[S耐クルマ好きFile/TEAM NOPRO] 「誰もやっていないことが面白い!」 父子鷹で未開のディーゼル車の可能性に挑む!!

10月31日~11月1日、岡山国際サーキットにて「ピレリスーパー耐久シリーズ(S耐)」の第3戦が開催されました。

第3戦は前戦に続き、2グループに分かれて、土曜、日曜それぞれに3時間の決勝レースが行われましたが、開幕戦、第2戦とは打って変わり、両日とも快晴の中のレースとなりました。

3時間とはいえ、1レースを走らせるだけでも大変なのに、その両レースで赤いマシンを走らせ、しかもなにやらS耐のみならず、日本のレースでも他にはないチャレンジを続けていると聞き、取材にうかがったのが TEAM NOPRO。

S耐という過酷な耐久レースながら、いろいろな流れで集まったドライバー、スタッフの方々が、自分たちだけのチャレンジを楽しんでいるところをご紹介しましょう。

  • TEAM NOPRO はS耐で唯一ディーゼルエンジンで挑むチーム

ST-XからST-5まで、排気量や駆動方式などで区分された50台ものマシンが参加するS耐。TEAM NOPRO はST-2クラスにマツダアクセラ、ST-5クラスにマツダデミオを走らせていますが、なんとこの2台ともディーゼルエンジンなんです。もちろんディーゼルエンジンのマシンはこの2台だけ。

そんな他にはないチャレンジを続けるチームの代表は、自らもドライバーを務めるチーム監督、野上敏彦監督です。

野上監督はかつてロータリーエンジンでル・マン24時間レースに挑み続け数々の記録を打ち立てたマツダスピードの出身で、その後独立してロードスターをはじめとするマツダ車を中心に扱うチューニングショップ『ノガミプロジェクト(NOPRO)』を立ち上げ現在に至ります。

  • 野上敏彦監督

インタビュー中、野上監督が語られたマツダスピードの創成期から日本車初のル・マン完走、そして紆余曲折ありながらもロータリー最後の年の総合優勝の話はとても興味深いもので、かつて独自のエンジンで世界に挑んできた精神が、今も TEAM NOPRO のチャレンジに色濃く残っています。

野上監督はS耐の魅力について、「S耐は色々な技術的トライができるところ。メーカーが作った高性能スポーツカーを買ってきてチューニングするだけではなく、マシンを作り込むことによって技術的なことも学べます。マシンの性能向上に技術屋としての面白さを発揮できる最後の場所かもしれません」と語ってくれました。
この“最後の場所”というのが、S耐に参戦する大きな理由のようです。

また、ディーゼルエンジンでの参戦に関しては、「とにかく人のやっていないことをやるのが面白い。『ディーゼルでやるの?』ってみんな思いますよね。それで優勝したらそれは楽しいよね!」と笑顔があふれます。

ただ、初めてのチャレンジであるからこその苦労もたくさんある様子。
「もちろん最初は現在の直噴ディーゼルがどうすれば速く走れるようになるのか全然わかりませんでした。とにかく手探りでした。でも燃費が良くてトルクのあるディーゼルには可能性があると考えています。どこをどうすればいいのかはわからないけど必ず答えはあります。この山の中には必ず金が埋まっているけど、どこを掘ればいいのかわからない、くらいの感覚で挑戦しているので大変」と、コース上のライバルたちだけでなくマシン開発という見えない敵との格闘も続いています。

でも、マツダスピードでル・マンへ挑戦し、勝利を味わったからでしょうか、そんな苦労の先を見ているのが野上監督。

「ディーゼルで24時間耐久レースを走って優勝しちゃいました! なんて経験は誰もができるわけではありません。それをみんなで一緒に楽しんでもらえればOK。みんなで楽しめ、歴史に残るんですから。また、常識的に考えれば非力で勝ち目はないけど、一度はヤリスをやっつけたいですね。巨人を倒す一寸法師みたいな感じで」と、目を輝かせながら語っていただきました。

さて、そんなマツダのディーゼル車でS耐を戦うもう1人の野上さん。監督の息子さんである野上達也選手にも話をうかがいました。

父子鷹でショップやレースを運営するお二人ですが、父でも社長でもあり、レースの大先輩でもある野上監督のことをどう思っているのでしょうか。

「父親がレースの世界にいたとはいえ、僕の場合、小さい頃からカートに乗っていたわけでもないし、レースを始めたのも免許をとって社会人になってから。もちろんレース中は120%の熱さで戦っているつもりですが、あとの時間は多少ユルイ部分があってもいいんじゃないかなって思っています。じゃないと疲れちゃいます。親父のエネルギーが強いんで、僕も強くなっちゃったらぶつかって大変ですよ(笑)。」といたって冷静。

野上達也選手。ドライバーとして走り、マシンを降りればメカニックの中心的存在として獅子奮迅の活躍

「うちのチームは、僕の友達が給油マンとかサインマンなどをやってくれています。誰でもいいというわけではないですが、やりたいというという強い気持ちと、僕が『この人ならできる』と作業しているイメージが頭に浮かぶ人であれば任せています。もちろん戦っているのだからピット作業は1秒でも早いほうがいいんですけど、ウチは勝つことがすべてではないですし」と、達也選手。
監督の強いチャレンジ精神と、達也選手が作り出すいい意味でのおおらかさを持つチームの独特の雰囲気が混在する TEAM NOPRO は、取材をしていて非常に興味深いチームでした。

