ド~なる!? 未来の愛車。自動運転やカーボンニュートラル時代の新型車と古き良き愛車の関係は?~「愛車」徹底討論 Vol.4~
自動車業界にとって「100年に一度の大変革期」と言われる現在、そしてカーボンニュートラルへの対応や自動運転、ソフトウェアファーストなクルマ造りが進む未来において、愛車とはどうかかわっていくべきか。
そんな壮大なテーマを語り尽くす座談会企画は、過去の愛車の話にはじまり、オートサロン、そして最近の新型車について業界きってのクルマ好きであるフリーアナウンサーの安東弘樹さん、レーシングドライバー谷口信輝選手、そして自動車研究家の山本シンヤさんとともに進めてきました。
最後は、愛車については一家言ある3人に「未来の愛車」について語ってもらいましょう。
実は、自動運転のクルマなら所有したいと考えている人も少なくない?
――今、クルマは100年に一度の変革期なんて言われています。
脱炭素はこれからのクルマ社会と切っても切れない関係で、それがクルマ社会を変化させていくことは間違いないでしょう。炭素の話は除いたとしても、自動運転が普及するかもしれないし、クルマ社会がこれまでとは大きく変わっていくことは間違いなさそうですよね。
というわけで、ここではそんなクルマ社会の未来に関して、「愛車」というキーワードとともに語り合っていただこうと思います。
安東:壮大な話ですねえ。
会社員時代に同僚の女性たちがよく言っていたんですよ、「自動運転になったらクルマを買う」と。
彼女たちは公共交通機関ではない、プライベート性が保たれた移動がしたい。だけど、運転はしたくない。事故のリスクもあるしね。
でもこれって、実は多くの人が思っていることじゃないかなと思うんです。
山本:愛車はいらないけど、自分だけの移動手段は欲しいという感じですかね。
谷口:プライベート交通機関だね。それはそれでありだと思うな。
でも、我々みたいなクルマ好きは、どんな時代が来ようとやっぱり将来も愛車を持つんだろうね。
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日産が東京オートサロンで公開したコンセプトカーはまるで「動くリビングルーム」
――乗馬みたいな感覚ですかね。将来において、趣味で乗るクルマというのは。
安東:運転する楽しさを求める人がどれだけ残るかですね。
谷口:クルマ自体で遊びたい人と、単なる移動手段として考える人は今以上に分かれると思う。
電気自動車って楽しいの? 愛車として満足できる?
山本:谷口選手はテスラを所有していますよね。楽しいですか?
谷口:楽しいよ。欲しいときにグッとパワーが来るレスポンスの良さは、エンジン車にはない魅力がある。
あとはイーロン・マスクの考え方が興味深い。クルマとして常識外れの部分があっても「これが未来だからお前らが慣れろ。早くガラケーからスマホの生活に変われ!」って言い切っちゃう破天荒ぶりはおもしろいよね。
それに100%賛同するわけではないけれど、電気自動車のある生活も試してみようと思って買った。
最初は複数のエアコンをつけて同時に充電したら自宅のブレーカーが落ちちゃったりもしたけど(笑)、いろいろ学習して充電の時間を気にするようになったりと自分自身が成長した。
安東:たしかに、BEVのトルクが素早く立ち上がる感じはいいですよね。一度味わうとやみつきになる。
谷口:ただ、エンジンには高回転で盛り上がる特徴がある。それはモーターにはない楽しさだね。BEVに対して、高回転の伸びがエンジン車の愉しさだと思う。
――これからBEVの時代になると言われていますが、BEVが普及するためには何が必要なのでしょうか?
谷口:バッテリーの進化が必要だよね。充電時間もだし、航続距離だってそう。あとは製造とか廃棄についても解決しないといけない。
安東:バッテリーの効率を高めることが必要。
今でも電気が足りないのに、BEVが増えたらどうなるんだろう?
――ところで、今でも86やシルビアを愛し乗っている人も多くいます。この先、そういうクルマに乗っている人が「もう乗っちゃダメ」って言われてしまうような世の中が来なければいいと私は思っているんです。思っているというか願っている。
それら古いクルマをEVとか水素仕様にするのも一つの手ですが、そうではなくごく当たり前のようにカーボンニュートラル燃料でも走れる日がくればいいなと思いますね。
※カーボンニュートラル燃料:燃料の生成時にすでに排出されている二酸化炭素と水素を合成する「合成燃料」と、二酸化炭素を吸収し成長する生物や植物由来の「バイオ燃料」があります。どちらも精製する時点で二酸化炭素を減らすことができる燃料で、燃焼で発生する二酸化炭素とプラスマイナス0にすることからカーボンニュートラル燃料と呼ばれています。
谷口:これからガソリンの需要は減ると思うけれど、そうなったときに原産国が原油を高くするのか、それとも安くしてくれるのかは興味深い。
いま、日本でもそうだし世界のいろんな国でも根本的に電気が足りないでしょ。でもこれからEVが増えていったらどうなるんだろう。
山本:それは自動車メーカーだけじゃなくて国が率先して考えていかなければいけないことですね。
安東:実は自分のガレージに太陽光発電システムを設置したんですが、そこで作った電気をBEVに溜めて走ることができる。すると、ほとんどコンセントからの充電に頼ならないでBEVを走らせられる。これはいいなと実感しました。
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これまで100台ほどのクルマを所有してきた谷口信輝選手。現在はEVも所有している
谷口:でも、設置費用が掛かりますよね。どのくらいで元が取れるんですか?
