[クルマ好きFile S耐@Rd.1富士/エンドレス] 寝ても覚めても頭の中はS耐でいっぱい! 若き担当者が挑む最高のパーツ開発

9月4日~6日、富士スピードウェイにて「ピレリスーパー耐久シリーズ」(以下 S耐)が開催されました。
国内最高峰の耐久レース、しかもシーズン開幕戦がいきなり24時間耐久! 考えてもみてください。24時間もレースをするには、それはもうクルマの運転が好きで、レースが好きじゃないとできないですよね!?
なぜ富士に集まったS耐参加者のみなさんはそんなにクルマのことが好きなのか?
きっとGAZOO.comのテーマでもある「FUN TO DRIVE」の精神がそこにあるのではないかと考え現地での取材を決行、気になるエントラントにお話を伺ってみました。

出場者も主催者もみんな「クルマが大好きな仲間」

  • STELの委員長を務めている花里功氏。ブレーキやサスペンションのアフターパーツを自社で開発し製造・販売するエンドレスグループの創業者にして取締役会長です(提供:エンドレスアドバンス)

取材をはじめるにあたり、まずはS耐をよく知る人物に話を聞きたいと思い、S耐の参加者で構成される組織『スーパー耐久エントラントリーグ(STEL)』の委員長を務める、花里功氏に話を伺いました。

まずは単刀直入に「S耐ってどんなレースですか?」と伺ってみました。
「それは、クルマが大好き、レースが好きで好きでしかたない、言葉は悪いけどレースバカって言われるような人たちが笑って続けてきたモータースポーツですよ」と花里氏。
S耐といえば国内最高峰の耐久レースですから、真剣なピリピリした雰囲気が漂っているのかと想像している方もいらっしゃると思いますが、案外そんなことはなさそう!?

花里氏は続けて「率直に言ってどのエントラント(参加者)も資金を集めたり、身銭を切ったりと色々と大変な思いはしています。それでもこのレースを楽しいと思えるからやってるんです。そのくらい大好きなんですよ。その気持ちはね、我々エントラントはもちろん主催者だってサーキットスタッフだってみんな同じはずです。レースに対して熱い思いをもつ仲間なんです。レースが好きで応援してくれるお客さんだってもちろん同じ仲間です。そういう仲間が集まっているのがS耐というレースなんです」と熱く語ってくれました。

花里氏は経験上、資金が潤沢にあってもレースバカな気持ちを大切にできない人は参加しても長続きしないとも語ってくれました。
関わっている人すべてがクルマ好きでレース好き。みんなが仲間だと思えるから参加していて楽しい。それがS耐というレースなんですね。

では、そんな花里氏が率いて長年S耐に参戦し続けているENDLESS SPORTSとは、どんなチームなのでしょう?

「レースもストリートも求める性能は同じ」。最高のパーツを届けるために

エンドレスは、ブレーキやサスペンションなどの足まわりのパーツを中心に展開するメーカーで、国内のスーパーGTやTCRジャパンシリーズはもとよりオンロード、オフロード問わず世界中のモータースポーツの足元を支えている日本を代表するメーカーです。
今年のダカールラリーでは優勝したカルロス・サインツをはじめエンドレスユーザーが総合成績でトップ3を独占していますし、WRCのトップカテゴリーで戦うMスポーツフォードもエンドレスのブレーキを採用しています。

そのエンドレスが運営しているチーム、ENDLESS SPORTSは8つのクラスに区分されるS耐の中で『ST-Z』と『ST-4』という2つのクラスにエントリーしています。
ST-Zは、FIA-GT4という世界で統一された規格のマシンが集まるクラスで、大雑把に言えば自動車メーカーが開発したレーシングマシンをそのまま使って戦うため、S耐としては改造範囲がかなり制限されるクラスです。
ENDLESS SPORTSはこのクラスにAMG GT4で出場しています。

  • ENDLESS 86のパーツはストリート用に市販されているものを使用している

一方、ST-4は2リッター以下の量産車をベースとしたクラスで、こちらは比較的改造範囲が広くてマシン作りもレースにおける大きなファクターとなります。ENDLESS SPORTSはこのST-4にトヨタ86(ENDLESS 86)で長年参加しています。

エンドレスはこのST-4への参戦の理由を、一番市販車に近いクラスであり自社製品の欠かせない開発現場であると言いますが、その真意を確かめるべく、ENDLESS 86で、エンドレスの社員として製品開発からドライバー、メカニックまでこなす花里祐弥選手と、耐久レースの経験豊富な松井孝充選手にお話を伺いました。

  • パーツ開発にかける思いを熱く語ってくれた花里選手

花里選手はS耐について「僕は店舗にいても、草むしりをしていても毎日このクラス(ST-4)の事しか考えていないんです(笑)」といきなり前のめり。
では、実際にST-4クラスでどのように開発を進めているのでしょうか。
「ST-4の86で使用しているブレーキパッドの磨材やダンパーのピストンやオイルなども、市販品と同じものを使用しています。ルールで、純正のABSやマスターバック(ブレーキを踏んだ力の増幅装置)もそのまま使っていますし、非常にストリートに近い状態でマシンを走らせています」
「市販品の開発とはいってもレースだからとか、市販車だからとか分けて考えていることは全然なくて、レースでの性能を求めていくと、結局それはお客様がストリートで求めている性能とかなり近いものなんです」
「今回は24時間レースですが、他の3時間や5時間のレースとも同じブレーキパッドやダンパーを使っていて、セッティングも同じです。レースごとに使用するものやセッティングを変えないことが、市販品へのフィードバックでは重要だと考えています」
なるほど、ST-4はまさに一般ユーザー向けパーツの開発の場であり、花里選手がいかに大切に思っているかがわかります。

レースで使う仕様と聞くと、ブレーキが扱いにくいのでは?、サスペンションが固すぎるのでは? とあえて少し意地悪な質問をすると、「本当に普通に街中でも使ってもらえます。実は皆さんにこのことをお伝えしきれていないというのが課題なんです」と、自信を持って答えてくれました。

ストリートで楽しむクルマ好きに最高のパーツを届けたい。その気持ちと開発プロセスを大切にし、ストリートと同じパーツで勝負できるST-4はなくてはならないクラスなんですね。

もちろん、花里選手も通勤からドライブまで、S耐と同じ仕様で愛車を走らせていることは、言うまでもありません!

