秋の夜長に思うこと

今季も早いもので、あと2か月でシーズンの終わりを迎えます。執筆している9月下旬時点で、国内で開催される予定だったグローバルなモータースポーツ、F1、WRC、moto GP、WEC富士、鈴鹿8耐などが中止。昨年に続き非常にさみしいシーズンとなりました。

プライベートでフツーに応援したい!と思っていたレースもあるので、残念でなりません。

F1はHondaラストイヤー、日本人7年ぶりの参戦となった角田裕毅選手のデビューイヤー(シート確保で来年鈴鹿でぜひ見たい)、キミ・ライコネン選手の引退で、どれもたった一度しかない出来事なのに残念すぎです。WRCも勝田貴元選手の凱旋帰国も見たかったし(来年は見られるかしら?)、moto GPは、マルク・マルケス選手も見たいし、引退を発表したバレンティーノ・ロッシ選手の雄姿も見たかった。ロッシ選手ももう走りが見られないかと思うと残念。貴重な機会を日本人として失ったと思っています。もっと大切なシーンを失っている方も多いと思いますが、嗚呼コロナですね…。

では、少々語りましょう。

終わりを決めるということ

先般のスーパーGT菅生の直前にGT300クラスに参戦している星野一樹選手が引退を発表しました。嗚呼…と思ったと同時に、引退を発表できるドライバーは幸せと、あるドライバーさんとかなり昔に話したことを思い出しました。ずっと走り続けたいと思うのはどのドライバーもそう。しかし時が経つにつれ、シートを失うことで自然と引退を迎えてしまう。だからこそ、言えるのはかなり勇気もいるし、幸せなことだとその方はおしゃっていたのです。

ふと昨年、スーパーフォーミュラのキャリアにピリオドを打った石浦宏明選手のことを思い出しました。タイトルを2度獲得。一度途切れたこのカテゴリーでのキャリアに復帰してからですので、本当に素晴らしいと思いました。

後進へ道を譲るというお考えも尊重。フォーミュラの若年化の昨今、その勢いが止まりませんし、前述のF1の角田選手にしろ速いし、トップカテゴリーで20代前半が大暴れの印象も強い。石浦選手のあとにシートを獲得した阪口晴南選手も今季大活躍です。

では、話を戻します。
彼、星野一樹選手はレジェンドドライバー星野一義さんのご子息ということもあり、デビュー当初は周囲からの見られ方が全く違ったと思います。覚えています、私、GT500に上がった頃の彼のことを鮮明に。省きますが。

偉大なお父様の存在があるにも関わらず、お父様はレースをさせてくれなかったのは有名なお話。星野さんと話した時に、どうしても大学を出したかったとおっしゃっていたんです。それは、どこに出てもやっていけるようにと。必ずしも親の道を進むということが正しいのかわからないというお考えもお持ちだった時期があったようです。大学を卒業したら自由にして良いと一樹さんに言った言葉がのちにその道へ進ませたという事は、テレビ番組でご本人がおっしゃっていました。

業界がなかなか成熟しない時期は、親として別の側面からの考えもあったのでしょうか。歴史は決して長いとは言えないけれど、技術的には大きな成長を見せ、かなり高い次元でシビアに戦う日本のモータースポーツ、そしてプロカテゴリーのSUPER GT。しかし、景気の影響を受けることが大きく、バブル期のモータースポーツはケタ違いの勢いで良かったかもしれませんが、その後の浮き沈みが大きすぎました。一樹さんの青春時代と時期がずれるかもしれませんが、バブルがはじけたあとの不景気、リーマンショック、東日本大震災と…。スポンサーありきの世界でもありますし、そこで生きていくことが大変だったというお父様ご自身の経験もあるのかなと思います。親だったら、自分と同じ苦労、特に経済的な事は味合わせたくないですよね。

晴れてレースを出来るようになったのは、大学卒業後。お父様に似て熱血さん。ユニークなキャラクターで好きなドライバーさんです。「速さが出ない」ということで引退を決意とのこと。この決意、リザルトだけを見て取れば○×の判断は簡単かもしれませんが、ドライバーとして正面からそれを受け入れるというのは、なかなか出来ないと思うのです。もっとやれるという思いが誰しも強いと思うし、プロだから。そして、言葉にして引退するということ、これはご本人同様見ているこちらもその潔さに驚きがあって、でも受け止めるのに戸惑いを隠せない言葉でした…。

ご自身のリリースを読む限りスーパーGTは引退すると事ですが、他のカテゴリーでは機会があれば走りたいということでした。プレッシャーが全然違うのかもしれませんね。他のカテゴリーを見下している訳ではないですよ。そして、お子様も生まれいろんな責任が生まれた昨今、お父様のお会社やチームの運営も頑張るということですので、サーキットでまだまだお目にかかれると思っておりますので、素敵な笑顔に出会えること楽しみにしたいと思います。あ、まだ終わってないから残り3戦を悔いなく頑張ってくださいね!クルマやお顔の写真を一瞬でも撮る機会があればいいなあ。どこでも入れるわけではないので、なかなか難しいんですよね。菅生は上から撮影できるので良かったです。

郊外の山の上に引っ越してそろそろ一年。月を眺めるのも静かで良し。他人さまの将来を考えさまざまな分野での活躍を祈る一方、わたくしは食欲の秋との戦いに突入。ケーキ作るのも工作している気分で楽しいけど、和食が一番好きかな。秋は特に毎日負けが続きます。そもそも戦ってない????では、また!

(写真、テキスト 大谷幸子)

[ガズー編集部]

コラムトップ