「スープラの完全復活をアピールしたい!」2021年のS耐にGRスープラで参戦するチームにインタビュー
昨年、GAZOO編集部が「クルマを楽しんでいる方」を紹介したいという思いで取材をしてきましたスーパー耐久。
今年は例年のスケジュールに戻り早くも第2戦まで終了しましたが、ST-Zクラス(FIA GT4規格車両)の参戦車両が増えたことで、また昨年とは違う展開が繰り広げられています。
その中心となっているのが、今季から4台参戦しているGRスープラGT4。ST-QクラスとST-1クラスを合わせると6台ものGRスープラが参戦します。
その参戦チームにお話しを伺いましたのでお届けしましょう。
※2月27日(土)に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久シリーズ2021の公式テストにて収録した内容です。
トヨタカローラ新茨城が母体となるC.S.I Racingは、今季2台体制でシリーズに参戦。昨年参戦2年目にしてSTー4クラスのチャンピオンを獲得したトヨタ86(坪井 翔/細川慎弥 組)に加え、今年最も注目されるST-Zクラスでは、トヨタGRスープラGT4(鈴木和宏/久保凛太郎 組)を走らせます。
GRガレージのディーラーチームとして初めてタイトルを獲得したC.S.I Racing、今回はチーム責任者であるGR事業部長・伊坂浩之さんにお話を伺いました。
ーー昨年はチャンピオンを獲得して、社内での雰囲気や評価は変わりましたか?
「正直、驚いている人の方が多かったですね(笑)。2年目でまさか……みたいな。そして今では『S耐チャンピオン獲得キャンペーンを組もう!』など、とても盛り上がっています」
「ディーラーでここまでのレース活動をすることはなかなかないことなので、最初は懐疑的な雰囲気も確かにあったのですが、結果を残せたことで社内の満足度も上がったのでしょう。今はとても活動しやすいですね」
ーー今年から2台体制となったのは、チャンピオンを取った流れからでしょうか?
「そうですね。あとGRガレージでレースをやる以上は、GRスープラを初年度から走らせたかったんです。ブランド的にはGRヤリスもありますが、スープラのレース復活には思い入れがあり、TRDにオーダーしました」
「まだ走り始めたばかりですが、マシンのポテンシャルはかなり高いと思います。ドライバーから聞く感じでは、特に足まわりの性能が高いようですね」
ーー当然スープラはトヨタ86よりもコストが掛かるわけで、チームとしての予算や規模も、大きく変わってくると思うのですが?
「そうですね。単純に2台体制というだけで考えてもチームの人数は倍になりますし……大所帯になっちゃいましたよね(笑)。メカニックもGRガレージだけでは足りないので、店舗から追加で連れてきています」
ーー初めて来たメカニックの方々の、様子はどうですか?
「あまりにも日常と違い過ぎる世界なので、緊張と驚きが入り交じってますね(笑)」
「去年までも現場にはディーラーメカニックを連れてきていたのですが、それは1レース限りのお手伝いレベルでした。でもこれからは、2台のマシンに一人ずつ付いて、年間を通してレースがどんなものかを学んでもらいます。そして店舗に帰ったら、それをみんなにも伝えてもいます」
「というのも去年参加したメカニックたちを見ていると、そのモチベーションがとても上がっていたんです。メカニックはなかなか離職率が高い仕事なんですが、そういった部分ではやり甲斐や面白さを見つけることができて、レースがとても役に立っています」
ーーでは最後に、GRスープラで参戦することで、これを見る人々に何を伝えたいですか?
「GRスープラのポテンシャルの高さをレースで実証したいですね。そうすることでもちろん販売にもつながると思いますし」
「そしてスープラが復活したということを、お客さんにしっかりアピールしたいです。昔からスープラファンは沢山いらっしゃるので、ここで完全復活しました! ということをしっかり伝えたいです」
昨年ST-1クラスでLEXUS RC-Fを走らせた名門トレーシースポーツは、一年以上の開発期間を掛けて作り上げたスープラを同クラスに投入。メーカーが発売するGT4マシンではなく、自分たちで作り上げるマシンを走らせる魅力について、代表である兵頭信一さんにお話を伺いました。
ーー遂にスープラが走り出したわけですが、調子はどうですか!?
「マシンは岡山で一回転がした程度で、事実上今回がシェイクダウン。いまセッティングを、ちょっとずつ詰めて行っている状態です」
「ボディに関しては、どんなマシンを作り上げるのも同じ。でも制御系は全てがリンクしているので、それを解析して行くのがなかなかに難しいですね」
「それでも今のところ大きなトラブルもなく、うまく行ってますよ。一年以上かけてマシンを作り上げてきたので、無事に走ってくれて……本当にホッとしています」
ーーこれまでのマシンと比べて、スープラのポテンシャルはどうですか?
「かなり高いですね! 既に昨年まで走らせていたRC-Fより、2秒以上も速いです。車重が軽いし、クルマの基本バランスが、レーシングカーに向いてますよね」
ーーGT4マシンではなく、あえてのST1を選んだわけですが、その意義は?
