連続して1,600食を提供! 創業者の思いを乗せて走るキッチンカー「チキンラーメン号」を取材
日清食品のキッチンカーをご存知でしょうか? パッと見ただけで「チキンラーメン」だと分かる外観にはキャラクターの「ひよこちゃん」も描かれています。一度に1,600食を供給できる給湯設備付きのキッチンカーで、災害時の被災地支援でも稼働しているそうです。キッチンカーが生まれた経緯や被災地での活動、日清食品の思いについて日清食品ホールディングス広報部の大口真永(まさなが)さんにお話を伺いました。
キッチンカーの転機になった阪神淡路大震災
1948年、創業者である安藤百福(ももふく)が前身となる会社を立ち上げ、58年に世界初の即席袋麺「チキンラーメン」を発売したことで知られる日清食品。同社のキッチンカーが誕生したのは94年のことで、当初はスーパーの店頭などで販売促進を行う目的で造られたクルマだったそうです。
一番の特徴はクルマ単体でお湯を沸かす機能が付いていること。お湯を注いで3分で食べられるチキンラーメンやカップヌードルを試食で提供していました。
キッチンカーの活動の転機となったのは、97年1月に起こった阪神淡路大震災でした。
「当時86歳だった創業者の安藤百福は、被災地の様子を見て戦時中の悲惨な光景を思い出したそうです。冬の寒さが厳しい中で家を失った人々の報道を目の当たりにし、直ちにキッチンカーで現地に向かうよう指示が飛びました。クルマ単体でお湯が沸かせるため、すぐに被災者に温かいカップヌードルをご提供することができ非常に喜ばれました。もちろん、無償です。」(大口さん)
それ以来、「有事の際にかけつけるクルマ」としての使命を掲げ、被災した都道府県の防災窓口と連携して、救援要請を受けたらすぐに向かえる体制を整えました。平時でイベントを開催しているときでも、震度6以上の地震があった場合はすぐ救援体制に移るという社内マニュアルもあります。実際、16年の熊本地震のときにはイベントを中断して被災地に向かったそうです。
連続して1,600食ものカップヌードルが作れるキッチンカー
キッチンカーの車体は、トヨタ「ダイナ」がベースとなっており、長さ491cm、幅208cm、高さ291cm(西日本キッチンカー仕様)の2トン車でした。その後、寒冷地仕様(およびAT仕様)にするために、いすゞ「エルフ」にモデルチェンジ。
サイドや背面、運転席上部のエアデフレクターもチキンラーメンのデザインが施されたかわいらしさから子どもたちにも大人気。イベント開催中は、運転席にひよこちゃんの大きなぬいぐるみを座らせていることもあるのだとか。
デザイン性の高さだけでなく、機能性にも注目。現在保有するキッチンカー6台のうち、3台は瞬間湯沸かし器が備え付けられており、キッチン内の蛇口から直接お湯を注げる仕様になっています。ラーメンにお湯を入れた状態で手渡しして、3分待てばすぐ食べられるというオペレーションです。
無給水で最大500ℓの水を連続して沸かすことができ、カップヌードルであれば約1,600食を提供可能です。キッチンカーといえど、車内で調理するわけではなくお湯を注ぐだけで完結する簡便さが、いち早く多くの人に食事を届けられる機動力につながっています。
被災地でも、給湯機能付きのキッチンカーが主力となり活動。東日本大震災では、11年3月~4月にかけて約210万食を現地に届け、7台(当時)のキッチンカーがフル稼働で皆さんにカップヌードルを提供しました。
創業者の「食足世平」の思いとともに、全国を走る
平時ではさまざまなイベントやスーパーの店頭などに出没しており、17年には263カ所、19年には222カ所を巡って、多くの人にカップヌードルやチキンラーメンの無償提供を行ってきました。コロナ禍で中止を余儀なくされる状況が続きましたが、今後は状況を見ながら再始動させる予定とのことです。
最後に、日清食品としてのチキンラーメンキッチンカーへの思いをお聞きしました。
「07年に96歳でこの世を去った安藤百福から受け継いでいる創業者精神の一つに“食足世平(しょくそくせへい)=食が足りてこそ、世の中が平和になる”があります。特に災害時の支援で、慣れ親しんだカップヌードルをお食べになり、みるみる明るくなっていく被災者の表情を目の当たりにすると、食の大切さを実感します。決して有事は望みませんが、今後も支援の要請があった際には、創業者の思いを胸に抱いてすぐに現地に出向き、少しでも被災者の皆さんの心を満たす活動が出来ればと思います」(大口さん)
長年、災害支援活動を続けているため、被災者から感謝の声がたくさん寄せられているそうです。有事に限らず、平時でも全国を走っているチキンラーメン・ひよこちゃんが目印のキッチンカー。見掛けた際には、おなじみのカップヌードルやチキンラーメンをぜひ味わってみてくださいね。
<取材協力>
日清食品ホールディングス株式会社
(取材・文:笹田理恵/写真:日清食品ホールディングス株式会社/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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