クロカン4WD民主化の立役者! 初代「三菱パジェロ」を振り返る・・・懐かしの名車をプレイバック
それまで一部の愛好家向けだったクロスカントリー4WDを一気に民主化し、いわゆるSUVが日本の街にあふれるきっかけをつくったのが「三菱パジェロ」だ。1982年登場の初代はどんなところが特別で、どんなところが人々に愛されたのだろうか。
ダントツだった“乗用車感”
三菱の初代「パジェロ」が、日本自動車殿堂で、2023年度の歴史遺産車に選定された。同時に選定されたのは「日産ブルーバード」(510型)や「マツダ787B」などだが、個人的には初代パジェロが最も印象に残っていて、一報を聞いて納得したものだ。
というのも、僕は大学を卒業して、自動車メディア業界に初めて入ったのが、当時はRV(レクリエーショナル・ビークル)と呼ばれていた、SUVやミニバンを専門に扱う雑誌の編集部で、そこで当時は新車だった初代パジェロに何度も乗っていたからだ。
当時、パジェロのような車種は日本にもいくつかあった。当時はまだ乗用車の生産をしていたいすゞの「ビッグホーン」や少し大柄だが日産の「サファリ」、そしてトヨタの「ランドクルーザー60/70」などだ。
仕事柄、これらのステアリングを握ることもあったけれど、パジェロの“乗用車感”はダントツだった。
今では信じられないかもしれないが、当時のSUVはラダーフレームにトラック用エンジンを積み、登録は4ナンバーや1ナンバーと、商用車の一種としてカテゴライズされていた。
そんななかでパジェロは、5ナンバー登録車種やオートマチックトランスミッションをいち早く用意し、乗用車用として開発したディーゼルエンジンをライバルに先駆けて搭載した。なので加速は静かかつ滑らかであるうえにイージードライブ。乗り心地は快適で、ハンドリングは同じように背の高いワンボックスのワゴンより、はるかに自然で安全だった。
スキーファン御用達の一台に
当時の日本ではまだSUVという言葉が一般的ではなく、オフロードを走破することが主目的の4輪駆動車だったこともあって、クロスカントリー4WDという呼び名がポピュラーだった。でも今にして思えば、ライフスタイルに寄り添って生まれたパジェロのキャラクターは、スポーツユーティリティービークル=SUVと呼んでもよかったかもしれない。
もちろんヨーロッパではすでにランドローバーから「レンジローバー」という、このジャンルを開拓したようなモデルは出ていたけれど、当時はまだ輸入車は別の世界のクルマという感覚であるうえに、レンジローバーは1990年まで正規輸入されておらず、飛び抜けて高価だったこともあり、僕たちにとって最も快適なSUVは間違いなくパジェロだった。
よってその後のバブル景気やレジャーブームに後押しされて販売台数を伸ばし、1991年には2代目が国内月間販売台数で「トヨタ・カローラ」などを抑え、第1位に輝くほどの人気を獲得した。当時、苗場スキー場には年間300万人が訪れるなど、スキーブームの真っただ中であり、パジェロはスキーファン御用達と呼べる一台になっていった。
でもパジェロは決して軟派ではなかった。オフロード性能は前述したライバルに引けを取らなかったことを、雑誌の取材で何度も体験することになった。スタイリッシュなフォルムとは裏腹に強靭(きょうじん)なラダーフレームを持ち、エンジンも粘り強かった。
三菱は第2次世界大戦直後から、アメリカの「ジープ」のノックダウン生産を始めていた。当初は自衛隊や官公庁などでの使用がほとんどだったが、その後レジャーユースも増えていった。
ラリーでの活躍を販売促進に
三菱はジープづくりで培った経験を生かし、こうしたユーザーに向けた快適性・安全性の高いクロスカントリー4WDを開発した。これがパジェロだ。つまりジープのノウハウが受け継がれていたわけで、走破性が高いのは当然といえるだろう。
しかも前に書いたように、パジェロはそのパフォーマンスを、乗用車に匹敵するほどの快適性を享受しながら引き出すことができた。都会的な姿にふさわしい、洗練された性能の持ち主だったのだ。
そのポテンシャルはモータースポーツでも立証された。舞台はパリダカことパリ・ダカールラリー(現在のダカールラリー)。パジェロはデビュー翌年に初挑戦すると、1985年に初の総合優勝。その後も篠塚健次郎、増岡 浩の両選手などの活躍で、合計12度の総合優勝を獲得している。
モータースポーツでの活躍をプロモーションに生かし、プレミアム性を高めていくという手法は、スポーツカーではよく見られるが、SUVでは異例のことだった。この点でもパジェロがこれまでのクロスカントリー4WDとは違う、新種の乗り物に感じた。
それまでは脇役にすぎなかったSUVを主役に押し上げた存在といえるパジェロは、この種のクルマを専門に扱う編集部にいたひとりとして、誇らしい存在だった。クルマ好きのなかには、いまなおSUVに抵抗感を示す人もいるようだが、僕はブームが始まったころから、すっと入っていけた。もちろんそれは、パジェロのおかげだ。
(文=森口将之)
初代 三菱パジェロ(1982年~1991年)解説
1982年5月に発売。小型ピックアップ「フォルテ」のラダーフレームをベースに、オフロードだけでなく普段使いにも適した4WD車を志向していた。
当初は3ドアのキャンバストップとメタルトップの2つのボディータイプがラインナップされ、1983年3月には5ナンバー登録のメタルトップワゴンを、同年7月にはホイールベースとボディーを延長し、ハイルーフ化も施した4ドアモデルを追加設定。ATモデルの設定は1985年のことだった。
パリ・ダカールラリーへの初参戦は1983年。1985年に初の総合優勝を遂げた。市販のパジェロは1991年に2代目、1999年に3代目、2006年に4代目へとフルモデルチェンジ。2021年7月に惜しまれつつ生産が終了した。
初代 三菱パジェロ諸元
エステート・ワゴン2000ガソリンターボXLの場合
乗車定員:7人
車両型式:BC5
重量:1635kg
全長:4535mm
全幅:1680mm
全高:1980mm
ホイールベース:2695mm
エンジン型式:G63B
エンジン種類:直列4SOHCターボ
排気量:1997cc
最高出力:145PS/5500rpm
最大トルク:22.0kg・m/3000rpm
サスペンション形式: (前)独立ダブルウィッシュボーン トーションバー (後)固定 半楕円リーフ
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