学生時代や家族との思い出が詰まった、「いい仕事してくれる」フェアレディZ(S130系)
愛知県長久手市にあるトヨタ博物館で行われた、トヨタ自動車の社内公認団体「翔の会」による初の愛車ミーティングイベント。そこに参加者に気さくに声をかけ、先に帰る参加者には元気に「まったね~」と手を振る男性、高木喜次さんの姿があった。
その高木さんの傍らには、ひと際目立つ逆マンハッタンカラーのS130系のフェアレディZ(以下、130Z)と赤いノボリ旗が立っている。聞けばトヨタ・クラシックカー・オーナーズ・クラブ(TCOC)の訴求もかねての参加でもあったようだが、他の参加者と楽しそうに愛車について語り合う姿は本当にクルマ好きオーラにあふれていた。
そんな高木さんの「本当にいい経験をたくさんさせてもらっている」という愛車との素敵なストーリーを聞くことができたのでお届けしよう。
高木さんがこの130Zを手に入れたのは学生時代まで遡る。当時乗っていたトヨタ・カローラⅡを売った45万円を元手に、ノスタルジックヒーローに掲載されていたこの130Zに目を付けた。
その後、販売していたショップに7回も通ううちに30万まで値が下がったこともあり無事購入、その後30年ほどの月日を共にする愛車との生活がスタートすることとなった。
学生のころはカスタムも楽しみながら、スキーに行ったり、夜な夜なラーメンを食べに行ったりと、遊びのお供に大活躍していたそうだ。
そんな学生時代に苦楽を共にし「もう自分の一部」となっていたという130Zは、トヨタ自動車に入社する際に手離すことなく、そして寮にも入ることができたわけだが、トヨタの多様性を認めてくれることにも感謝したという。
そして、フェアレディZ乗りの一部の方からは不人気でもある4人乗りの2by2仕様も高木さんにとっては「とてもありがたい」そうだ。
学生時代には4人乗りでドライブに行ったり、就職や結婚をしてからも通勤やお子さんの送り迎えといった普段使いをしていく中で、4人のお子さんが130Zの3つの席をジャンケンで取り合ってくれたりと、4人乗りだからこそいろいろ思い出ができたり、家族から愛されているということを実感できているという。
普段使いにイベントに大活躍の130Z
「買った当時は13年落ちで、現在は40年落ちになっている」という高木さんの130Zだが、さまざまな修理や部品の交換を繰り返しながら、シートやステアリング、シフトノブ、エンジン、ホイールなど各パーツを純正に戻しているという。
「純性に戻した方がクルマも楽みたいで、故障もしなくなりましたね」と、その効果も語ってくれた。
最近は北米で日産やサードパーティが純正部品のリバイバルを行っているとのことで、ブレーキホースやリアのハッチダンパー、燃料ポンプなどインターネット販売サイトで純正品よりも安い値段で買えるようになってきているという。
旧車オーナーにありがちなパーツ不足の悩みがだいぶ解消されてきているそうだ。
ただ、クラシックカーとしてレストアするだけでなく、鍵穴が減ってくるという理由からキーレスエントリー仕様にするなど、乗り続けるために新しい機能も取り入れている。
そして、大切にしている旧車だからといえ決してガレージの中で大切に保管するのではないのが高木さん流。
普段使いもすれば、今回のイベントでも、気軽に「運転席に座ってみて」とか、「そのドアがバーンって閉まるのが日産流。高級車ですから(笑)」など、他の参加者やお子さんに話かけ、積極的に触れてもらっているのが印象的だった。
「だって、スポーツカーの運転席に座るのってうれしいでしょ。しかもオープンだからね。それでお子さんがクルマ好きになってくれたらうれしいよね」
大きなラゲージルームがあるからこそ、遊びや家族のクルマとして活躍。内装も当時のままだ。そしてそのラゲージルーム右側には、国産初導入となった「スペースセイバータイヤ」という緊急用タイヤが収まっている。空気を抜いた状態で収容、コンプレッサーで空気充填して使用するという珍しいものも見せていただいた
なお、先日「GAZOO愛車広場 出張取材会 in 兵庫」にご参加いただいた逆マンハッタンカラーの130Zのオーナーの成瀬さんとは懇意の仲だという。実はこの高木さんの130Zに惹かれ、同じ仕様にしたそうだ。
社内の旧車オーナーがゆる~く集まる「トヨタ・クラシックカー・オーナーズ・クラブ(TCOC)」
さて、冒頭でも触れた高木さんも所属するトヨタ・クラシックカー・オーナーズ・クラブ(TCOC)についても少し触れておこう。
「これはトヨタ自動車の公認の同好会です。トヨタ技術会が2012年にトヨタスポーツセンターで愛車を展示した時の仲間が集まって発足しました。現在40人ほどがいますが、トヨタの社員と一部OBの方や協力会社の方もいらっしゃいます。2か月に1回定例会があり、ゆる~く集まりたい人が集まっています」と教えてくれた高木さん。
とはいえ、「人とくるまのテクノロジー展」でのメンバーの旧車の同乗試乗会やトークショーを開催したり、映画「僕と、彼女と、ラリーと」に撮影協力したりと、対外的な協力や活動も行っている。
トヨタスポーツ800やダルマの初代セリカなどのオーナーが多いそうだが、高木さんのようにトヨタ以外の旧車のメンバーも在籍しているという。
もともと情報系のエンジニアとしてトヨタに入社した高木さんだが、挑戦してみたかった設計の仕事にも就くことができているという。
現在は福祉車両の設計に携わっているということだが、これまで130Zでクルマいじりをしてきた経験も、そして古いクルマに乗っているからこそ新しい発想にたどり着くこともあるとのことで、「130Zが導いてくれた気がします」と、仕事の面でもとても大切な存在だ。
「30万円のくせに、なかなかいい仕事してくれているでしょ!」
そういって笑う高木さんと130Zの思い出づくり旅は、真っすぐな道のりだけではなく、たくさんの人と関わりながら、130Zを中心に波紋のようにますます広がっていくのだろう。
(文、写真:GAZOO編集部)
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