ホイールは走行性能に直結! 軽さだけじゃない機能的ホイール選び

  • BBSの鍛造ホイール「RI-A」を履いたGR86

ホイールはクルマの中でも最も大きく重いものが高速で回転するパーツ。その重さは走行性能や乗り心地に直結するだけでなく、燃費にも大きく関わる。そして、実はサスペンション的な衝撃を吸収する役割も持っている。

ホイールに軽さが求められる理由

ひと昔前はスチール製ホイールも多かったが、現在では純正でも多くの場合アルミホイールが増えている。アルミは軽量に作ることができるのがメリット。ホイールはとにかくその重量が走行性能に関わるのだ。

発進する時はホイールを回し始めなければならない。重いホイールを転がすよりも、軽いホイールを転がす方が力が少なくて済むのでクルマも軽快に加速できる。

ブレーキを掛けたときも同じで軽量なホイールほどブレーキが良く効いて減速しやすい。この回転慣性は少しずつ効いてきてクルマの燃費にも効いてくる。

さらにホイールが軽くなると足まわりが軽くなる。俗に言う「バネ下重量」が軽くなる。このバネ下重量とは、サスペンションのスプリングよりもタイヤに近い側の重さのことで、ここが軽くなるとタイヤが軽快に上下できるようになるので、サスペンションの動きが良くなり軽快感がアップする。乗り心地も良くなる傾向にある。

そのため昔から「バネ下重量の軽量化は、車体の軽量化の5倍効くとか、10倍効く」と言われてきたのだ。

回転慣性への影響と、バネ下重量への影響へのダブルで効くからこそ、ホイールには軽さが求められてきたのだ。

アルミホイールの製法「鋳造」「鍛造」の違い

では、どういったホイールが軽量なのか。簡単に言えば鍛造製法のホイールは軽いことが多い。アルミホイールの製法は大きく分けて2つある。

鋳造

ひとつは「鋳造」。鋳物の製法でドロドロに溶かしたアルミを型に流し込んで固める方法。
鋳造製法は細かいデザインまで型で作り、量産しやすいのでコストを抑えやすい。

さらに、そこに軽さなどのスポーツ性を持たせたいというところで、リムスピニングという加工が行われることがある。
これは力の掛かりやすいホイール内側のリムに圧力を掛けながら伸ばす製法。いわばホイール内側のリムだけ、次で解説する鍛造したようなイメージだ。

それによってコストを抑えつつも剛性を確保していて、鍛造にも負けない性能を実現しているのだ。

  • エンケイの鋳造ホイール「RPF1」

    エンケイの鋳造ホイール「RPF1」

鍛造

もうひとつは「鍛造」。こちらは刀の製法と同じで溶かしたアルミを潰して、叩いて成形していく。その潰すときにアルミ繊維の向きが揃って鍛流線という木目のようなものを形成し、それが強固に繋がることで素材に粘りが出る。

素材自体が強くなるので、鋳造製法に比べてアルミを薄くしても同じ強さを保つことができる。そうなると結果的に軽く仕上げることができるのだ。

ただ鍛造製法にも弱点がある。それがデザイン性と量産性。鋳造のように細かいデザインができないので、個性を出すには鍛造で成形したあとにさらに削ってデザインを表現するなど加工したりして手間が掛かる。

また、1本ずつ鍛造プレス機で素材を潰して作っていくのでこちらも手間が掛かる。つまり価格が高くなってしまう。

  • BBSの鍛造ホイール「RI-A」

    BBSの鍛造ホイール「RI-A」

「軽さ」だけではなく「強さ」も重要

そんな軽さが重要視されて来たホイールだが、近年はそれ以上に強さが求められるようになってきた。その理由は車重の増加とタイヤグリップの増大だ。

ひと昔前はクルマといえば1,000kg前後が主流だったが、現在は1,400~1,500kgが主流。ミニバンとなれば2000kg近いクルマも多い。そうなるとホイールに求められる性能もより厳しいものとなってきている。

剛性が足りないことで走行時にフラフラしたり、ステアリングレスポンスがイマイチだったりすることも起きうる。

そこでホイールメーカーではモデルチェンジを施したり、マイナーチェンジでより剛性の高いモデルにシフトしてきている。スポーツホイールでもマイナーチェンジで肉厚を増して、その分、剛性と強度を高めてきているのだ。

車重の増加も原因だし、タイヤのグリップ力アップも原因のひとつ。街乗り用タイヤでも10年前よりは明らかに高性能化している。スポーツタイヤならひと昔前のサーキット専用タイヤに匹敵するか、それ以上のグリップを持つことさえある。
それだけホイールに対する入力も増えているので、ホイール側もより強さを求められているのだ。

ホイールメーカーではデザインだけでなく、モデルごとに設計思想がある。たとえば、ライトウエイトカーを対象に軽量に仕上げたホイールもあるが、そういったモデルもサイズ的にはミニバンにも装着できることもある。しかし、そうなると剛性などが不足することもありえる。

逆にホイールも強ければいいわけではない。ある程度しなったほうがホイールもサスペンション的な役割を持って、衝撃を吸収してタイヤをマイルドに路面に押し付けてくれる。硬すぎるホイールはそういった路面追従性を落としてしまう可能性もある。

なのでどんなクルマに向けてどういった設計思想のホイールなのかを吟味して愛車に選んでもらいたい。そのあたりのモデルごとの特徴はプロショップのスタッフに聞くのが一番だ。

リム幅・タイヤ幅、トレッド幅は適正値が基本

  • BBSの鍛造ホイール「RI-A」の内側

    インセットなどの情報は取り付け部分に掘られていたり、リム内側にシールが張ってあるのでよく確認して使うようにしたい。

リム幅とタイヤ幅に関しては適正に勝るものはない。リム幅広めの「引っ張りタイヤ」が流行したのは数十年も昔。現代のタイヤでは本来の性能をスポイルするだけ。適正リム幅で組んで使いたい。

トレッド幅(左右の車輪間距離)も同様でスペーサーなどを使ってホイールを外に出したほうがコーナリング性能がアップしそうなもの。
しかし、ホイールだけを外に出すとステアリングを切った時にタイヤが弧を描いて動くようになってステアリングフィールが悪化する。

このあたりのセッティングも基本は純正値をメインにして、あとはプロのアドバイスで微調整するようにしたい。

(文:加茂新 写真:宮越孝政、平野陽)