GAZOO写真教室 22限目 サーキット撮影のキモ、こっそり教えます!

4月に入り、各レースが開幕を迎えます。そこで今回は、サーキットで撮影するコツをお教えしようと思います。開幕を目前に控えた4輪の人気カテゴリー、SUPER GTのクルマの写真を使用して、それぞれポイントになる部分を説明していこうと思います。

流し撮り

写真1
写真1

まずは流し撮りです。これまでも執筆していますが、改めて僕の考える流し撮りのコツ、定義について説明します。流し撮りと聞くと、“なるべく遅いシャッタースピードで写真を撮ること”と考えがちですが、流し撮りの本質は、“被写体と背景にスピード差をつけること”です。そして大前提として、“被写体は止めること”です。

とは言え1/250sec以下のシャッタースピードで、被写体であるクルマ全体を止めるのは至難の技です。ですから写真01のように、GTマシンならフロントグリル周りさえ止まっていればOKです。この写真のシャッタースピードは、1/60secですが、このシャッタースピードでも納得のいく写真は非常に少ないです。そこで1/125secで撮影しても、よりスピード感の出せる裏ワザを紹介します。

写真2
写真2
写真3
写真3

写真2、3を比べてみてください。この2枚は、同じ1/125secで撮影しています。写真2のグッドスマイル初音ミクAMGの方が、写真3のKeePer TOM’S LC500より流し撮り効果が高く見えると思います。これは背景の選び方で効果を上げる方法です。背景により細かい木の枝などを配置することで、見た目のスピード感を上げているのです。同じシャッタースピードでも背景がガードレールでは、これほどのスピード感は出ないでしょう。金網や細い枝などを背景に置くことで、よりスピード感を出しやすいという事を覚えておくと良いでしょう。

蛍光色のクルマ撮影

写真4
写真4
写真5
写真5

次に蛍光色のクルマを撮る時のコツです。写真4、5をみてください。赤系の蛍光色のMcLaren720Sを撮影したものです。写真5の方が本来の色に近い色です。これは簡単に言えば写真4は、露出オーバーの写真という事です。露出がオーバーになってしまうと、被写体が白く飛んでしまいます。

写真6
写真6

そもそもデジタルカメラは、アンダー側に強くオーバー側には弱い特性を持っています。ですから撮影する場合は、暗い部分に露出を合わせず明るい部分が飛ばないように撮影する事を心がけましょう。これは逆光線の場合も同様です。写真6のKeePer TOM’S LC500ように、光が跳ねているボンネットの部分が白飛びしない露出を選ぶことが重要です。

僕たちの場合は、写真レタッチソフトを使って色補正まで考えて露出を計ります。その際、暗い部分はかなり暗くとも起こしてくることができます。ところが露出オーバーの部分は、後処理を行なっても色を付ける事ができません。この特性を理解した上で露出を決めると、蛍光色のクルマや逆光線のクルマを適正露出で撮影する事が可能になります。蛍光色のクルマや、逆光線の場合のコツは怖がらずに露出アンダーで撮影する事です。

メタリック塗装のクルマ撮影

写真7
写真7
写真8
写真8

次にメタリック塗装のクルマの撮影について解説します。メタリック車を撮影する上で大切なのは、メタリックの良さを知る事です。メタリック塗装は、ソリッドカラーに比べ色に深みがある。という事です。この特性を生かして撮影したのが写真7、8です。

この2枚は、光線状態を変えて撮影したものです。写真7のZENT CERUMO LC500は逆光線で、写真8のKEIHIN NSX-GTは夕方の斜光で撮影したものです。ご覧のようにメタリック車は、適正露出より暗めに撮影する事でより色の深みを表現する事ができます。少し乱暴な言い方をすると、ソリッドカラーのクルマより1/2絞りくらい絞った方が良い色が出る。こう覚えてもらうと、メタリック車がより良い発色で撮影できます。

初心者の方へ

写真9
写真9
写真10
写真10

次はサーキットらしさを演出する撮り方です。これは言わずもがなと言う部分ではありますが、サーキット初心者のためのアドバイスです。写真9、10のように、縁石をうまく使うと言う事です。縁石は一般公道には、まず無いものですからサーキットらしさを演出する元も効果的なアイテムです。特に写真9のWAKO’S 4CR LC500のように、縁石一杯まではらんでくる瞬間はシャッターチャンスです。縁石をうまく使う事で、サーキット感だけでなく迫力も演出した撮影にチャレンジしてください。

遠景のバランスとトリミング

写真11
写真11
写真12
写真12

最後に遠景のバランスについて書いておきましょう。僕たちプロと違って、皆さんは遠い観客席から撮影しなければなりません。当然被写体は小さくなってしまいます。だからと言って諦めてはいけません。写真11、12のようにアングルを考えれば、面白い写真を撮ることは可能です。

以前サーキットでの撮影教室を開催した時に、トリミングするからとりあえずピントが合っていれば良い…とか、トリミングするから流し撮りが決まっていれば良い…、と考えている方が、とても多いような気がしました。僕は、どんな条件でもノートリで成立していなければいけないと考えます。そのためには、被写体を画面のどこに置くのか常に意識して撮影するべきだと思います。そう心がけて被写体のポジションをコントロールすれば、結果として流し撮りの確率も上がります。そして何より、間違いなく写真力が上がります。

これまで書いて来たノウハウは、市販車を撮る時にも応用できます。そして上記のことを意識して、サーキットでの撮影を楽しんでください。

(写真 / テキスト:折原弘之)

折原弘之

F1からさまざまなカテゴリーのモータースポーツ、その他にもあらゆるジャンルで活躍中のフォトグラファー。
作品は、こちらのウェブで公開中。
http://www.hiroyukiorihara.com/

[ガズー編集部]

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