ステーションワゴンブームの火付け役 1989年登場の初代「スバル・レガシィ」を振り返る・・・懐かしの名車をプレイバック
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初代レガシィ ツーリングワゴン
前身となる「レオーネ」からエンジンとプラットフォームを一新し、日本車のヴィンテージイヤーといわれる1989年に登場した初代「スバル・レガシィ」。グローバルモデルとして北米で人気を博すとともに、日本で巻き起こったステーションワゴンブームの火付け役でもあった。
スバルの立役者的な存在
初代レガシィの誕生は1989年1月。スバルは当時まだ富士重工業の社名を名乗り、実際に自動車以外にもバスや鉄道車両のボディー、建設・産業機械からスノーモービル、バギーなどに搭載される汎用(はんよう)のエンジン、果ては清掃ロボット等々までと、多様な製品を手がける企業であった。
同社の主力商品であり一時は国内販売台数の6割以上を占めた軽自動車も、”選択と集中”を徹底させる経営判断によって自社生産から2012年に撤退。さらに、当初は扱い製品のひとつに数えられた自動車ブランド名の“スバル”を社名へと昇華させたのは2017年と、これらのトピックはまだ記憶に新しいという人も多いはずだ。
こうして、規模としては決して大きいとはいえないものの、現在では世界の誰もが知るグローバルなブランドとなったこのメーカーの成長にとって、ズバリ立役者的な存在になったのが歴代のレガシィというモデルだ。特に初代モデルの内容は今振り返っても「成功するべくして成功した」と納得できるほどに、色濃いものであったのである。
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初代レガシィ セダン
日本車の“ヴィンテージイヤー”に誕生
冒頭のとおりレガシィの誕生は1989年。これを耳にしてピンときた人もいそうだが、この年は今でも語り継がれる日本車の“ヴィンテージイヤー”として記憶されるタイミングだ。
例えば、待望の「GT-R」もひと足遅れて復活登場したR32型の「日産スカイライン」や、現在へと続く「マツダ・ロードスター」の端緒である「ユーノス・ロードスター」、さらには後の「レクサスLS」へと歴史をつなぐ「トヨタ・セルシオ」の初代モデルが誕生したのもこの年だった。
バブル景気真っただ中の時代ゆえ、各メーカーとも研究・開発費を潤沢に費やすことができたという事情もあったのか、なかったのか。
斬新な技術よりもアイデア勝負で成功を収めたユーノス・ロードスターを除けば、いずれも練りに練ったハードウエアを採用し、実際にそれが功を奏してそれまでの日本車の殻を打ち破った仕上がり具合を示していると実感させてくれるモデルが多かったのが、この年に登場した各車の特徴でもあった。
国際戦略車を意識して開発
そうしたなかでの初代レガシィは、5ナンバーサイズのセダンとステーションワゴンという構成で比較的地味とも思えるキャラクターではあったものの、前任のレオーネに比べるとはるかに垢(あか)ぬけたルックスを採用してデビューしたことがまずは印象的であった。
端的に言って、パッと見どうにもやぼったかったレオーネに比べると、その姿は比べるまでもなく近代的でスタイリッシュ。レオーネ時代から採用されていたサッシュレスデザインのドア構造も、このモデルになってようやくそんな特徴が生かされた見栄えになった。
水平対向エンジンや4WDの駆動系といった特徴的メカニズムは受け継がれたものの、当初から国際戦略車を意識して開発されたことでそれらも含めたすべてが一から設計された、まさに“オールニュー”と呼ぶにふさわしい内容だったのも見どころである。
例えば、5ベアリング支持とぜいたくなクランクシャフト構造を備え、最強版では2リッターで最高出力220PSと当時クラス最強を誇ったターボ付きを筆頭に、全ユニットが4バルブで電子制御式インジェクションとされたエンジンは新設計されたもの。
