第12回 4WDにはどんなメリットがあるの? | プロフェッサー由美の自動車トレンド講座

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第12回 4WDにはどんなメリットがあるの?

きっかけはラリー競技での活躍? 最近になって各メーカーが力を入れている理由は?

★今回のテーマ★

第9回の講座で、「最近流行のクロスオーバーSUVにはFFのモデルが多い」という話をしました。逆に、オンロードを走る乗用車に4WDシステムを搭載するケースもあります。車高の低い普通のクルマですから、もちろんオフロードに出掛けるためではありません。乗用車を4WDにすることには、どんなメリットがあるのでしょうか?

悪路や雪道に強いだけでなく、実はスポーツドライビングも得意

4代目となったトヨタ・プリウスが大人気ですね。最高で40.8km/リッター(JC08モード)という低燃費が評価されているのはもちろんですが、初めて4WD版が導入されたことも重要なポイントです。リアにもモーターを追加して、必要な場面には後輪も駆動させる「E-Four」(電気式四輪駆動方式)というシステムを採用しました。北国からは4WDモデルを求める声が多かったそうで、これで雪道でも安心してエコカーに乗ることができるようになったわけです。

4代目にして初めてトヨタ・プリウスに設定された4WD車には、後輪をモーターで駆動する方式が採用されています。これで降雪地のユーザーでも、安心してプリウスを購入できるようになりました。

乗用車の4WDというと、まずアウディの「クワトロ」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。アウディはFFが基本ですが、各モデルの上級グレードには必ずといっていいほど「クワトロ」という名前の4WDシステムが採用されています。「四駆」というとなんだかゴツい感じですが、クワトロという呼び方はスマートですね。私が最近まで乗っていたアウディTTもクワトロでした。

アウディが初めてクワトロを販売したのは、1980年でした。今ではグレード名になっていますが、この時はクワトロが車名です。このモデルをベースにしてラリー用の競技車両が作られ、WRC(世界ラリー選手権)に参戦します。当時、モータースポーツの世界では後輪駆動が常識でしたが、クワトロの活躍によって他のメーカーでも4WDを採用するようになりました。アウディ・クワトロはラリーの歴史を変えたクルマなんですね。

こちらのちょっと古い写真は、1984年のWRCで戦うアウディ・クワトロ。アウディはラリーでの活躍を通して、オフロード走行だけにとどまらない4WDのメリットを世に知らしめました。

アウディがうまいのは、クワトロをスポーツイメージに限定しなかったところです。ハイパワーでもしっかり駆動力を路面に伝えるということを、プレミアムな価値として打ち出したんですね。オフロード車の4WDシステムはパートタイム式で、悪路に入る時に手動で2WDから4WDに切り替える必要がありました。クワトロはセンターデフを内蔵したフルタイム4WDで、自動的に駆動力を配分します。手間をかけずに常に最適な駆動力を得られる、高級なシステムということになります。

スバルも4WDのイメージが強いメーカーのひとつでしょう。特にスバルの場合は、シンメトリカルAWDという独自のメカニズムが特徴となっています。水平対向エンジンに4WDシステムを組み合わせることで、パワートレインを低重心に、しかも左右対称のレイアウトにすることができるんです。バランスがいいので、走行安定性が高いといわれます。

こちらはスバルが採用するシンメトリカルAWD。縦置きの水平対向エンジンを採用することで、パワートレインが左右対称になっていることがよく分かります。

ところで、実はスバルのほうがアウディより4WDの歴史が長いんですよ。1971年に発売されたレオーネに、翌年に4WD版が追加されたのがその始まりとされています。東北電力からの要請で注文生産したモデルの評判がよく、それが市販車に発展したわけです。これがレガシィ、インプレッサに受け継がれていきました。アウディ同様スバルもWRCで活躍し、世界的にもスバル=4WDのイメージが定着しました。

