【ラリージャパンを1000倍楽しもう!】知れば知るほど奥が深い! ラリー専用アイテムCHECK[Vol.3 車両装備編2]
ラリーならではのパーツやアイテムについて『ADVAN CUSCO WRX -STI(VAB)』の柳澤宏至/保井隆宏ペアにお話を伺いつつ紹介するこのコーナーも3回目。
1回目で紹介しきれなかったラリー車の装備品について、今回もノーマルやサーキット用マシンとの違いなどをチェックしていきましょう!
サスペンション
頑丈な専用品をコースに合わせて使い分け!
WRCをはじめとしたラリー車の見せ場のひとつが、大迫力のジャンプスポット!!
飛距離が数十メートルにもなることがある着地の瞬間の大きな力を受け止めるために、ラリー車には専用の高性能なサスペンション(ショックアブソーバー&スプリング)が装着されているんです。
一般的にグラベル用(未舗装路)のサスペンション(写真左)は大小さまざまな衝撃をしなやかに受け止めるために全長が長く設計されていて、車高も高くなるのが特徴。写真右のターマック用(舗装路)は重心を下げて走行安定性やコーナリング性能を高めるために、全長が短くて車高も低めとなります。
ちなみに、市販車両であんなジャンプをしたら…クルマは大きなダメージを受けてしまうので絶対にマネしちゃダメですよ!
グラベル用(写真左)のスプリングは細くて全長が長いのに対し、ターマック用(写真右)は太くて全長が短くなっています。また撮影したターマック用には、ヘルパーというスプリングの遊び防止やストローク量確保のための補助スプリングも装備されていました。
このWRX STIが装着するショックアブソーバーは、丈夫で大きなピストンを使えるモノチューブ(単筒)式。サブタンク付きの3ウェイ調整式と呼ばれるタイプで、頭部のダイヤル(写真左)で伸び側、サブタンクのダイヤル(写真右)で縮み側(低速)/ 縮み側(高速)が細かく調整できます。
タイヤ&ホイール
路面や温度など条件に応じて様々なタイプを用意
クルマの中でも路面と唯一接触しているタイヤは、ラリーでも勝負を左右する重要なアイテムのひとつ。
そこで、公平性を保つため誰でも入手可能な市販品しか装着できず、しかも使用できるサイズや本数も制限されています。
サスペンションと同様に路面に合わせて最適なものが選択されますが、クスコレーシングのWRX STIが装着しているヨコハマタイヤの場合は、グラベル用で3種類、ターマック用で2種類のラリー用タイヤが用意されているとのこと。
またタイヤを装着するホイールも、素材やサイズが決められています。
左がグラベル用で右がターマック用。トレッドパターンと呼ばれるタイヤ表面のブロックの大きさや溝の深さが異なることに注目です。サイズもターマック用は245/40R18なのに対し、パンクなどのリスクを減らしたいグラベル用は空気量が多く衝撃吸収も高い205/65R15となっています。この他に、雪道用のタイヤは国内ではスタッドレス、WRCでは金属製の鋲が打ち込まれたスタッドタイヤ(スパイクタイヤ)が使用されます。
リストリクター
世にも珍しい市販デチューンパーツ!?
ラリーに参加できるクルマは、基本的にJAFやFIAが登録公認した市販車をベースとしなければなりません。
また、性能向上につながるチューニングに関しても、レギュレーションで細かく規定されています。クスコレーシングWRX STIが属するJAF規定のR/RJ車両では、パワー系の変更はエンジンコンピュータとマフラー、エアクリーナーのエレメント程度です。
またターボチャージャー付きのエンジンの場合は、リストリクターという吸気を制限するパーツを装着することで、エンジン最大パワーを制限しているんです。
タービンの吸気側に装着されているラッパ状のパーツがリストリクター。R/RJ車両の場合は、最大内径33mmとサイズが規定されていて、ラリー中に取り外すなど不正がおこなわれないように車検時に主催者から封印されるのです。規程に合わせた形状であれば自作でも構いませんが、市販品も用意されています。
エクステリア
WRCと国内ラリーでは大きく違う!
ラリー車の外装パーツで特徴的なのが “ライトポット"と呼ばれるボンネットに装着される補助灯です。夜間走行には欠かせないものですが、同時に点灯できるライトの個数や位置などが細かく定められています。
ちなみにWRCと全日本ラリーの参戦車両はどちらも市販車をベースとしているものの、エクステリア(=外装)に関する規定は大きく異なります。
1997年からWRCに導入されたWRカー規定ではワイドなフェンダーや大型ウイングなどのエアロパーツ装着も可能ですが、全日本ラリー選手権の車両規定では保安基準を満たす範囲の変更しか認められていません。
夜間走行時に路面を明るく照らすために装着されるのが、補助灯を収めたライトポット。ボルト止めで簡単に脱着できる構造で、配線類もカプラーオンとなっています。保護用のカバーは空力や冷却性能に影響を及ぼさないものと規定されています。
JAF規定のR/RJ車両の場合、エアロパーツは純正品のほか保安基準を満たす社外品の装着も可能ですが、ボディ下部に装着できるのは保護用のガードのみ。アンダーディフューザーなどのエアロパーツは装着できないルールになっています。いっぽうで、WRC車両(写真は東京オートサロン2020でデモランしたトヨタ・ヤリスWRC)は、ワイドフェンダーをはじめカナードやウイングなど大型の空力パーツが装着されています。
インテリア
勝負に集中するためのアイデアが満載
ドライバー、コ・ドライバーの仕事場ともいえる車内は、運転に集中できるように機能性や快適性を確保するために各チーム独自のノウハウがつまっています。
まずラリー車ならではといえるのが、ルーフに追加されたベンチレーション。R/RJ車両のほとんどがパワーロスを防ぐためにエアコンを取り外してしまうので、走行風を取り入れて車内をクーリングするための必須装備です。
また、ダッシュボードは逆光時のフロントウインドへの映り込み防止のために、反射しにくい素材を張るなどして防眩加工を施すのも一般的。
さらにドライバー側はドライビングスタイルに合わせたペダル類やフットレストの位置調整や加工、コ・ドライバー側は正確なナビゲーションを補助するための照明類の追加などがされたりしています。
ほとんどのマシンが作動時のパワーロスを嫌ってエアコンを取り外しています。そのため真夏のラリーでは車内温度は50度になることもあるので、走行風を取り入れるルーフベンチレーションが必須。いっぽうで、暑い海外では体力の消耗を防ぐことを重視してエアコン付きのマシンも少なくないんだとか。
ダッシュボードのフロントウインドへの映り込みを防止するために、表面にバックスキン状の布が張られています。基本構造を維持した範囲でのペダル加工やフットレスト追加も認められていて、柳澤選手の場合は左足ブレーキ用にペダルを大型化しているそうです。
夜間走行時にペースノートをしっかりと照らせるように、コ・ドライバー側にはナビライトが装着されています。また参加車両が必ず装備しなければならないのが、万一クラッシュした際に、後続車に救助してほしいか、そのまま通過して大丈夫かを伝えるための“OK/SOSボード"。室内に貼り付けておけるようにマグネット素材で作られていました。
日本国内で活躍する全日本ラリー選手権と、世界トップカテゴリであるWRCでは、同じ車両をベースとしていても異なる部分がたくさんあります。ラリージャパンでは、会場でその違いをじっくり見比べてみたいですね!
そして次回は、ラリー車に負けないほど独特な装備やアイテムを持つコ・ドライバーさんにスポットを当ててみたいと思います!!
<取材協力>
株式会社キャロッセ
https://www.cusco.co.jp/
[ガズー編集部]
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