「うちはマシンを制作することが仕事ですから、レーシングカーを買ってきて走らせるのでは意味がないんです。自分たちがいいと思ったパーツを使って、マシンと共に開発して行けることが醍醐味ですし、そうすることでレースに関わるみんなが活性化できます」「これまでも色々なパーツを開発、提案して、STOと協議してきました。色々と却下されたりもしましたよ(笑)」
ーーシーズンを通して、どんな戦いをしたいと考えていますか?
「STー1にはすごいクルマも出ていますし(笑)、クラスは違えどST-Zクラスのスープラよりも速く走らせたいですね。問題はGT4の方が、燃料タンクが大きいこと。となるとピット回数も増えるので、それより1秒は速く走らせなくてはいけないんですが、それができたシーズンが楽しくなるな! と思っています」
昨年スーパー耐久にST-5クラスのヴィッツで初参戦したHIROSHIMA TOYOPET Racing。
なんと今年は大きくステップアップを果たし、GRスープラGT4でST-Zクラスを闘います。
そこで今回は、広島トヨペットの代表取締役社長であり、チーム代表である古谷英明さんに、今後の展望をインタビューしました。
ーー今年は遂にST-Zクラスへの進出ですが、まずその前にチームとしての経緯を教えて頂けますか?
「スーパー耐久は2020年からですが、実は2016年からディーラーとして、岡山チャレンジカップで86のN1マシンを走らせていました」
「スーパー耐久へ参加した動機は、広島マツダさんと同じクラスに出て全国を転戦し、一緒に戦いながら広島を盛り上げよう! というものだったんです」
「広島マツダの松田さんとは、実は先輩後輩の仲。それで断れず……というのは冗談で(笑)、先輩の熱い思いに応えたいと思い参戦しました」
ーー今年GRスープラにステップアップしたその理由は?
「これから注目度が上がって行くST-Zクラスに参戦することで、広島トヨペットを多くの人に知って頂きたい。これは、リクルートにもつながると思っています。『広島トヨペットに入りたい!』という学生さんたちが、沢山増えてくれたらいいな! と思っています」
「ただ一番大切に考えているのは、人材育成です。たとえば現場でちょっと問題があるような子をレースに連れてくると、本当に目の色が変わるんですよ。ゴールのときにマシンがチェッカーを受ける姿を見て、泣いている。『なんで泣いてるの?』と聞くと、自分が着けたタイヤが外れずにゴールしてくれて、感動したと言うんです」
「それって、普段の仕事と同じなんですよね。お客様のお車を送り出してまた、無事にメンテナンスで戻ってきてくれることの大切さ。レースを経験すると、そこに気づいてくれるんです。それだけでもう、やる意義はあるな! と考えています」
ーー肝心なレースですが、今年は檜井保孝選手だけでなく、平川 亮選手も参加するんですね!
「去年まで息子(古谷悠河選手)と檜井選手で出ていましたが、今年から平川選手が加わります。平川君は高校生の頃から知っていて、彼がF3に参戦するとき私どもで応援していたんです。そして今年はマシンがGRスープラGT4になったこともあり、満を持して乗ってもらうことになりました」
ーーGRスープラ GT4のポテンシャルはいかがですか?
「2月のタイヤテストでシェイクダウンして、今回が2回目の走行となるのですが、ポンと乗っただけでかなりいいタイムが出ていることから考えても、かなり戦闘力は高いと思います。そして何より、カッコいいです(笑)。去年はヴィッツを見ていても『レースカーはカッコいいな!』と思ったんですが、スープラはさらにかっこいい!」
ーー今シーズンの目標は、どこに置かれていますか?
「もちろん勝負なので勝ちたいですが、ディーラーがレースをする以上は、商品であるクルマを、きちんと理解したいと考えています。そしてお客様にも、速く走らせるだけでなく、安全に乗って頂くことを提案して行きたい。ディーラーの基本に立ち返る意味でも、レースに参戦することには大きな意味があります。我々がやっているのは『命を預かっている仕事』なんだ、ということが理解できるんです」
「あと単純に、いい年をしたおじさんたちがひとつのことに熱くなっている、という環境は貴重なんです。最初はボクのわがままで始めたことですけれど(笑)」
「レースが狭くて入りにくい世界だというイメージを覆してくれたのは、モリゾウさんのおかげですよね。『俺達もやっていいんだな!』という熱い心を取り戻したディーラーは、とっても多いと思いますよ」
「あとは、トラブルなく走りたい!(苦笑) 予選でマシンが壊れて、翌日までに直す! といったアクシデントはレースだとつきもので、それで結束力が高まるとも言えるのですが、やっぱりトラブルはない方がいい」
「恥ずかしくないような結果を出したいと思いますので、応援よろしくお願いします!」
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今回は時間の都合でお話を聞けなかった林テレンプ SHADE RACINGと新世紀サイバーフォーミュラレーシングwithRFC(ST-Zクラス)、ROOKIE Racing(ST-Qクラス)を合わせると、実に6台ものGRスープラが今季は参戦。
ディーラーチームにはスタッフの「育成」という目的があり、レーシングガレージにはやはり「モノ作り」という、無くしてはならないアイデンティティがそのモチベーションとなっていました。
さて、公式テスト取材の後編では、GAZOO編集部の注目のチームを取材しましたのでお楽しみに!
(文:山田弘樹 写真:松永和浩)
[ガズー編集部]
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