【SEMA2018特集】自らの手で作り上げた独自スタイル、マイノリティのシボレー・VEGAでレース参戦!

60年代後半にアメリカでのシェアを拡大した欧州車や日本車に対抗するため、GMやフォードなどの地元メーカーがこぞって開発したのが『サブ・コンパクト』と呼ばれるジャンルの新型車だ。

GMが1970年にシボレーからデビューさせたサブ・コンパクトの代表モデルが、シボレー・ベガである。全長4450mm、ホイールベース2460mmというコンパクトな車体に、直列4気筒SOHCエンジンを搭載。2ドア・ハッチバッククーペを基本に、2ドア・セダン(ノッチバック)、2ドア・ステーションワゴン、2ドア・パネルバンなど、豊富なボディバリエーションが展開された。

1977年までに200万台以上が生産され、プロダクションとしては一定の成功を収めたベガだったが、一般的に70年代はアメ車の「暗黒期」とも呼ばれ、品質に対する厳しい批判が渦巻いた時代でもあった。ベガもご多分に漏れず何度かの大型リコールを経験している。

そんなベガは、ありとあらゆる種類のクルマが揃うSEMAにおいても少数派と言える存在だ。オプティマ・バッテリーが冠スポンサーを務める『USCA(アルティメイト・ストリート・カー・アソシエーション)』のタイムアタック・シリーズに参戦する車両の展示スペースにおいても、カマロやコルベットといった人気車種がずらりと並ぶ中、ベガはたったの一台しか置かれていなかった。

だが、その73年式ベガを所有するデビッド・キャロルさんに話を伺うと「ベガはオートクロス(=ジムカーナ)用のマシンとしては最高のプラットフォームだよ!」と胸を張って答えてくれた。カマロなどに比べてスレンダーなボディと軽い重量は、まさにオートクロス向き。しかも安く手に入るということで、競技車のベースとしてこんなにいい素材はない、というのがキャロルさんの主張なのである。

ノースカリフォルニア出身のキャロルさんは、ボートレーサーだった父の影響を受け、子供の頃から自然とメカに触れる環境に育った。早くからクルマやバイクにも親しみ、エンジンの修理やチューンナップを楽しんできたという。

キャロルさんのベガは、GMが草の根レーサーのために新品のエンジンを提供しているシボレー・パフォーマンス製のLTG 2.0Lターボエンジンを搭載。トランスミッションも数々のエンジンと互換性を持つ新品を提供しているTREMEC製の3160型6速MTを採用している。
ロン・デービスのカスタムインタークーラーとラジエターも備え、オリジナルのパイピングを構築。アメリカでは一般的なガソリンスタンドでも購入できるE85というエタノール混合燃料を使用する、フレックスフューエル対応の燃料供給システムも採用した。

レーシーな印象を与える外装は、Trackspec製のカーボン製ベントフード(ボンネット)のほか、カスタムメイドのフロントスプリッターやリアスポイラーを装着。オーバーフェンダーは、同じGM系列であるオーストラリアのホールデンが販売していたコンパクトセダン、TORANA(トラナ)用のアフター品を流用している。

フロントサスペンションにはOverkill Racingの調整式コントロールアーム、リアサスペンションにはカスタムメイドのトルクアームを採用した3リンク機構を採用し、オートクロスに合わせたセッティングを追求。エンジンルーム内にはridetech製コイルオーバーのサブタンクもマウントされている。

ホイールはJongbloed Racing WheelsのX6というモデルで、サイズは18インチ×10.0J。ファルケンのアゼニスAT615K+も前後275/35R18と、ワイドボディを活かしたかなり太めのサイズが選択されている。ブレーキはウィルウッドのビッグキャリパーとC5/C6コルベット用のディスクローターが組み合わせられている。

室内にはTMIのバケットシートやDJ Safetyのレーシングハーネス、そしてカスタムメイドのロールケージを装備。さらにステアリングは、なんとプリウスから電動モーターなどを移植し、CBRのステアリングラックと組み合わせたカスタムメイドの電動パワステとなっており、オートクロスにおける操舵力をアシストしている。

USCA以外にも、さまざまなオートクロス競技にベガで参戦し、好成績を収めてきたキャロルさん。「ベガを購入した当初は、みんな僕が間違った選択をしたと考えていたけど、今ではその考えの方が間違っていたことを証明できたと思うよ(笑)」と満足気だ。

また、キャロルさんは、この73年式ベガを購入したのをきっかけに、義理の弟さんと共同で“NoCal Garage(ノーキャル・ガレージ)”というプロジェクトを発足している。「ガレージ」とは言っても、あくまで個人的にベガを改造していくプロセスやレースでの活動をSNSを通して公開し、同じクルマ好きと情報共有しようというのが目的だ。より詳しい情報に興味がある人は、ぜひFacebookやYouTubeで検索してみてほしい。

(テキスト:小林秀雄 / 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

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