スーパーGT唯一の海外チーム「arto Team Thailand」の驚くべきチャレンジ精神
先日の大分県・オートポリスで開催されたスーパーフォーミュラ第3戦で、来日2戦目にしてポールトゥーウィンを決めたジュリアーノ・アレジ選手と2017年からスーパーGTに参戦するショーン・ウォーキンショー選手が、今シーズンにコンビを組むスーパーGT GT300の35号車「arto Team Thailand」。タイのレーシングチームで昨年から続く新型コロナウイルスの影響で、監督のステポン・サミタシャさん、ドライバーのナタポン・ホートンカム選手やメカニックなどタイ人メンバーが日本に来られないなか、今シーズンもLEXUS RC F GT3でGT300に挑んでいます。
トヨタ・チーム・タイランドのスーパーGTチーム
タイでトヨタのモータースポーツ振興活動をし、ニュルブルクリンク24時間耐久レースにもカローラ・アルティス、C-HRで参戦。スーパーGTには2014年2016年にタイ開催時にスポット参戦し、2017年より唯一の海外チームとしてフル参戦しています。チームの代表で監督のステポンさんは、タイのトップカテゴリーであるタイランド・スーパーシリーズに参戦し、何度も年間タイトルを獲ったドライバーであり、ニュル24時間にもドライバーとして参戦しています。ニュル24時間はトヨタ モーター タイランドが生産するカローラ・アルティスやC-HRにタイ人ドライバーで、タイのモータースポーツが世界でどこまで通用するのか、挑戦しています。スーパーGTも14車種28台と他に類を見ないほどのバラエティに富んだマシンがしのぎを削るGT300で、LEXUS RC F GT3で挑み続けています。ともに海外のトップレースに参戦しながら、その経験やデータをタイのモータースポーツ振興に役立てています。
ともにF1の血を継ぐ二人のドライバー
ARTA時代にGT300クラスで3度の優勝実績のあるイギリス人のショーン・ウォーキンショー選手(1993年生まれ)は、2019年より、このチームでステアリングを握る。もともとイギリスでフォーミュラ・ルノーからレースを始め、F3、GT3マシンを乗り、2017年からスーパーGTへ。ARTA BMW M6 GT3でベテランドライバーの高木真一選手とコンビを組み、マシンセットアップからタイヤマネージメントまでGT300クラスのことを学びながら2018年は年間2位まで駆け上がりました。
レースファンなら知っていますが、彼の父はトム・ウォーキンショーさん。ミハエル・シューマッハ選手がF1タイトルを獲得したベネトンでエンジニアリングディレクターとして活躍し、その後リジェやアロウズのチームオーナーをするなど大いにF1を盛り上げました。ショーン選手は、お会いするとまさしく温厚で冷静なスコットランドの紳士。マシンのドライビングもスムーズで安定感があります。LEXUS RC F GT3のベストなセッティングを出すのにはまだ時間がかかりそうですが、毎回真剣に挑む姿勢がかっこいいです。
そして今シーズンよりスーパーフォーミュラライツにTeam TOM'Sから参戦し、スーパーフォーミュラはKuo VANTELIN TEAM TOM’Sの中嶋一貴選手がFIA世界耐久選手権(WEC)で欠場する際のリザーブドライバーとして乗るのですが、なんと2戦目で優勝する快挙を達成したジュリアーノ・アレジ選手(1999年生まれ)。カートから始め2015年にフランス・F4選手権にステップアップすると初戦にポールトゥウイン。2015年からGP3シリーズ参戦、2019年からFIA-F2参戦し、今シーズンから母の母国である日本で走ります。スポットですが5月23日の富士SUPER TEC 24時間レースにも参戦し、ST-Zクラス6位ですが、チーム内最速ラップはさすがです。父はご存じF1ドライバーだったジャン・アレジさん、母は女優でモデルの後藤久美子さん。ジュリアーノ選手は、日本語が上手でユーモア溢れるとてもチャーミングなドライバーです。
実はショーン選手とジュリアーノ選手、幼少の頃、お互い父親の仕事の現場で、何度も会ったことがあって、まだその頃はお互いレースもしていなくて、それが大人になって日本でコンビを組んでいるという偶然をとても喜んでいます。
35号車arto Team Thailandは挑み続けるチーム
5月3~4日にかけ富士スピードウェイで開催された第2戦。arto Team Thailandのエントラントの一員としてずっと一緒にいましたが、サーキットレースをあまり観たことがない私にとって、スーパーGTは大迫力のサウンドとスピードの裏でとても緻密で繊細なチーム運営がされていることに驚きました。1/1000秒を競うだけあって、ドライバーの走りはすべてデータ管理され、ドライバーからの情報と照らし合わせながらセットを変え、ドライバーも走りを変えたりしながらいいタイムが出るポイントを探ります。コーナーひとつとっても、マシンを曲がるようにセッティングするのか、ドライバーに曲げるように走ってもらうのか。タイヤのコンパウンド、内圧、気温、路面温度と様々なファクターから最適を導き出します。
チーフディレクターの松浦佑亮さんに伺うと、データを積み上げ、より速く走れるよう様々なファクターのベクトルを合わせてきますが、それ以上タイムがよくならなければ、思い切ってセットを変え、再びデータを積み上げていく作業の繰り返しとのこと。それはまるで迷路のようで、正しい答えを導き出すためには、何度もトライし続ける。松浦さんもヨーロッパでフォーミュラのレースに出ていて、全日本カート選手権ではチーム監督をし、5月23日に鈴鹿で開催されたオートバックス全日本カート選手権では、第1戦でチームの佐々木大樹選手が優勝。またいつも若手育成に情熱を注いでいる、レースを深く知るディレクター。データエンジニア、トラックエンジニアとともにすべての要素が合う1点を目指し続けています。コロナ禍の影響で、タイから監督や選手、メカニックが来られないなか、一つでも順位を上げるために、ドライバー、エンジニア、メカニックとアイデアを出し合い挑むarto Team Thailand。唯一の海外チームが今シーズン、ショーン選手、ジュリアーノ選手のドライビングでどこまで順位を上げて行くか、ぜひ注目していただきたい。
写真:折原弘之・寺田昌弘 文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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