いすゞ・ジェミニ (1985年~) バブル時代の名車たち8話

生産:1985年 ~1990年

1953年に英国ヒルマン・ミンクスのライセンス生産で乗用車市場に参入して以来、一部例外を除いてヨーロピアン・テイストのモデルを作り続けたいすゞ。GMのワールドカー構想から生まれ、オペル・カデットなどとボディーを共有する初代に代わって85年にリリースされた2代目ジェミニは、いすゞとしては久々となる純オリジナルモデルだった。

端正かつコンパクトにまとめられたボディーは、いすゞとは縁の深い名匠ジウジアーロによるもの。時代にマッチした軽やかで都会的な雰囲気をたたえていたが、特にデビュー当初のイメージカラーだった「セイシェルブルー」と呼ばれる明るいターコイズブルーに塗られたハッチバックは、スペック至上主義の高性能車やアクセサリーで満艦飾の高級車が氾濫するなかで、一服の清涼剤のような役割を果たした。

経済的なディーゼルエンジン搭載車の存在や、「街の遊撃手」というキャッチフレーズを巧みに映像化した、ジェミニがパリの街中を縦横無尽に駆け回るテレビCMの好感度の高さも手伝い、販売は好調。総生産台数70万台以上という、いすゞの乗用車としては最大の成功作となった。しかし、好事魔多し。90年に世代交代した3代目は、親会社だったGMの意向を反映してアメリカンなムードに。折からの景気後退もあってセールスは急降下、いすゞ最後のオリジナル乗用車となってしまったのだった。