第9回 コンパクトSUVが流行している理由は? | プロフェッサー由美の自動車トレンド講座
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第9回 コンパクトSUVが流行している理由は?
流行は日産ジュークの人気から? 世界中で人気を博するようになった経緯は?
★今回のテーマ★
日本だけではありません。ここ数年、世界中でコンパクトなサイズのSUVが売れ筋になっています。人気の理由のひとつは、小型でお値段はお手頃。なのに、決してチープに見えないところ。そして取り回しがよく、アイポイントが高くて運転しやすいのもメリットですが……どうやらそれだけが理由ではない様子。SUVなのに実は都会で人気なのはなぜでしょうか?
本格的オフローダーとは違い、悪路や荒れ地は走らない
2015年2月に発売されたマツダCX-3は、CX-5に続いて投入された新世代のクロスオーバーSUVです。プラットフォームはデミオと同じなので、サイズはとてもコンパクト。エンジンがSKYACTIV-Dと呼ばれる1.5リッターのディーゼルだけというのは思い切った設定です。トランスミッションは6ATと6MTが用意され、それぞれ4WDとFFがあります。
「魂動(こどう)-Soul of Motion」のデザインテーマを採用しているのは、最近のマツダ車と共通しています。SUVと聞いて想像されるような武骨さは感じられず、とてもスタイリッシュ。女性にも人気なのがわかります。
- マツダのコンパクトSUVであるCX-3。おしゃれな街並みに映えるボディーは全長×全幅×全高=4275×1765×1550mmと、“兄貴分”のCX-5と比べて265mm短く、75mm幅が狭く、155mm背の低いサイズとなっています。
こういうコンパクトなSUVが人気になったのは、2010年の日産ジュークあたりからでしょうか。斬新なデザインで、ヨーロッパで人気が爆発。日本でも売れ行きを伸ばしました。2013年にはホンダ・ヴェセルやプジョー2008、ルノー・キャプチャーが登場。どれもボディーが小さいだけでなく、エンジンも1.2リッターから1.6リッターぐらいの小排気量が主流となっています。いわゆる「ダウンサイジング」の流れにもバッチリ乗っています。ほかにも、ジープ・レネゲード、フィアット500X、フォード・エコスポーツ、スズキのSX4 S-クロスとエスクード……と、続々とニューモデルが登場していますが、どれも個性的で魅力的。2015年の東京モーターショーに出展されていたトヨタのコンセプトカー、C-HRもこのジャンルのクルマで、もうすぐ市販モデルが登場するとうわさされています。
- 2015年の第44回東京モーターショーに展示されたトヨタのC-HRコンセプト。市販されれば、RAV4がミドルサイズの大きさになってしまって以来、トヨタにとってはひさびさのコンパクトなクロスオーバーSUVとなります。
このように、とどまるところを知らない勢いのコンパクトSUVですが、そもそも「SUV」とは何でしょうか。コトバとしては「Sport Utility Vehicle」の略で、日本語では多目的スポーツ車などと呼ばれます。ちょっと……いえ、かなり意味不明ですね。そもそも車高の高い4WD車のことを、以前の日本ではオフローダーとかクロスカントリー(クロカン)などと呼んでいました。RV(レクリエーショナル・ビークル)という名前もありましたね。日本でSUVという言葉が使われるようになったのは、わりと最近のことだと思います。
4WDは昔からオフロードを楽しむ人々に人気で、かつては軍用車から発展したジープやトヨタ・ランドクルーザーなどのヘビーデューティーなクルマが好まれていました。それが、1990年代に入ると少し流れが変わり、三菱パジェロを街なかで走らせる人が増えました。パリ・ダカールラリーでの優勝もあって大人気でしたね。
さらに2000年代になると、ポルシェ・カイエンに代表される大型でハイパワーな高級SUVが世界中で流行。SUVは洗練されたデザインと乗用車と変わらない快適さを持つようになっていきました。そもそも、オフロード性能の高いクルマを持っていても、ユーザーはほとんど街なかや高速道路しか走りません。乗用車との境目が曖昧になったこのジャンルのクルマは、クロスオーバーSUVと呼ばれています。
- 2002年に登場したポルシェ・カイエン。オフロード性能が大きなステータスだった高級SUV市場に、スポーティーな走りが自慢のカイエンは驚きをもって迎えられました。今ではすっかり、ポルシェの屋台骨を支える人気モデルです。
