[S耐クルマ好きFile/岡部自動車] 「楽しんで走ってプロに勝ったらチョー楽しい!」。S耐と最高の仲間の魅力にどっぷりな老舗チーム

10月10日~11日、スポーツランドSUGOにて「ピレリスーパー耐久シリーズ」(以下 S耐)の第2戦が開催されました。過酷な耐久レースという舞台でクルマを使って究極に楽しんでいる人たちを紹介するS耐の現地取材企画第3弾は、S耐の初期から参戦し続けているベテランチーム、岡部自動車(エントラント名:OKABEJIDOSHA motorsport)さん。

チーム代表の長島正明選手の元に集まった20年来の仲間が語る「レースが大好き、でももっと好きなのはクルマを通じて知り合った仲間と過ごす楽しい時間」という言葉に、複数のドライバーが1台のクルマで戦うS耐ならではの魅力がいっぱい詰まっていました!!

チーム運営自体が20年にわたる耐久戦!!

岡部自動車の代表で、60歳を超えいまだ現役バリバリの長島正明選手は、かつて行われていた鈴鹿のシルバーカップレースや富士フレッシュマンレース、カローラやアルテッツァのワンメイクレースに参戦してきた生粋のレース好き。自動車免許を取得してから今日まで途切れることなく何かしらのレースに参戦し続けること、なんと40数年!

S耐参戦は現在のシリーズが始まって間もない1999年からで、現在のチームメンバーの多くはなんとその頃からともに戦い、一緒に楽しんできている仲間だそうです。
ある意味、チーム運営自体も耐久レース状態!?
だから最近は「みんな老眼鏡がいるとか、関節が痛いとか、血圧が高いとか、クルマを速くするよりそんな話ばかりです。若手がいないからホント大変ですよ」と、冒頭からボヤキのような話を笑いながら語ってくれた長島選手。
でも、そんなお悩みも含めてもS耐参戦をとっても楽しんでいるんですよね。その表情には気心の知れた仲間と参加する楽しさに溢れていました。

  • 共に戦うメカニックも付き合いの長いベテラン揃い。レースでは頼れる仲間で、レース以外でもともに楽しい時間を過ごす仲間

楽しい仲間と一緒にプロと同じ土俵で戦えるのが魅力

そんな長島選手に長年参戦しているS耐の魅力を訪ねてみると、「とにかく、アマチュアとプロが一緒に走るというところがすごくいい。例えば僕らがバスケットボールをやっていたとしてもプロの選手と試合をする機会はありませんよね。でもS耐ではそれができる。他にプロと競える舞台があるスポーツって実はあまりないですよね」とのこと。

「当たり前かもしれませんがプロとアマチュアって全然違うんです。てっちゃん(岡部自動車がメンテナンスを担う244号車 QUEEN EYES 34Zで参戦するプロドライバーの田中哲也選手)を見ていても、セッティングを突き詰めるこだわり方がすごい。アマチュアである自分たちよりも凄いプレッシャーの中で戦っているプロは、技術はもとよりその精神が違う。そういうプロの走りにちょっとでも近づけるように今でも頑張っているし、いつまでたっても勉強できる。それが魅力です」と語ってくれました。

自動車免許取得後今日まで途切れることなくレース活動を続けている長島選手ですが、「今でもまだまだ勉強」と語る表情に、走りに対する情熱を強く感じます。

田中哲也選手と、田中選手がドライブする「QUEEN EYES 34Z(Max Racing)」

続いて話を伺ったのは長島選手とともに15号車、フェアレディZのステアリングを握る小松一臣選手。

「プロレーサーになりたかった訳ではないけどクルマ好きならレースでしょ!」と、イギリスに渡り名門ジムラッセルレーシングスクールで運転を学んだというすごい経歴の持ち主。
そんな小松選手は、S耐に関しては速さももちろん大切だけど自分のスティントをきっちり走りきりるプレッシャーに打ち勝ち、チームメイトも同じように走りきった時の充実感こそが魅力だそうです。もちろんそこに結果が伴えば最高! というのは言うまでもないでしょう。

そして、「レースも楽しいけど、レースが終わった後にみんなで食べる食事がなにより楽しいんです(笑)。ひとりで出かけるドライブももちろん楽しいけど、みんなでドライブに行って、どこに行ったとかバーベキューしたとか沢山の思い出を共有するのも楽しいですよね。S耐にはそんな感じがあるんです」

「みんな長島選手のキャラが好きで楽しいのでついていっている感じです。長島選手はピットではいつも腕立て伏せとかスクワットしたり100kgのベンチプレスを持ち込んだりとか、あとはぶら下がれるところがあれば懸垂大会とかやって負けたら罰ゲームとか、このチームはレースだけじゃなくて全部楽しいんですよね」と、20年近くも岡部自動車で走り続ける本当の理由はそういったチームの雰囲気にあるようです。

こちらが小松一臣選手。ちなみに小松選手が運転を学んだというジムラッセルレーシングスクールは日本の自動車レースの創成期を支えたレーシングドライバー生沢徹や、ご存知アイルトン・セナも卒業生なんです!