  • ENDLESS 86をドライブする花里選手(左)と松井選手(右)

そんな花里選手が、「チームに直談判した」ほど以前からチームへの加入を熱望していたのが松井選手。スーパーGT GT300クラスでシリーズチャンピオン獲得経験があり、耐久レースの世界でも伝統のあるニュルブルクリンク24時間レース(ドイツ)でもクラス優勝の経験を持つプロドライバーです。
その松井選手も、ST-4クラスに参戦する意味を、花里選手と口をそろえます。
「GT300クラスの主流を占めるFIA-GT3マシンについては使えるパーツがとても限定されていて、勝敗の鍵を握るのはタイヤ選択とセットアップくらいです。また比較的パーツ選択の自由があるJAF-GTマシンでも、その結果が量産車へフィードバックできるかといえば必ずしもそうとはいえません」と松井選手。
それに対し、S耐、中でもST-4はサーキットレースでありながらクルマも使っているパーツもストリートにとても近いクラスだと言います。

「S耐はパーツをしっかりと考え、改良を重ねいいパーツができるとちゃんと結果が出ます。そして、我々が頑張って出した結果がしっかり市販品に反映されるというのは、とてもうれしいですよね」と松井選手。
松井選手もプライベートでチューニングされたトヨタ86を所有するクルマ好きとしても知られているので、納得のコメントですね。
また、数あるレースの中でも、レース用に特化したブレーキパッドより市販されているものの方がフィーリングが良くて走りやすい事もあるのがS耐の面白さだとも教えてくれました。

  • エンドレスにとってS耐は、レースであると同時に開発現場。戦況を見守るスタッフも真剣だ

低温に強いストリート仕様パッドが活きた悪天候のレース

さらに、花里選手と二人三脚でブレーキパッドの磨材開発を手掛ける、秋山英俊さんにも話を伺いました。秋山さんによると、ST-4のトヨタ86に装着しているブレーキパッドは低温から効きダストの出にくい市販ストリート用パッドとまったく同じ磨材が使われているそうです。
WRCやスーパーGTなどさまざまなカテゴリーのデータや、さまざまな研究や日々の議論から得られた経験や開発が、ストリートの究極の環境=ST-4クラスで実際にテストされ、ストリートにフィードバックされる。これが、安心・安全、そしてFUN TO DRIVEの基となっているわけですね!

奇しくも今回の24時間レースは度重なるFCY(フルコースイエローの略)、SCの導入、赤旗などブレーキが冷え切ってしまうシーンも多かったため、タイヤとともにブレーキにもとても厳しいレース展開でした。
夜間走行で見られる真っ赤に焼けたローターが美しいシーンもあまり見られないレースでしたが、ストリートでは考えられないような600度という高温からなんと0度でも性能を発揮(※レース用は50度や100度などから性能を発揮)するという市販品は、選手のタイムアップにも安全性にも大きく貢献したことでしょう。

「ファミリー」としての絆がレースやパーツ開発に貢献

インタビューの中で、筆者が普段サーキットで取材をしていて傍目で感じている、エンドレスのファミリー感の強さが垣間見えるエピソードもありました。

エンドレスは、毎年夏に社員を集めたバーベキュー大会を開催していたり、ENDLESS SPORTSのドライバーが参加する川釣り大会などが行われているそうです。
この川釣り大会のホストはもちろん花里選手。道具を揃え、朝からドライバーを迎えに行って、場所もコーディネート。
一見アットホームに思われるこの釣り大会(今年はコロナ禍の影響で開催できず。初参加となるはずだった松井選手も残念そうでした。)、負けず嫌いのドライバーたちが参加するとあって、実は真剣。釣果が悪いとその年一年間ずっとイジられてしまう事もあるとのことで、負けられない戦いがここにもあります。
楽しい中にもピリピリとした真剣さで向き合うサーキットと違うこうした遊び心が、社員やドライバーを含めたファミリー感を作り上げ、開発の現場における円滑で忌憚のない意見交換ができる空気を生み出しているのですね。
ちなみに、今までで一番大きな魚を釣り上げているのはチームメイトの小川諒選手だそうです。

ストリートでクルマを楽しむ仲間に向けてS耐でパーツ開発を行うエンドレス、そして花里選手が、本当にレース、クルマが好きだからこそ、理想を高く掲げ、それを実現する最高のパーツの開発を続ける熱い思いを感じていただけたでしょうか。

クルマが好きすぎちゃう仲間が集まったS耐の世界。
アフターパーツメーカーのエンドレスが「ストリートでしっかり性能を発揮できる製品」開発の場としてS耐に参戦する一方で、純粋に「レースを楽しむ」ことを目的として参戦しているチームも少なくありません。次回はそんな「エンジョイ派」チームのひとつ「シンリョウレーシング」をご紹介します!

執筆 / 撮影: 高橋 学

[ガズー編集部]

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