総予算150万円で、不人気車という名の“隠れ名車”を狙い撃ち【伊達軍曹の『中古車こんにちはごきげんようさようなら』】
中古車市場において、中古車の価格を決定する最大の要因。それは性能でも耐久性でもなく「需要と供給」だ。
テレビCMで頻繁に目にする新型SUVや、SNSで話題のスタイリッシュなミニバンに人気が集中すれば、その中古車価格は新車に近いレベルまで高騰すると同時に、その車が属するカテゴリー自体の平均価格も上昇する場合がある。
その一方で、性能的にはまずまずの一級品なのに、見た目が今ひとつ地味だったり、ボディタイプが時代のトレンドから外れていたりするだけで、驚くほどの安値で放置されている実力派も存在している。
筆者は、それらを「不人気車」とは呼びたくない。それらは、世の中の最大公約数から自由になれる人だけがたどり着ける「隠れ名車」なのだ。
もしもあなたが「約150万円」という予算枠を持っているならば、新車の軽自動車を検討する前に、一度立ち止まって考えてみてほしい。その150万円とともに、流行という名のバイアスを外して中古車市場を眺めてみれば、そこには、新車では決して味わうことができない豊潤なカーライフが広がっていることに気づくはずだからだ。
なぜ、100万円でも200万円でもなく「150万円」なのか。そこには明確な理由がある。現代の中古車市場において150万円という予算は、「車両の質」と「購入後の安心」をまずまずの次元で両立させることができる、もっとも戦略的な(あるいはもっとも好ましい妥協的な)ラインだからだ。
具体的には、以下のような150万円のポートフォリオ(配分)を提案したい。
- 車両本体価格:約100万円
- 諸費用:約20万円
- リフレッシュ費用:約30万円
最後に挙げた「リフレッシュ費用30万円」が、魔法の種になる。多くの人は車両購入予算のすべてを車両本体に注ぎ込みがちだが、それは賢い選択とは言い難い。車両購入に関わる総額を、あえて「不人気ゆえに安価な120万円クラス」に抑え、余った30万円でタイヤを一流メーカーの新品に交換する、内装を徹底的にクリーニングする、ブッシュや油脂類などの消耗品を一新する――などをしてみるのだ。
すると「総予算150万円」という安価なプライスで手に入れたその車は、静粛性においても乗り味においても、同価格帯の新車を凌駕する可能性すらある「格上の存在」へと変貌する。特に、中古車に最初から付いている場合が多いカチカチになったタイヤを、ミシュランやレグノの新品に履き替えるだけでもロードノイズはおおむね半分になり、静粛性と満足度はおおむね2倍となるだろう。
では、具体的にはどのような視点で「隠れ名車」を探すべきなのか? その狙い撃ちの技術を伝授したい。
① カテゴリーの中心から半歩ずらす
現在、中古車市場における王者はSUVで、二番手がミニバンだ。これらは「みんなが欲しがる」ため、どうしたって相場は割高になる そこで狙い目となるのが、1世代前の「ステーションワゴン」と「セダン」だ。
例えば、かつてブランドの象徴だった高級セダンや、走りの質を追求したワゴンモデル。これらはSUVと比べて重心が低いため、走りの質感は基本的に上々であり、それでいて人気薄のカテゴリーゆえ、類似する条件のSUVと比べれば、はるかにお安い価格での入手が可能になる。
② 質実剛健な「道具」としての価値を見る
人気薄車のなかには、「デザインが地味」という理由だけで評価を下げている車種も多い。だが車を「移動の道具」としてとらえるならば、見栄え良きデザイン以上に重要なことがある。それは「視界の良さ」や「操作のしやすさ」、そして「長距離を走っても疲れないシートの出来」などだ。そういった本質的機能に優れるクルマは、長く付き合えば付き合うほどにその真価を発揮し、ユーザーもホレ込んでいくものだ。
③ 「世代交代」のタイミングを突く
新型が出た直後の「先代モデル」は、当然ながら狙い目となる。最新型に比べればデジタル機能の部分では大きく劣る場合がほとんどだが、クルマの基本性能(走る・曲がる・止まる)に関しては、先代ですでに完成の域に達しているケースも多い。むしろ、モデル末期の個体は初期の不具合が出し尽くされ、機械としての信頼性がきわめて高くなっているケースもあるだろう。