今日の市場を席巻するコンパクトSUVのトレンドは、こうした「SUVのオンロード化」と前後して始まります。なかでもその起源とされているのが、1994年に発売された初代トヨタRAV4です。5ナンバーサイズの小さなボディーのクルマで、CMには木村拓哉を起用して、若々しさをアピールしました。この後、初代ホンダCR-Vを筆頭にフォロワーが続々と登場。このジャンルは、もともと日本の自動車メーカーが得意だったようです。
本格的なオフローダーと違って、クロスオーバーSUVはモノコックボディーを採用しています。悪路走破性を重視したはしご型フレームを使わず、オンロードでの乗り心地を優先しています。だから、クロスオーバーSUVは4WDとは限りません。それはコンパクトSUVも同じことで、販売台数はむしろFFモデルのほうが多いのが普通。ルノーのキャプチャーに至っては、そもそも4WD車をラインナップしていないくらいです。
コンパクトなクロスオーバーSUVは、もはや荒れ地や悪路を目指すことはないのでしょう。アクティブな雰囲気をまとったスタイリッシュなファッションSUVとして、今後もしばらくは人気が続くと思います。
- 並み居るライバルを抑え、2014年の国内年間販売台数でSUVナンバーワンの座に輝いたホンダ・ヴェゼル。都会的なムードを持つコンパクトなモデルこそ、これからのクロスオーバーSUVの主流になるのかもしれませんね。
★用語解説★
SKYACTIV-D
マツダが2010年から導入を進めている新世代自動車技術がSKYACTIVです。その内容はエンジンからボディー、シャシーに関する技術など、多岐にわたります。なかでもSKYACTIV-Dというのは、低圧縮比によって環境性能を高めたマツダ独自のディーゼルエンジンのことで、もちろんCX-3にも搭載されています。
トヨタC-HRコンセプト
2014年のパリサロンで初めて姿を現したのが、C-HRコンセプト。2015年の東京モーターショーにも出展されて、低く構えた前傾姿勢が目を引きました。市販車にはプリウスで初採用された新世代車両技術「TNGA」が用いられ、ハイブリッドシステムが搭載されるといわれています。
ポルシェ・カイエン
2002年に登場したポルシェの大型SUVです。スポーツカー専門だと思われていたポルシェからクロスオーバーSUVが発売されたのには驚きましたね。2014年には一回り小さいマカンも登場して、すっかり違和感がなくなりました。ポルシェらしいスポーティーな走りが魅力です。
はしご型フレーム
初期の自動車は、フレームにエンジンやサスペンションなどを組み付け、その上にボディーを載せていました。現代のクルマはモノコック構造が普通ですが、丈夫さや耐久性が求められるオフロード車やトラックには、今も強度を高めるのに都合のいいはしご型フレームが使われています。
★ここがポイント★
2014年にデビューしたスズキ・ハスラーは大人気になりました。コンパクトどころか、軽自動車規格のクロスオーバーSUVです。デザインがキュートな上にポップなボディーカラーが数多く用意されていて、女子からも熱い注目を浴びました。
軽自動車はサイズが小さいのでデザインする余地が少ないのですが、SUVテイストを取り入れることによって魅力的なスタイルになりました。ホワイトルーフがとってもかわいくておしゃれ。
最近では街なかで大型のSUVをあまり見かけなくなったような気がします。やっぱり大きすぎると不便だし、時代の雰囲気にも合っていません。大きいクルマに乗って見栄(みえ)をはる、“大きいクルマがステイタスシンボル”という時代ではなくなったのかもしれません。
日産ジュークが登場した時には、「スポーツカーとSUVを合体させた」という色っぽいフォルムがとても気になりました。今でも、新しいカッコよさを作り出したクルマだと思います。
(文=吉田由美/写真=小林俊樹)
[ガズー編集部]
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第1回 EV、PHV、FCV?
第2回 ダウンサイジングってなに?
第3回 自動運転は本当に実現するの?
第4回 トレンドカラーってどう決まる?
第5回 スポーツカー復活の流れはホンモノ?
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第7回 ディーゼル車は環境にやさしいの?
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第9回 コンパクトSUVが流行している理由は?
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