「クルマの所有」は本当にコスパが悪いのか? 【伊達軍曹の『中古車こんにちはごきげんようさようなら』】

  • 所有車使用イメージ

「もちろん“自分のクルマ”があればいいなとは思うが、基本的にはカーシェアで十分。なぜならば、クルマの“所有”は明らかにコスパが悪いから」

そのようなニュアンスで物事を考えている20代から30代ぐらいの諸君は多いと推察する。実に合理的で賢明な意見であり、乗らない時間も駐車場代や保険料などが発生するマイカーは、見方によっては「金喰い虫」「穀潰し」であることを、筆者は否定しない。

だが中古車業界の現場やリアルな維持費を長年ウォッチしてきた筆者に言わせれば、もしもあなたが月に4回以上カーシェアを利用しているならば、いっそのこと中古車を購入してしまったほうが、総合的にはお得になる可能性は高い。

まず誤解なきよう申し上げておくと、筆者はカーシェアという仕組みを大いに買っている。旅先や出張先などで短時間借りるような使い方には最適であり「クルマを持たないライフスタイル」という選択肢を広げた功績もデカいと考えている。

  • カーシェアリング利用イメージ

だが、その利用頻度が月に3回、4回と増えていくにつれ、下記のような「地味なストレス」も積もり重なってくるのが、カーシェアというものだ。

  • カーシェアをぜひ利用したい「天気の良い週末」ほど、近所のステーションの予約が取れなかったりする。
  • 返却時間が決まっているため、渋滞にはまったりすると焦り、イライラする。
  • 前の利用者のゴミやにおいが残っていて地味に不快だったり、チャイルドシートの設置が面倒だったりする。
  • 自分のキャンプ道具や趣味のギアを積みっぱなしにすることができない。
  • その他いろいろ。

カーシェアは「移動の手段」としてはなかなか優秀だが、自分の部屋の延長のように使える「プライベート空間」にはなり得ないというのが――まぁ当たり前かもしれないが、カーシェアの欠点なのだ。

そして何より、利用回数が増えるほど「払っている金額」がバカにならなくなってくるという問題もある。

具体的に「お金」の計算をしてみよう。

カーシェアを月に計4回利用するとして、週末などに1回あたり6~12時間ほどシェアするという一般的な使い方であれば、車両のクラスにもよるが、利用料金は2万〜3万円/月ほどで収まる場合が多い。

  • 費用計算イメージ

だがここに「たまの1泊2日旅行(約1万〜2万円)」などの長時間利用が1回加わると、月額利用料金は3万〜4万円ほどまで一気に跳ね上がる。

その一方で、支払総額70万〜90万円のまあまあ良質な中古車を所有するとしたら、クルマを維持するための固定費および燃料代はおおむね下記のとおりとなる。

  • 車両代(貯金からの持ち出しまたはローン):1.5万~2万円/月
  • 駐車場代:1.5万円/月(地域差はあるが、郊外や賃貸住宅の敷地内を想定)
  • 任意保険代:7,000円/月(車両保険なしで設計)
  • 税金・車検費用の月割り積み立て:5,000円/月
  • 燃料代:8,000円(燃費10km/L、月間走行距離約500kmで計算)
  • 合計月額:月額約5万~5.5万円

いかがだろうか。「月4回(たまに小旅行)」でカーシェアを使っている人が払っている金額(約3万〜4万円/月)よりも、マイカーを所有するコスト(約5万~5.5万円)のほうが高額であることは確かだ。しかしその差は――もちろん人それぞれの経済感覚にもよるだろうが、決して「圧倒的な差」ではないのだ。

とはいえ賢明なる読者各位は、こうも思うだろう。「昨今は新車だって、残価設定ローン(残クレ)を使えば月々1.5万〜2万円ぐらいの支払額で乗ることができる。ならば、保証の付いた新車を残クレで買うほうが賢いのではないか?」と

ご指摘のとおりである。最近の新車販売は残クレがおおむねの主流であり、若い世代であっても、月々の支払額をかなり抑えて新車に乗れる時代になっている。これは紛れもない事実だ。

だが「新車の残クレ」と「中古車の購入」を同列に考えてはいけない。

ご承知のとおり残価設定ローンというのは、数年後の据え置き額(残価)を差し引いてローンを組む仕組みだ。つまり「数年後にきれいな状態でクルマを返すこと」が前提のシステムである。そのため、ユーザーには以下のような制約がまあまあ重くのしかかってくる。