同じ15号車に乗る山﨑学選手はカート出身。カートをやっている当時は週5の家庭教師と週6の新聞配達を掛け持ち、見るに見かねたご家族からの援助などもありF4などでも活躍したという強者です。

そんな山﨑選手はチームではみんなを笑わせるムードメーカー。
「昭和を大事にしているチーム」
「男は黙ってマニュアル!」
「遊びでやってプロやっつけちゃうのが趣味」
などなど、出るわ出るわの名言(迷言)の数々。
でも、SUGOの決勝レースでは戦略上マシンに乗る機会はなかったものの、モニターを見つめエンジニアの方の話を聞く姿は、さすがの真剣な眼差し。

そして岡部自動車に対しては、「レースってどのカテゴリーを走るかってより、誰と一緒に戦うのかというのが大事。このメンバーだからこそずっと一緒にいるんだと思います」と語ってくれました。
小松選手同様、長島選手やチームの雰囲気の居心地がいいからこそ、20年近くもこのチームに参加しているようです。

底抜けに明るいムードメーカーの山﨑選手ですがレーシングスーツを着てしまえばスイッチオン。もちろん真剣モードです

英国まで行ってドライビングの修行までした小松選手、カートからフォーミュラーへの道へ進んだ山﨑選手について長島選手は、「楽しいことはとても大事です。それでも(レースである以上)速く走らなきゃいけないし、周りのチームに迷惑をかけちゃいけない。だからウチはドライバーのレベルは高いと思ってます。」とチームメイトを評します。

そんな話を伺った3人がS耐の魅力として口をそろえるのが、「プロとアマチュアが同じコースで競い合うS耐ですが、セッティングさえ決まれば十分に戦えます。うちらが力を合わせてプロチームを打ち負かしたらチョー楽しいですよね!」という勝負に対するスピリット。本気だから楽しいっていうのはどんなジャンルでも共通する話ですし、やっぱり皆さんレーサーなんですね!

タブレットで見ているものを紹介することはできない!? のですが、とにかく笑いの絶えない取材となりました。

S耐に望むこと、S耐だからこそできること

最後に長島選手が、S耐が今後も変わらないでほしいこと、そして今後のチームの夢も語ってくれました。

「過去には世界選手権との併催だった大会などもありましたが、できればS耐はこれからも常に大会のメインレースであり続けて欲しいと思っています。S耐は参戦の敷居が高くないにもかかわらずメインレースゆえに扱いがとてもいい。もちろんピットもきちんと使えます。自分の場合ワンメイクレースなどの活動をしていた頃にはパドックにテント張って雨が降ればカッパ着て、それでもずぶ濡れになりながらマシンの整備をしたものです。そこだけ考えてもS耐はとても魅力的です」

資金的に余裕があれば若くて頑張っているドライバーにそんな環境で乗せてあげたい、とか、自分の師匠でもある星野薫さんとか歴史的なドライバーと組んで一緒に走ってみたいと夢を語ってくれた長島選手ですが、「そんな話で飲んだ席では盛り上がるんですけど、なかなか難しいですね」と話してくれました。

S耐はプライベートチームも多く、オーナーが自らお金を持ち出す年もあれば、ドライバーもプロとは逆でチームを支える資金の一部を負担していることもあります。
ただ、同じ時間を過ごしたい仲間、普段の生活の中では味わうことができない緊張と興奮、そして何にも代えがたい勝利の喜びなど、参加型レースの最高峰だからこそのS耐の魅力を、今回の取材を通じて改めて感じることができました。

最初のピットストップでスリックタイヤを履く戦略が裏目に出てしまったものの、最終的には追い上げに成功しクラス2位フィニッシュした岡部自動車 RECARO フェアレディーZ。
勝てなかったことは少し(だいぶ?)悔しいとは思いますが、表彰台での笑顔はS耐への参戦を心から楽しんでいることが、取材をさせていただいたからこそより伝わってきて、うらやましくさえ感じました。

ウエットコンディションでのレースとなったスポーツランドSUGOでの第2戦。「岡部自動車 RECARO フェアレディーZ」はST-3クラス2位でフィニッシュしご覧の笑顔。

次戦は10月31日~11月1日、岡山国際サーキット。西日本で開催される今シーズン初のS耐です。今度はどんなチームと出会えるでしょうか。今から楽しみです。

執筆 / 撮影: 高橋 学 編集: 山崎リク(編集部)

[ガズー編集部]

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