

純電気自動車(BEV)

「BMW iX」、「ヒョンデ IONIQ5」、「日産 サクラ・三菱 ekクロスEV」の3車種(正確には4車種)

と見事に分かれたのです。

選考委員は、それぞれ立場や経験値も異なるのですが、結果を見た時に、妙に納得しました。
勿論、私が選んだクルマのいくつかはベスト10入りしていないのですが、この10車種に異論が無かったのも確かです。

10ベストカーを選ぶ段階でさえ、悶絶した上で…の納得ですので、はっきり申し上げられるのは、「全てのクルマに、その価値がある」という事に他なりません。

ほとんどのクルマには、メーカーやインポーターが主催する試乗会で乗って吟味しましたが、実は1車種だけ試乗会に参加できず、近所の販売店に赴いて試乗しました。

メーカーを疑う訳ではありませんが、一人の消費者として広報車ではない、販売店の試乗車に乗ることを私は大切にしています。

そのような場合、自分の素性は明かしませんし、フラッと販売店に行って、普通に試乗して、販売スタッフの話を聞く事にしていますが、そうする事によって、様々な発見があるものです。

幸か不幸か?マスクをして(しなくても?)地元千葉の販売店で試乗する際に、私の事を気付かれることはほとんどありません…。
これは職業柄、問題かもしれませんが(笑)、見積りもいつも貰って、納車までの期間も訊いてみると、メーカー/インポーターの実際の状況も理解できます。

試乗時間や距離は、メーカー主催の試乗会より短いのですが、コロナ禍という事で、以前の様に、販売スタッフが一緒に乗る事も少なく、一人で運転しますので、車内もじっくりと見る事が出来ますし、ETCカードを持っていけば許可を得て高速道路を走る事も出来ます。

無論これも許可を得て、ですが参考用に写真も撮らせていただきます。

その上で11月24日(木)、袖ケ浦フォレストレースウェイというサーキットで、改めて10ベストカー全てに乗ってみて、様々な事を再確認し、COTYを決め、26日(土)までに投票となります。

しかし、正直、今から頭を悩ませています…。
現段階(11月中旬)でどのクルマをCOTYにするか全く決まっていません。

種類も価格も全く違う、これらのクルマたちの中から、どのような基準で、多くのクルマユーザーの皆さんに対して、「これが一番でした。」と言えるのか。

「今更、COTYなんか参考にしないよ」という意見も最もだと思いますが、やはり、それなりの経験を積んだ選考委員が選んだクルマを発表する、という事が無意味とは思えないですし、COTYの価値もまだ皆無ではないと信じています。

価値観が多様化した現代に於いて、「これを買うと良いですよ」とは言えませんが、「このクルマは後世に残す価値を有する」という観点からもCOTYを見ていただければ幸甚です。

ちなみにこれも何度か申し上げていますが、COTYを選ぶ選考委員に報酬もありませんし、メーカーやインポーターからの利益供与もありません。

少なくとも私は、各メーカーやインポーターの方とプライベートでお会いする事も、これまで殆どありませんでした。(COTY選考委員の5年間で、初期の頃たった2回ほど、何人かのジャーナリストやメーカー/インポーターの広報の方と食事をした事がありました。他の選考委員の方が新人の私を紹介して下さる意味合いで)

今後、コロナウィルスの感染拡大が収束しても、そのようなお付き合いをするつもりもありません。元々、人付き合いが不得手、という事もありますが、そんな性質もこの立場では、むしろ役に立つ?のではないかと思っています。

私は別にジャーナリストや選考委員がメーカー・インポーターの方と懇意にすることを非難している訳ではありません。
情報交換や、クルマについて語り合うことは大切ですし、それが忖度に繋がらなければ問題は無いと思いますので、皮肉などと取られたら心外です。

改めて、日本COTYのプレゼンスが近年、低下しているのは確かですが、それを上げようと様々な努力をしている事もご理解いただければと思います。

クルマというものの魅力を伝えて、日本の基幹産業でもあるクルマメーカーやインポーター、そしてサプライヤーを盛り上げられれば、日本COTY選考委員として、これに勝る喜びはありません。

ラリージャパン2022 おめでとうございます!

さて、話は少し逸れますが、去る11月10日(木)~13日(日)まで、待ちに待ったWRC最終戦日本ラウンド、「ラリージャパン2022」が開催されました。

今シーズン、TOYOTA GAZOO Racing ワールド・ラリー・チームがマニュファクチャラーズチャンピオン、同チームのカッレ・ロバンペラ選手がドライバーズチャンピオンのWタイトルを獲得しましたが、地元ラリージャパンではヒョンデの1-2フィニッシュとなり、有終の美は飾れませんでした。

しかし!勝田貴元選手が3位表彰台!!見事に故郷に錦を飾りました。
以前、自分のラジオ番組にも出演頂いたので、とても嬉しい結果となりました。

ただ…私、2018年にWRCラリージャパン招致応援団員を拝命したのは良いのですが、そこから2年連続で招致できず。

それでも翌年のラリージャパンのプレイベントとなる「セントラル・ラリー」では、イベントの総合司会を担当させて頂きましたが、その後2年はコロナウィルスの感染拡大により、ラリージャパンは開催されず…。

それ以降完全にお役御免となり、今回の待望の本番では、仕事で絡む事は何も有りませんでした。
しかもラリージャパンの期間、全ての日に他の仕事が入り、一ファンとして応援にも行くこともできず、ほとほと縁が無かったと、何か申し訳ない気持ちだけが残っていただけに、勝田貴元選手の表彰台での姿をメディアで目にした時は、感無量だった事をお伝えし、今回のコラムを締めたいと思います。

勝田選手、おめでとうございます!そして、有難うございました。

安東弘樹