これはおもしろい!公道でラリー走行会
世界最高峰の世界ラリー選手権(WRC)にTOYOTA GAZOO Racingが参戦するようになり、日本でも年々ラリーが盛り上がっています。最近では映画「OVER DRIVE」も上映され、モータースポーツを知らない人たちにもラリーが知られるようになってきました。国内ラリーの登竜門的存在である「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ(以下、TGRラリーチャレンジ)」も毎回参加者がフルグリッドの大盛況。4月に長野県で開催された際には、参加者の盛り上がりはもちろん、観客は沿道を含め30,000人を超えるほど人気です。この人気を一過性のもにせず、モータースポーツ文化に育てていこうと、今回おもに全日本ラリー選手権に参戦している選手たちが中心となり、一般公道をラリーと同じように地元自治体、警察の許可を取り、占有走行をしながら、よりドライビング技術を高めることでより安全に楽しくラリーをしてもらおうという走行会が関東のとある林道で開催されました。
プロドライバーたちがラリーのすそ野を広げてくれる
発起人は全日本ラリー選手権にプジョーで参戦する川名賢選手。そして30年以上全日本ラリー選手権に参戦している大ベテランの石田雅之選手、さらに先日の「FIAインターナショナルラリー2018 日本スーパーラリーシリーズ」の第2戦 モントレー2018で映画「OVER DRIVE」の劇用車として登場したヤリス(日本名:ヴィッツ)に乗って優勝した炭山裕矢選手といった全日本ラリー選手権などで上位を走るドライバーに「富士SUPER TEC 24時間レース」ST-TCRクラスで優勝した蘇武喜和選手も加わり、トップドライバーが運営してくれるだけでなく、インストラクターとして走りを教えてくれるというとても贅沢な走行会です。
私が思う「ラリーの魅力」
数あるモータースポーツのなかで、あらためてラリーの魅力を考えてみました。サーキットでのレースではスタートしてから、ライバル同士のデッドヒートが繰り広げられます。競技中、常にライバルが目の前にいたり、背後から迫ってきたりと、マシンを操るだけでなく、前後のマシンも意識しながら走っています。走行ラインを変えて、ライバルを抜いたり、時にはブロックして抜かれないようにします。この駆け引きが観客を興奮させる、レースの醍醐味のひとつです。一方ラリーは、TGRラリーチャレンジの場合、1分間隔で1台ずつスタートしていくのでライバルが目の前にいなく、タイム差は競技区間(SS)をゴールしてみないとわかりません。SS中、ドライバーは、コ・ドライバーが読み上げるペースノートを聞きながら、マシンとの対話に集中しコーナーを駆け抜けます。ライバルを気にせずドライビングに集中できます。
- 森の中を走るシーンはまるで一枚の絵画を観るように美しい
またサーキットでは練習走行、フリー走行、公式予選そして決勝と同じコースを数十回走ってマシンセッティングを煮詰めながら、最速ラップの出る走行ラインを見つけ出すのに対し、ラリーでは、レッキ(事前に下見しながらペースノートを作る試走)をしたら、あとはSSを走るだけです。一度通ったコーナーは次のSSを走るまで走らないので、コーナリングでひとつタイムロスすれば取り返すのは至難の業です。だから助手席に乗るコ・ドライバーと力を合わせ、ペースノートを基準にコーナーをひとつひとつ正確に抜けていきます。マシンを信じ、二人が息を合わせ、ゴールを目指す人間くささがラリーならではの魅力だと思います。
そしてもうひとつ。公道を走るので車窓から見える景色が変わり、走っていて楽しいこと。写真を見ればわかるように選手とマシンが一体化するだけでなく、風景に溶け込み、観客は一枚の絵を見ているかのような感動を覚えます。
- ワインディングを駆け抜ける。動物が駆けているような雰囲気だ
ベテランドライバーにトヨタ86の走らせ方を教わる
私がコ・ドライバーを務めるネッツ東京レーシングのトヨタ86のドライバーは、塚本奈々美選手。サーキットやドリフトでレースに挑んでいますが、今シーズンからラリーに初参戦し、初戦は無事完走しクラス7位でした。次戦はさらに順位を上げるべく、全日本ラリー選手権にトヨタ86で参戦するベテランドライバーの石田選手に同乗していただき、レッスンをしていただきました。サーキットとラリーでは、同じアスファルトでもコース幅や路面状況がまったく異なるので、ドライビングも異なります。ラリーの走らせ方を教わりながら、時には石田選手にドライビングしていただき、塚本選手が助手席で同乗しながらポイントを教えていただく。
午前中みっちりレッスンを受講し、午後は私が助手席に乗りレッキをしてペースノートを作り、次からペースノートを読み上げながらコンビネーションを確認しアタックしてもらいました。すると以前より格段に車速が上がり、ドライビングもとてもスムーズになっていました。油断していた私は思わずペースノートを読み飛ばしてしまうくらい速くなっていました。これで次戦がより楽しみになりました。
そしてせっかく公道を占有してラリーを体感できるということで、ネッツ東京の片山守社長も駆けつけてくださり、アクアのラリー車のステアリングを握り走りました。やはりモータースポーツは観るだけでなく、やってみると選手たちの気持ちがわかると喜んでいただけました。
ラリー好きが集まった走行会
占有しているとはいえ、スタートやゴール、途中区間などにオフィシャルが必要で、TGRラリーチャレンジに参戦している選手たちが、ボランティアで協力してくれました。さらに自分たちの技術を高めようと、ラリーやジムカーナに参戦している方はもちろん、マイカーでどれだけ走れるのか試してみたくて、購入してまもないマイカーで参加する方もいました。
こうして公道を占有して走れる貴重な機会はなかなかないので、ぜひみなさんにもマイカーで体感していただけたら、ある程度限界がわかり、その後、より安全に走れるようになると思います。そのうえでラリーに参戦してみたいと思ったら、この走行会だけでなく、全日本ラリー選手権でトップ争いをしている奴田原文雄選手や新井敏弘選手もラリースクールを開講しているので、ぜひラリードライバーに教わりながら、クルマのコントロール方法の基礎を学んでみることをおすすめします。
- ふだんは選手として走っていたり、車両製作・チーム運営をするラリー関係者も走行会を手伝ってくれました
(写真:山口慎司・寺田昌弘 / テキスト:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
元ラリードライバー寺田昌弘コラム
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