ということで、不肖筆者が考える「総予算150万円で最高の満足が得られる隠れ名車」を5車種、具体的に挙げてみることにしよう。
2025年度末をもって注文受付終了となった最終型は500万円級の高級クロスオーバーSUVだが、2世代前の「BR系」なら、総額120万円でまずまず上物な個体を狙うことができる。
スバルのお家芸である全車速追従機能付アイサイトと、水平対向エンジン特有の低重心な走りは、現代の背高SUVでは味わえない安定感を提供してくれるはず。そしてそこに約30万円のリフレッシュ費用を公的に投入すれば、より高額なモデルにも決して負けない「あなただけのアウトバック」が完成することだろう。
● マツダ アテンザワゴン(3代目・中期型)
「MAZDA 6」へと改名される前の、マツダ製最上位ステーションワゴン。欧州車的なシンプルかつ流麗なデザインと、ディーゼルターボエンジンならではの圧倒的なトルクは、長距離ドライブを至福の時間へと変えてくれる。
二度目の大幅改良を受けた2018年5月以降の後期型は車体だけで総額約150万円となってしまうが、最初のビッグマイナーチェンジを受けた2015年1月以降の中期型ディーゼルターボであれば、総額100万円前後でまずまずの物件が見つかる。そこに30万~50万円ほどの予算で大胆なリフレッシュ策を講じてやれば、おおむね最高のステーションワゴンができあがるだろう。
「トヨタが作った欧州車」とも評される2012年発売のハッチバック。カローラの影に隠れて地味な存在ではあったが、リアサスペンションにダブルウィッシュボーンを採用する1.8Lモデルおよび1.2Lターボモデルの走りは驚くほどしなやか。日本車離れしたインテリアの質感とあわせ、価格以上の価値を感じさせてくれるだろう。
1.5Lモデルはあまりおすすめしないが、1.8Lは総額100万円前後で、そして1.2Lターボは総額120万円前後で上モノが見つかるはず。またRSグレードの6MT車を総額120万円前後で入手してみるのもシブい選択だ。
●トヨタ マークX(2代目・中期型)
今や絶滅危惧種といえる「後輪駆動の3ボックスセダン」ゆえ、ロマンという観点からも大いに注目したい一台。
2009年に発売された前期型はさすがにやや古く、2016年11月以降の後期型は車両本体だけで総額150万円を超えてしまうケースが大半だが、最初のマイナーチェンジを経た2012年8月以降の中期型であれば、まずまず好条件な1台を総額110万円付近で検討可能。この価格で狙えるのは3.5Lではなく2.5LのほうのV6であり、ロマンとしては「3.5L V6!」のほうがよりロマンチックなのだが、まぁ仕方ない(というか3.5L V6ユニット搭載グレードは、そもそも中古車の流通量が非常に少ない)。
●スバル インプレッサ スポーツ(GT系)
「アイサイトは必須だが、クロストレックなどのSUVは相場が高くて手が出ない」という人への最適解。
ハッチバックというだけで中古車相場はSUVよりも軽く数十万円は安く、しかも「デザインが地味」という悪条件(?)も重なっているため、走行2万km台の物件でも総額120万円前後で検討可能。だが車体骨格は最新世代とおおむね同じ「スバルグローバルプラットフォーム」であるため、走りは相当イイ。そして約30万円のリフレッシュ予算にてタイヤや足回りなどをリフレッシュさせてやれば、欧州のCセグメント車をも凌駕する走りを、総予算150万円以内で完成させることができるだろう。
現代はSNSの過剰なまでの発展もあってか「他人の目」が常に気になる時代なのかもしれない。だがせめて車選びくらいは、自分だけの物差しで決めたいものである。そしてその結果として、GAZOO.comという広大な海の中から“人気順”には頼らず、「少なくとも自分にとっては大いに価値がある!」と感じられる総予算150万円級の隠れ名車を釣り上げていただけたならば、筆者としても幸いに思う。
(文:伊達軍曹 写真:Adobe Stock、SUBARU、マツダ、トヨタ自動車)
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