そんなチームを支える個性豊かなスタッフの方々も紹介していきましょう。

耐久レースにおいて大切な仕事の1つ、給油を担当しているのは達也選手の友人、ずらやん鈴木さん。
IT関連企業に勤める鈴木さんは、給油時以外はS耐が公式に発信する「S耐TV」のライブチャットにピットの模様を書き込んだり、視聴者の書き込みで情報を得たりとレース中のピット内でスマホ生活。

「僕の知らないお客さん目線でのレースをリアルタイムで知ることができるのはすっごく面白いっすよ~。ネットで繋がった人が会場に足を運んでくれたり、ピットまでお土産持ってきてくれる人もいたり、そういうのすごく嬉しいです」と、緊張感あふれるレース中もご自身のスタイルでレースを満喫。

チームでもムードメーカーの鈴木さんは、「僕はレースをやっていても、見ても楽しいんです。この楽しい気持ちをこれからもみんなで共有していきたいですね」と語ってくれました。

色々なチームや選手がSNSなどでレースの模様を発信していますが、レースがライブ配信される「S耐TV」もどんどん活用するとレース観戦の新しい楽しみが増えそうです。

レース中の給油時、傍らで消化器を用意するのは志茂野さん。こちらはデミオのオフ会を主催している方で本業は歯科技工士さん。

ノガミプロジェクトにオフ会のゲストを依頼したことをキッカケに知り合い、今年の富士24時間レースで“なぜか?”ピットクルーデビュー。
でも、志茂野さん「アクセラ、デミオのレース活動に参加できることはファン冥利につきる」と、チームスタッフでありながら今でもマツダファン目線。

  • 一番右が宮野さん

タイヤ交換などを受け持っていた宮野さんはノガミプロジェクトの社員ですが、もともとは鈴木さんのバイト仲間。

なぜそうなったのかは知る由もありませんが、かつて横須賀から出雲大社までホンダカブで旅している最中に、鈴木さんから岡山国際サーキットに呼び出され、そのままレースのお手伝い、からの~、ノガミプロジェクト入社!

たまたま中国地方に旅していたのが幸運だったのか、運の尽きだったのかは聞きませんでしたが、宮野さんはレース中いつもニコニコしていてなんだか楽しそう。

いかがでしたか? 皆さん個性的でしたよね。
ただ、こうした個性的でおおらかな雰囲気は達也選手のみならず、野上監督がチャレンジ精神とともに持つ包容力にも理由があるようです。

実は野上監督は、マツダスピード退職後、ノガミプロジェクト立ち上げと並行して、モータースポーツの仕事に就ける人材を養成する学校「東京科学芸術専門学校」の立ち上げに参加し、モータースポーツを目指す学生の先生として過ごした時期があったそうです。メカニックの中にはその当時の生徒さんもいるとか。

最先端の厳しい世界にいながら、どこか温かい目でチームを見守りながらも的確な指示を出す姿は、側から見ると確かに学校の先生っぽくも見えます。
レーシングドライバー、技術者、先生、父親、いろいろな顔を持つ監督だったのです。

岡山戦、ST-4、ST-5のマシンで行われるグループ2の決勝レースの終盤、TEAM NOPRO のデミオはマシントラブルで緊急ピットインしてしまいます。残念ながらリタイヤかと誰もが思うようなシチュエーションでしたが、なんとか修復し再びコースに戻ります。
この時点で既にトップから14周遅れ。チェッカーフラッグを受けるためのピットアウトです。

“挑戦者” TEAM NOPRO にとって最後まであきらめずに完走してレースを終える。これは次のレースに向けてとても大事なことだそうです。

4年前、2016年のル・マン24時間レースでトップを快走しながらあとわずかというところでチェッカーフラッグに届かなかった中嶋一貴選手の涙は多くのレースファンの記憶に残っているのではないでしょうか。
野上敏彦監督は約40年前の初挑戦から11年もの間、中嶋一貴選手と同じ場所でチェッカーにこだわり続け挑戦してきた日本人の1人であり、TEAM NOPRO のチーム員もそのこだわりを肌で感じながらディーゼルエンジンの可能性にかけて挑戦し続けているのでした。

そして、その姿は確実にマツダファンの心を捕らえていて、アクセラやデミオに乗っている方のみならず、マツダ車を使ったレーシングチームを代表する存在として注目されていることを感じました。
そしてそれは、実はロードスターのお客様が9割以上という本業のチューニングショップへも好循環をもたらし、S耐への継続参戦とチャレンジを可能にしているのでしょう。

次戦のスーパー耐久は、11月21日~22日にツインリンクもてぎで開催される5時間耐久。2020年シリーズもいよいよ後半戦に突入します!

執筆 / 撮影: 高橋 学

[ガズー編集部]

 

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