セダンの一部モデルにFWD仕様が設定されたものの、「ツーリングワゴン」と称したステーションワゴンの全仕様とセダンの多くは4WDシャシーを採用。その4WDモデルもステーションワゴンの廉価版MT仕様を除いては、すべてにフルタイム方式が取り入れられていて先進性を感じさせた。
レガシィあっての今のスバル
そんな初代レガシィは確かテストドライブを行った経験があるはず、と、古いメモ帳の束をさかのぼっていくと……発見したのが1989年の11月に試乗を行った「GT」グレードの記録だった。
デビューから半年余り遅れて追加設定されたこのグレードは、スポーツフラッグシップであった「セダンRS」に搭載された前出220PSエンジンをATと組み合わせるためにデチューン。新たな適合を行い、最高出力が200PSとされた水平対向4気筒ターボユニットを搭載したセダンとステーションワゴンである。
それでもそのパフォーマンスは相当のもので、特に後者は「ステーションワゴンは走りが鈍重」というそれまでの常識を覆し爆発的なヒットを放ったばかりか、それを横目で見ていたライバル各社から直接の競合車が次々発売されるきっかけにもなった。日本のステーションワゴンブームの火付け役ともいえる伝説的な存在だ。
実際、当時の自身のメモにも「パワステの容量が足らず、アイドリング時や速い転舵時にスティック感が現れる」「急激なアクセルOFF時に吹き残り感がある」などとひととおりの物言いの後に、「あきれるほど速く、パワーに文句ナシ!」と絶対的な動力性能に対する賛辞が残されている。
そんな初代モデルの成功をきっかけに2代目、3代目……と好調を続けたレガシィも、販売実績を大きく伸ばし始めたアメリカ市場からの声を受けてボディーを一気に拡大するなど、後に“日本離れ”の雰囲気が感じられるようになってしまったのはちょっと残念。
それでも、レガシィの進化は、あらためて日本市場を重視した「レヴォーグ」の誕生へとつながり、なによりもスバルという企業を大きく成長させるなど、同社の歴史的な功績はすこぶる大きい。
現在のスバルはレガシィあってのスバル──そう評しても、決して過言にはあたらないだろう。
(文=河村康彦)
初代 スバル・レガシィ(1989年~1993年)解説
1989年1月、3代目「スバル・レオーネ」の後継モデルとなる「レガシィ」がデビューした。ボディータイプはレオーネと同じく4ドアセダンと、ステーションワゴンの2種類。後者はレオーネと同じく「ツーリングワゴン」の名称で展開された。搭載エンジンはスバル伝統のアルミ製水平対向4気筒を受け継ぎながら排気量を拡大。気筒当たり4バルブのDOHCを採用する2リッターが主力に置かれた。当時クラス最強を誇った最高出力220PSのインタークーラー付きターボエンジンをフラッグシップモデル「RS」に搭載し、さらにこのエンジンの出力を絞りATと組み合わせた「GT」が後に追加されると、レガシィの人気は不動のものとなった。走れるステーションワゴンを目指し新開発されたシャシーもレガシィのセリングポイントで、パートタイム式4WDを1.8リッター車の一部モデルに、「アクティブトルクスプリットAWD」と呼ばれるフルタイム式4WDを1.8リッター車と2リッター車に搭載。“四駆のスバル”の看板を引き継いだ。デビュー前のプロトタイプが米国アリゾナで10万km連続走行速度記録にチャレンジし、平均速度223.345km/hという国際記録(当時)を樹立したことも初代レガシィの歴史に刻まれるトピックである。
初代 スバル・レガシィ諸元
ステーションワゴン GT 1990年式の場合
乗車定員:5人
車両型式:BF5
重量:1400kg
全長:4600mm
全幅:1690mm
全高:1470mm
ホイールベース:2580mm
エンジン型式:EJ20
エンジン種類:水平対向4気筒 DOHC ターボ
排気量:1994cc
最高出力:200PS/6000rpm
最大トルク:26.5kg・m/3600rpm
サスペンション形式: ストラット式独立懸架
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