【SEMA2018特集】リヤタイヤが片側2本!?3ローター20Bのパワーを受け止めるワイドでホットなR100
カナダのブリティッシュ・コロンビア州にあるアボッツフォードという街に住んでいる、ロッド・ニールセンさん。バンクーバーがあることでも知られるブリティッシュ・コロンビア州は、アメリカ西海岸のワシントン州と国境を接している。ニールセンさんが住むアボッツフォードからアメリカのシアトルまでは、クルマで約2時間という距離だ。
そんな地理的な要素が影響してかどうかはわからないが、ニールセンさんは昔からアメリカ発祥のカスタムカルチャーであるホットロッドを愛好。これまで多くのアメ車を所有し、自らの手で数々のホットロッドを製作してきた。そのニールセンさんにとって最新の愛車であり、最新の作品とも呼べるのが、1972年式のマツダ・R100(アール・ワンハンドレッド)である。
R100とはファミリア・ロータリークーペの輸出仕様で、北米や中南米、オーストラリアなどの海外市場で販売された。排気量491ccのローターを2基備える10A型ロータリーエンジンを搭載し、最高出力は100psを発揮。車名の「R100」は、ロータリーエンジンの頭文字とパワーに由来している。
北米市場におけるR100の販売は、当初アメリカの北西部にあるワシントン、オレゴン、アイダホ、モンタナ、ワイオミング、アラスカの6州と、カナダに限定されていた。それでも、当時はそれほど多くなかった日本製のコンパクトクーペという物珍しさに加え、コスモスポーツに継ぐロータリーエンジン搭載車というユニークさも加わり、R100は北米市場でスマッシュヒットを記録したのである。
カナダ出身のニールセンさんにとっても、R100は昔から馴染みのあるフェイバリット・モデル。いつかはR100をベースにホットロッドを製作してみたいと考えていたそうだ。ちなみに日本仕様のファミリアは角型ヘッドライトを備える一方、海外仕様のR100は丸型ヘッドライトを備えるのも特徴のひとつである。
「ホットロッド歴は20年くらいになりますが、あまりベースとして選ばれることのないR100でホットロッドを製作したらおもしろいと思ったんです。ロータリーエンジンを搭載したパワフルなクルマ、サーキットも走ることができるトラック・レディなクルマに仕上げようと考えました。構想に約2年半をかけ、毎日8時間の作業を繰り返して、約8ヶ月で製作しました。実を言うと去年のSEMAでデビューさせる予定だったんですが、書類の処理が間に合わなくて、泣く泣く出展を取りやめることになってしまったんですよ(笑)。今年、ようやく1年越しでSEMAに参加することができて本当によかったです」
ニールセンさんはR100の外装パネルをベースにスーパーワイドなカスタムボディを製作。シャシーもクロモリのパイプフレームでイチから作り、足まわりもフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクというオリジナルのサスペンションを構築している。
リヤタイヤは、まるでトラックのような片側2個の『デューリー仕様』。これは700hpに達するパワーをトラクションとして発揮できるトレッド幅とスポーティなロープロファイル、旧車らしい理想的な小径感を、すべて実現させるために編み出した裏技だ。205/40R16のタイヤを2本並べることで、計算上410/20R16という極太・低扁平・小径サイズをものにしている。
エンジンはユーノス・コスモに搭載されていた20B型3ローターエンジンを使用。ボルグワーナーのS400SX-Eタービンやビブラントのインタークーラーなども装着されている。燃料にはE85というエタノールとガソリンの混合燃料を使用しており、コレクタータンク内蔵の安全タンクや高圧フューエルポンプなどを使った燃料供給システムもトランクルーム内に作られている。
室内のど真ん中には、ゴールドのセラミックコートが施されたTREMEC製T56トランスミッションが剥き出し状態で鎮座。S1シーケンシャル製のシーケンシフターとASDモータースポーツ製のドリフトブレーキレバーも装備されている。パワートレインの制御を司るマイクロテックのLT-16cコンピュータは助手席前のインパネに装着。
ちなみにこのR100、昨年のSEMAに出られなかった腹いせに(?)カリフォルニア州のオートクラブ・スピードウェイで開催されたマツダ車のイベント『セブンストック2017』でデビューさせ、シェイクダウンにもかかわらずサーキットでの全開走行をお披露目している。
その後、地元カナダのイベントにも2回ほど出展し、今年のSEMAクルーズでもちゃんと自走でパレードしている姿を確認することができた(イグナイテッドのレポートを参照 https://gazoo.com/ilovecars/sema/181116.html)。
そんなニールセンさんのR100だが、SEMAに出展された車両の中から、その年のベストカーが選出される「バトル・オブ・ビルダーズ」において、見事トップ4の栄冠を勝ち取った。まさかの形で1年遅れとなってしまったSEMAだったが、最高の形でフィナーレを迎えることができて、ニールセンさんも喜びを爆発させていた。
[ガズー編集部]
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