R32スカイラインGT-Rをレストア中!日産の有志が集まる 「日産名車再生クラブ」

日産自動車には、ユニークな社内クラブ が存在しています。それが「日産名車再生クラブ」です。

その名の通り、日産の名車をレストア(再生)させる活動をしているこのクラブ。これまでにどんなクルマをよみがえらせてきたのでしょうか? 実際にこのクラブを訪ね、その背景や活動を取材しました。

2006年から「ほぼ毎年1台」レストアを実施

「名車再生クラブは、毎年1台のペースで、社内にある古い名車をレストアする、日産社内のクラブです。クラブ活動ですから、もちろん作業に対する費用は出ません。ボランティアです。その代わり、部品や工具代金などの運営費と部室は会社が用意してくれています」

そう説明してくださったのは、同クラブの会長を務める木賀新一氏です。木賀氏の本職は日産自動車のエンジニアで、普段の業務はクルマの開発に携わっています。

  • 日産名車再生クラブの会長を務める木賀新一氏

    日産名車再生クラブの会長を務める木賀新一氏

クラブがスタートしたのは、2006年。最初にレストアされたのは「日産(シルビア)240RS 1983年モンテカルロラリー仕様」でした。それ以来、ほぼ毎年1台のペースで15台ほどをレストアしてきたといいます。

これまでにレストアされた車両は「1972年式 スカイライン2000GT-R」をはじめ、「1971年式ダットサン240Z サファリラリー優勝車」「1947年式 たま電気自動車」など、文字通り歴史に残る“名車”ばかり。

  • 2019年は「1964年式 プリンスグロリアスーパー6 第2回日本グランプリT-Ⅵレース仕様車」をレストアした

レストアは概ね春先にスタートし、秋に行われる「NISMOフェスティバル」でお披露目。その後、神奈川県の日産座間事業所にある「日産ヘリテージコレクション」に収蔵されるというのが、基本的な流れ。

コロナ禍にある現在は変則スケジュールになっているそうですが、活動自体は続いており、2022年は、「1990年式R32スカイラインGT-R N1耐久仕様車」のレストアを行っています。

  • レストア前の「R32スカイラインGT-R N1耐久仕様車」。写真は2021年12月に実施された21年度活動のキックオフ式

公募により毎年90~150人のメンバーが集まる

クラブ活動であるため、レストア作業を行うのは基本的に会社が休みとなる土~日曜日。完成したクルマをお披露目する直前や予定が遅れているときなどは、平日の夜にも作業を行います。

木賀氏:「クラブには、長く在籍しているコアメンバーが約10名いますが、それ以外のメンバーは毎年、公募により集まります。日産だけでなく関連会社の方もおり、人数は毎年90~150人。レストアするクルマによって人数が増減します。

『やりたい』という思いを持った人を受け入れていますので、中にはクルマにほとんど触ったことがない方もいます。そういう方には、服装から工具の使い方までを指導しています。ケガのないことが第一ですからね」

  • ボディからすべての部品を外して凹みなどを修復。塗装もやり直す

最大で150人ものメンバーが集まるとは驚きですが、レストアは“部品磨き”など地味で手間暇かかる作業が多いもの。しかも、クルマは会社の所有物であるため、完成しても自分の手元に置くことはできません。

なぜ、毎週の休日を使ってまで、これだけ多くの人がクラブ活動に参加するのでしょうか?

  • 燃料の配管などを外して、一つひとつ手作業で磨いていく。地味で時間のかかる作業だがレストアには欠かせない

木賀氏:「クルマをここまでバラバラにする機会はそうそうありませんから、自動車会社の社員としてよい勉強の機会になります。実際に“クルマの勉強をしたい”と、参加する方も多いんです。

また、クラブ活動を通じて、社内の横のつながりもできます。そのため、普段の仕事で困ったことがあるとクラブ員同士で連絡を取って解決することもありますね」

今回のR32スカイラインGT-Rのように、レストアする車両の人気が高いと、それに比例するかのように参加するクラブ員も増えるそう。また、1年ごとにクラブ員を募集することにより、常に“やりたい人”だけがメンバーとなるため、モチベーションを高く保つことにもつながっていると言います。

とはいえ、その根っこには“クルマが好き”という共通の強い思いがあるようです。

  • 板金塗装をやり直したボディに、組み直したエンジンを搭載するところ

木賀氏:「メンバーの中には、入社1~2年目の新人もいます。一方、定年後のシニアパートナーにも参加していただいています。皆さん、クルマ好きなんですね。

今年はR32スカイラインGT-Rということもあり、クラブ員のモチベーションがいつになく高く、“いいかげんには直せない”と、サスペンションの裏までピカピカに磨いています。でも、活動の雰囲気はゆるく、みんなでワイワイ楽しんでいる感じです」

存続の危機を乗り越え活動は16年目へ

クラブ活動とはいえ、本格的なレストアとなれば、それなりの費用がかかります。工具や部品の購入など、会社からのサポートはどのような経緯で受けられるようになったのでしょうか?

木賀氏:「そこは大きな追い風がありました。当時の開発担当の副社長の一人が『社員のパフォーマンスを高め、イノベーションを起こす』と、支援してくれたのです。

また、会社の方が社内イントラを使った部員の公募を行ってくれたことで、社内に活動が広く認知され、様々な層から援助を受けることができましたので、とても、助かりました。

でも、始まって数年経ったころにリーマンショックが起きて、お金が出なくなったこともあります。『これは存続の危機だな』と思っていたら、ちょうど日産で電気自動車のリーフを発売することになって、『電気自動車関連ならお金が出るよ』と……。

そこで、プリンス自動車のルーツに当たる『たま電気自動車』のレストアを行い、クラブの存続につなげました」

  • 2018年に「1972年式 サニー1200クーペGX-5 東京モーターショー出品車」をレストアしたときのメンバー

日産名車再生クラブのメンバーは、毎年およそ100人。これまでに15年もの歴史がありますから、レストアに携わった人は1000人を超えるでしょう。これだけのたくさんの人が、レストアを通してクルマの理解を深めていることは、本業であるクルマ開発にもいい影響を与えているはず。

また、レストアされた車両は、日産ヘリテージコレクションで展示されるだけでなく、全国のイベントへ出張展示されることもあります。レストアされた車両はどれもが日産の名車ですから、日産名車再生クラブの活動は、日産ファンを増やすことにもつながっていると言えるのです。

人を育てるだけでなく、日産のブランドも高める。それが日産名車再生クラブの果たしてきた役割だったのです。

<関連リンク>
日産ヘリテージコレクション

(取材・文:鈴木ケンイチ 写真:日産自動車、鈴木ケンイチ 編集:木谷宗義type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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