トヨタ初の総合優勝を大胆予想!ダカールラリー2019直前情報
2019年最初の世界的モータースポーツといえばダカールラリー。41回目を迎える大会は、
1月6日(日)から17日(木)まで、10ステージ5,600km(オート部門)うち2,956kmがSSとなります。開催国が史上初となるペルー1ヶ国のみで規模は小さく見えますが、SSの約70%は砂、ペルー独特の細かい砂に小さな石が混ざっていたり、平坦な場所に見た目ではわかりにくい大きなフェシュフェシュ(ベビーパウダーのような微細な砂が積もった極度に柔らかい路面)があったりとマシンへの負荷は、南米大陸でもかなり高いです。ドライバーにとっては、不規則に構える砂丘が走りにくく、気を抜くと脱出にかなり時間がかかるようなスタックをしてしまう可能性があります。
ナビゲーターにとっては、砂丘の中にあるウェイポイント(通過しないとペナルティになってしまうポイント)を探すのが難しいこと、そして南東に下り、後半は北西に上るルートのため、行きに走った多くの轍に惑わされることも。さらに幾重にも北東から南西にかけてあるワジ(涸れた川)が、ミスコースすると段差が行く手を阻み大きくタイムロスすることもあります。世界一過酷なラリーとして名高いダカールラリーですから、至る所に困難が待ち受けていることが予想されます。
- ペルー1ヶ国でのみの開催だが、砂、砂、砂のステージが続く
1月6日にペルーの首都リマでスタートセレモニーをし、7日からステージが始まります。SSは84kmと短いので足慣らしといった感じですが、おそらくギャラリーがいる砂丘もあると思います。8日、9日のアレキパまでの2つのSSは、342km、331kmとベテランであれば砂丘をいかに速く越えられるかが勝負になります。そしてアレキパから2ステージはメカニックなどのサポートが得られないマラソンステージ。オート部門はチリ、ボリビア国境に近いタクナまで南下します。アレキパからタクナまで直線で約200km程度ですが、行きも帰りも約700km、そのうちSSは351km、450kmとあるので、西側の砂丘だけでなく、東側の丘陵地にも行くかもしれません。どこかハイスピードで走れる箇所があり、飛ばしすぎてクラッシュしてしまうと取り返しのつかないことに。この2日間のマラソンステージが前半の山場になると思います。
そしてアレキパでの休息日でマシンをリフレッシュし後半戦へ。ステージ6は810kmですが、そのうちSSは290kmなので比較的走りやすいステージだと思います。その後スタート地点に戻ってくるループ状のSSが2回あるのですが、ここがかなり難しいのではと予想します。おさらいすると、スタートから3ステージはそこまで過酷ではなく、2日間のマラソンステージは、いかにマシンにダメージを与えないように走れるか、我慢が必要。後半は2回のループ状のステージがかなり過酷であると予想します。
TGRSAがハイラックスとともにダカールの頂点を目指す
2012年大会からハイラックスで参戦している南アフリカトヨタのチーム。今回はハイラックス誕生50周年のアニバーサリーイヤーだけに大注目です。唯一のメーカーワークスだったプジョースポールが撤退し、そのドライバーだったカルロス・サインツ選手、ステファン・ペテランセル選手、シリル・デュプレ選手はMINIで参戦することになりました。標高が高いステージだとディーゼルターボエンジンのMINIが有利でしたが、今回は極端に標高の高い箇所がないようなので、ガソリンエンジンのハイラックスにとって同じ土俵で競えます。
TOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICA(以下、TGRSA)は、今回も3台体制でトヨタ初となる総合優勝を目指します。チーム発足からマシン開発をし、エースとして乗り込む母国ドライバー、ジニール・デュビリエ選手、ナビゲーターはドイツのディルク・ボン・ジツェウィッツ選手。ジニール選手は過去15回参戦していますが、すべて完走している「リタイアしないドライバー」。過去2009年に総合優勝し、ハイラックスではすべてトップ5以内でゴールしています。そしてフォルクスワーゲンで2011年、MINIで2015年にそれぞれ総合優勝しているカタールの英雄、ナサール・アルアティア選手は、2017年大会からハイラックスでダカールに挑み、前回大会では総合2位。今回砂丘ステージが多いことから、最も総合優勝に近い選手です。ナビゲーターは、冷静なナビゲーションに定評があるフランスのマチュウ・ボウメル選手。そして前回大会からTGRSA入りし、オランダ人として初めてステージ優勝するなど成長著しいベルナルド・テン・ブリンケ選手と新たにコンビを組むベテランナビゲーター、フランスのグザビエ・パンセリ選手。
プジョーはワークスでの参戦はしませんが、プライベーターチームがマシンを譲り受け、セバスチャン・ローブ選手が乗るので、ここもライバルですが、ぜひWRCスペインでTOYOTA GAZOO Racingがローブ選手に敗れたリベンジを、TGRSAがここダカールでしてもらいたいです。
- TGRSAは3台のハイラックスで総合優勝を狙う
- 南アフリカトヨタで生産される50周年仕様車のスタイリングのハイラックス
市販車部門はTLCが6連覇を目指す
前回大会では、トヨタ車体の社員ドライバー、三浦昂(あきら)選手とフランスのローラン・リシトロイシター選手のコンビがランドクルーザー200で部門優勝をした市販車部門。ランドクルーザーをはじめ、ハイエース、ヴォクシー、アルファードなどを生産するトヨタ車体の「チームランドクルーザー トヨタオートボデー(TLC)」は市販車部門6連覇を目指し、国内外でテストをし、万全の態勢でペルーへ向かいます。モロッコでのテストでは、豊田章男社長が激励に訪れ、さらにランドクルーザー200に乗り、トヨタのマスタードライバーとして砂漠を走るなどラリーで勝つだけでなく「もっといいランドクルーザーづくり」を目指しています。選手は前回同様、三浦選手、ローラン選手、もう1台はクリスチャン・ラヴィエル選手とジャン・ピエール・ギャルサン選手のフランス人コンビの2台で挑みます。
今大会は、市販車部門ではランドクルーザーが、総合ではハイラックスが優勝し、ダブルタイトルをトヨタグループのそれぞれのチームが獲得する可能性がとても高いです。ダカールオフィシャルサイト、各チームのサイトにアクセスしていただき、ぜひ応援していただきたいです。
(テキスト:寺田昌弘 / 写真:TOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICA・Team Land Cruiser TOYOTA AUTO BODY・ASO)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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