スバルのラインナップを見てみると、OEM(ほかのメーカーから提供されたモデルを、自ブランドのモデルとして販売すること)のクルマを除けばほとんどが4WD。インプレッサにFFが設定されているのとFRのBRZだけが例外です。駆動システムにはいくつかの種類があって、今回乗ったレヴォーグにはVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)が搭載されています。前:後ろ=45:55の状態を基本に、走行状態に合わせて前輪と後輪に伝える駆動力の配分を変化させるシステムで、スポーツドライビングに向いています。

この「状況に応じて車輪ごとの駆動力を変える」という技術については、電子制御の進化によって、以前にもまして精密なコントロールができるようになりました。だから、4WDのスポーツ性はますます高まっていますね。駆動力のロスが少ないので、コーナーでもしっかり加速することができます。最近ではアウディやスバル以外にも4WDに力を入れるメーカーが増えてきました。例えばマツダは、デミオやアクセラ、アテンザといった乗用車にも積極的に4WDを設定しています。電子制御カップリングを使ったオンデマンド式で、クロスオーバーSUVのCX-5やCX-3と共通するシステムです。

マツダは2012年に登場したCX-5から、新開発のオンデマンド4WDを市場に投入。「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」「CX-3」と採用を進め、「i-ACTIV AWD」という名称で大々的にアピールしています。マツダの乗用車に4WDのイメージが定着する日も近い?

私はアウディTTのクワトロに乗っていたとき、本格的な雪道にはあまり行っていません。それもあって、普段走っていて4WDの恩恵を受けたという記憶はそれほど多くありませんが、雨の高速道路などで余裕を感じられるのは確か。4WDに乗っていれば、いざというときに安心という精神的なゆとりを得られます。東京にはめったに雪は降りませんが、運悪く積雪に遭遇しても4WDなら立ち往生せずにすみますから。もちろん、早めに冬用タイヤに履き替える必要があることに変わりはありませんが。

★用語解説★

E-Four
機械式の4WDと違って、後輪の駆動にモーターを使うE-Fourには、エンジンの力を後輪に伝えるプロペラシャフトがありません。だからコンパクトで軽量。モーターを使った4WDは、小型車に向いたシステムといえるでしょう。

WRC
FIA 世界ラリー選手権 (FIA World Rally Championship)の略称がWRC。1973年に始まった大会です。F1と並ぶモータースポーツの最高峰で、公道を使って競技が行われます。ヨーロッパでは関心が高く、そこでの成績がクルマの販売に表れるそうです。

フルタイム4WD
フルタイムという名のとおり、常に4WDで走る方式。パーマネント式とも呼ばれますね。ビスカスカップリングや多板クラッチを使ったセンターデフで、前後の駆動力をコントロールします。安定性が高いのですが、燃費ではちょっと不利といわれています。

オンデマンド式4WD
4WDで走る必要のない市街地や高速道路ではFFの状態で走り、必要なときだけ自動で後輪にも駆動力を伝えるシステムです。現在使われている4WDは、この方式が多いですね。各メーカーが効率や作動速度を競って開発を進めています。

★ここがポイント★

クワトロ(Quattro)というのは、イタリア語で数字の4のこと。アウディはドイツの自動車メーカーですが、外国語を使ってオシャレ感を出そうとしたのでしょうね。

4WDとか四駆というと、どうしても背の高い武骨なクロカンというイメージになってしまいがち。そこで4WDと言わずにAWD(all-wheel drive、全輪駆動)という表現を使うメーカーもあります。スバルもそうですね。

普段乗りで駆動形式を意識することはほとんどありませんから、クワトロがここまで有名になったのはやっぱり命名の勝利。ちょっと値段は高くても、せっかくだからクワトロにしておこうと思わせてしまいます。

最近の4WDは、昔のパートタイム4WDと違って特別な操作は必要ありませんし、燃費もそれほど悪くありません。どんな路面でも確実に駆動力を伝える安心感を考えると、普通の道しか走らないようなユーザーさんでも、選ぶ価値はあると思います。

(文=吉田由美/写真=小林俊樹)

[ガズー編集部]

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