1. 走行距離制限がある
残価設定ローンには1カ月あたりの走行距離制限が設けられている場合があり、それを超過すると追加料金が発生することもある

2. 傷や汚れの発生がどうしても気になる
「キャンプ中、木の枝による擦り傷がついてしまった」「車内でコーヒーをこぼした」「タバコやペットのにおいが染みついた」等々はすべて、査定減額(追金)の対象になる場合がある。減額にならないとしても、とにかく「自分のクルマ」であるはずなのに、妙に気を使いながら乗る必要があるのだ。

3. 最終的に自分のものにならない
残クレで新車を入手しても、数年後には「けっこう高額な据置額を一括で支払う」「クルマを返却する」の二択を迫られることになる(※据置額を対象に再ローンを組むという手もあるが、その場合の金利はかなり高くなるため、あまり現実的な策ではない)。つまり残クレは、実質的には「長期のリース」に近いのだ。

その一方で、総額80万円程度で購入した「中古車」は、文字どおりあなたの所有物だ。

走行距離を気にせず「日本一周」にトライしたっていいし、アウトドアでドロドロになろうが、DIYで内装を自分好みにカスタムしようが、オーナーであるあなた以外は、誰もあなたに文句は言わない。そしてローンを払い終えれば月々の車両代支払額はゼロ円となり、純粋な維持費だけで乗り続けることができる。

  • 所有車ドライブイメージ

「傷をつけたらどうしよう」「距離がかさんでしまうとヤバいかも?」とビクビクしながら乗る月2万円の残クレ新車に乗る人生や、返却時間や利用料金を気にしながらカーシェアを利用する人生と、「自分の道具」として自由に使い倒せる中古車に乗る人生。どちらが本当の意味で「自由で素敵なカーライフ」と言えるかは、人ぞれぞれの価値観や人生観によって異なるだろう。だが筆者個人としての“推し”は、間違いなく後者である。

では、具体的にはどのような中古車を狙えば、冒頭付近で申し上げたような「カーシェア超えのコスパ」を実現できるのだろうか?

筆者がおすすめしたい「狙い目ゾーン」は、おおむね下記のとおりだ。

  • 車両予算:支払総額70万〜100万円(車両本体価格ではなく「支払総額」で中古車をチェックするのが鉄則)
  • 年式:5年〜8年落ち
  • 走行距離: 3万〜6万kmぐらい
  • 車種:1.3Lクラスのコンパクトカー(ヤリス、ヴィッツ、フィット、ノート、スイフトなど)や、ハイト系小型車または軽自動車(ソリオ、N-BOX、タントなど)

このゾーンの中古車は、新車時からの値落ちが一段落し、中古車価格が一気にこなれている一方で、クルマとしての諸性能は十分に現代水準であるため、重大な故障はめったに起きない。また衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備もひと通り備わっているため「安かろう悪かろう」だったひと昔前の中古車とは次元が違う、まずまず快適で安全な移動空間が手に入るのだ。

  • トヨタヤリス

    トヨタ ヤリス(2020)

  • スズキソリオ

    スズキ ソリオ(2020)

  • ホンダN-BOX

    ホンダ N-BOX(2020)

まぁ「クルマとしての趣味性」みたいな部分は手に入りづらいラインナップかもしれないが、そこさえ気にしない(特には求めない)のであれば、なかなか悪くない車種群である。

例えて言うなら、カーシェアが「使った分だけ払うスマホの従量制プラン」であるのに対し、マイカーの所有は「使い放題の無制限プラン」なのだ。

「今月はギガ(カーシェアの利用料)を使いすぎたから、ドライブを控えよう……」的にちまちま計算する生活から「今日は天気がいいから、今から海でも見に行くか!」と、ふと思い立った瞬間に走り出せるライフスタイルへのパラダイムシフトをいきなり行えるのが「自分だけのクルマを手に入れる」という行為なのである。

そして月々払うお金が「カーシェア代」と「中古車の維持費」でさほどの大差はないとするならば、あなたの人生をより豊かに、自由に、素敵にしてくれるのはどちらだろうか?

もしあなたが月に数回はカーシェアの予約ボタンを押しているならば、ぜひ一度ぐらいは、GAZOOの中古車検索画面を開いてみてほしい。「総額100万円以下」で絞り込んだ検索結果の中に、あなたの行動範囲と可能性を無限に広げてくれる「最高のプライベート基地」が、静かにあなたを待ち構えているはずだからだ。

(文:伊達軍曹 写真:Adobe Stock、トヨタ自動車、スズキ、本田技研工業)

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