安東:計算上だと7年ですね。
山本:そこに蓄電池があれば完璧ですね。
安東:そうなんですよ。でもそこまでは手が出せなかった。
――これからBEVが増えていくことは間違いないでしょうから、クルマ好きも他人事じゃなくてエネルギー問題に関心を持つ必要がありそうですね。
近未来のクルマといえば、究極は「ナイト2000」!?
――ところで、話は変わってみなさんが注目している近未来のクルマってどんなクルマですか?
谷口:それはジェームス・ボンドのクルマでしょう。
それから「メンインブラック」に出てきた、トンネルの上も自由自在に走れるクルマ。
――どちらも秘密アイテムが満載のやつですね。
山本:究極はナイト2000。自動運転だし、呼んだら来るし。感情があってパートナーにもなってくれる。
※ナイト2000はアメリカの人気ドラマシリーズ「ナイトライダー」で、主人公とともに事件を解決する人工知能「K.I.T.T(キット)」を搭載したスーパーカー
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将来のエネルギー政策についても造詣が深い山本シンヤさん
谷口:身近なAIであるスマートフォンのSiriでも思うんだけど、もっと賢くなって仲良くなったらきっと楽しいだろうね。
でも、クルマが感情を持つようになったら、事故なんて起こしたときには泣き崩れちゃうね。ペットが交通事故にあうようなものでしょ。それは悲しいな。そんなクルマを他人になんてとても貸せないし、他のクルマに乗るのだって浮気みたいなものだよ。
――たしかに。
谷口:オレはそんな状況になったら、クルマを2台以上持てなくなるかも。
だって感情を持つクルマから「どっちが本命なの?」なんて質問されたら困る。
安東:クルマと会話するといえば、最近のクルマは音声入力が増えたじゃないですか。でも、話しかけて言葉を理解してもらえないときは自信を失いそうになります。何度も、はっきり言ってもダメなんです。
――それは時々あることですよね? でも、いちいち自信を失うなんてオーバーな……あっ、安東さんは言葉を発するプロでしたね。
安東:きっとボクの活舌が悪いんです(笑)
山本&谷口:爆笑
谷口:そうじゃなくて、きっと活舌が良すぎるんですよ。普通の水準にあわせないと(笑)
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クルマの話をしだすと止まらない安東弘樹さん。クルマ以外の話が止まらないときもある
安東さんは、20年後もロータス・エリーゼに乗っている?
――コメントしづらいので話題を変えましょう。
なんだかんだで、みなさんはこの先も、時代が変わっても愛車に乗り続けるのでしょうね。
果たして、20年後はどんなクルマに乗っているのでしょうか?
谷口:70歳か。その時代の最新の便利なクルマが1台あって、あとは自分が今まで生きてきた、人生を共にしてきたクルマは持っていたいなと。
あちこちで言っているんですが、S15シルビアに関しては世の中と財力が許す限りは一生手放さないつもりです。重要な部品が手に入らなくなり、乗れなくはなるかもしれないけど、それでも手元に置いておきたい。
安東:私もエリーゼは一生乗っているんじゃないですかね。谷口さんがおっしゃる通り、20年後の愛車環境は2極化していると思うんです。私も、1台はその時の最新のクルマ、1台はとことん運転が楽しいクルマを持ちたい。
山本:やっぱりボクも2台持ちたいですね。20年後の最新のクルマも間違いなくいいけれど、古いクルマも持ちたくなると思う。
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こういう古いクルマも味がある
谷口:いま、古いクルマを気に入って所有している人には声を大にして言っておきたいことがある。いま手元にあるそのクルマ、どうしても生活できないとかの事情があるなら手放すのもしかたない。でも、そうじゃないなら手放すな、と。
なぜなら、手放した後に「やっぱり欲しい」となったときに、もう1度手に入れるのはとても大変だから。そこで後悔したくないならば、手放すべきじゃない。一度手放したら、そのクルマは二度と手に入らないかもしれないよ、と。
安東:そうですよね。
――やはりみなさん、20年後も2台持ち(もしくはそれ以上)が理想のようですね。
そして、一台はその時の最新のクルマと。
谷口:それは当然だよ。だって、その時代その時代の最新のクルマはいいに決まっているんだもん。
昔のクルマは味があって愛着もあるけれど、製品として考えたら最新のクルマには敵わないよ。
昔のクルマは、その時代を美化して楽しんでいるようなところもあるよね。「あの時の彼女は美人だったなあ……」って(笑)。
「愛車」と一口に言っても、愛し方は人それぞれ。とはいえこの3人に話を伺って感じたのは、3人とも愛車を溺愛していることでした。これから先、「100年に一度の変革期」といわれる時代を経てクルマとオーナーの関わり方は変化していくかもしれません。しかし、3人の話を聞くうちにクルマ好きが愛車を思う気持ちはこれからもずっと変わらないのではないかと感じました。
座談会のあとには、3人にそれぞれ「愛車とは何か」について色紙に言葉をもらいました。
谷口選手の「男は黙って車高短 ツライチ」、安東さんの「MT命」、そして山本さんの「基本は洗車」。それぞれにクルマに対する愛が滲み出ていると感じられるのは、きっと気のせいではないでしょう。
3人はまだまだ話足りなそうですが、今回の座談会はこのへんでお開き。
また近いうちに、次もやりたいですね。次のテーマは何にしましょうか?
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谷口信輝選手
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安東弘樹さん
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山本シンヤさん
(司会/まとめ:工藤貴宏 写真:堤晋一/工藤貴宏 )
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