【東京オートサロン2019】旧車を現代技術でリペア&カスタマイズ!注目パーツ&手法をピックアップ
クルマ好きとひと言で言っても、車種やジャンルなどは人それぞれ多種多様な嗜好に分かれている。特に旧車と呼ばれるジャンルの場合は、その個体に深い愛情を持つオーナーも多く、所有している車体を修復しながら乗り続けている人も少なくない。そんなオーナーが究極の作業として求めるのが『レストア』といえるのではないだろうか。
もちろん、フレームからフルストリップのうえで完全修復を行う作業には、消耗品だけでなく様々なパーツが必要になることから、車種によってはあまり現実的とは言い難い。また、すでに手に入らなくなってしまっているパーツも少なくないため、完全オリジナルの状態に仕上げるのが難しい場合も増えてきている。
しかし本格的なレストアまでいかずとも、少しでも愛車をキレイに、そして快適に、理想の形で乗るためのリペア術やパーツを求める現実派のユーザーも多い。
ここでは、東京オートサロンでみつけた旧車のリペアやカスタマイズに役立ちそうな情報をまとめて紹介してみよう。
最新スペックのブレーキを中心とした旧車修復術【エンドレス】
ブレーキパーツやサスペンションといったカスタマイズパーツを提供する傍ら、GTなどレースシーンでもその存在感を高めているエンドレス。そのブースでは例年、完璧なフルレストアが行われた歴史的な名車が並べられ、来場者を楽しませている。
日産・チェリーX1-Rやローバー・ミニなどが並ぶブースで、今年もっとも注目を集めていたのがこの1963年式VW・カルマンギアだ。
カルマンギアは代表の花里氏が昔乗りたかった1台だそうで、その長年の想いを凝縮するかのように、ボディの修復から最新モデルのローバックシートや内装の総張り替え、エアコンやナビの取り付けからエンジンのオーバーホールに至るまで手が加えられているのが特徴だ。
もちろんブレーキ周りは、当時のスペックそのままでの修復では現代のハイグリップタイヤとのバランスは求められない。そのためフロントにはオリジナルの4ポッドブレーキキットを組み合わせつつ、リアにはアルミ削り出しでオリジナルのアルフィンドラムをセット。このアルフィンドラムは、ドラムブレーキの機構のまま熱対策として周囲に冷却フィンを備えたもの。古くからレーシングカーなどで採用されていたが、カルマンギアには純正採用されていないものだ。
さらにサスペンションも、ノーマルのトーションビームを利用しながらジール製ダンパーをセット。また当時のVWはホイールのP.C.D.が205ミリという特殊サイズを採用していたため、現在では専用品を除いて選択肢がほとんどない。そこで、より軽量で高性能になった現在のホイールが履けるように、ハブが114.3ミリに変更されているのも見どころのひとつだ。
単純に当時のスタイルでキレイに仕上げるだけがレストアではなく、より現代の道路事情やユーザーの使い勝手に合わせてモデファイするのも必要な修復作業。そういった意味でもオリジナルのブレーキシステムやサスペンションダンパーの組み合わせは、理にかなった選択といえるのである。
当時のデザインを現代の技術でリバイバル【ヨコハマタイヤ】
旧車オーナーの中ではフルオリジナルにこだわりたいというニーズも高い。しかし消耗品、特にタイヤとなるとオリジナルにこだわり続けることはもはや不可能。もちろん純正同等品を含めて考えても、日進月歩のタイヤ業界では数十年前の製品はモデルチェンジによってまったく違う製品に変化しているのである。
昨年、そんな旧車を取り巻くタイヤ事情のなか、革新的なアイテムをリリースしたのがヨコハマタイヤだ。アドバン・HF TYPE-Dは旧車ファンが求めていた当時のデザインを再現し、多くの旧車ファンを虜にしている。
そんなアドバンが今年の東京オートサロンで出品したのがポルシェ・356に履かせていた『G.T.SPECIAL CLASSIC Y350』だ。
G.T.SPECIAL は1967年にヨコハマタイヤが初のラジアルタイヤとして発売したブランド。当時最先端のラジアルタイヤは憧れのパーツとして多くのファンが求めたアイテムだ。そんなブランドから名品Y350を現代の技術で復刻したのが同モデルというわけ。
トレッドパターンやサイドウォールに描かれるロゴは当時をそのままトレース。しかし当時の雰囲気を保ちつつ現代の道路状況に合わせるために、使用する素材から内部構造は再設計が行なわれている。そのため当時のスタイリングを模してはいるものの、グリップ力やタイヤ剛性といったスペックは現在の最新モデルに引けを取らないものに進化しているのだ。
クルマ全体の雰囲気を重視しながらも、得られる性能は現代流。これこそ長年スポーツカーの足元を支え続けているヨコハマタイヤが目指した旧車への最適解といえるだろう。
名車ハチロクの傷んだボディをカーボンで再生【インパルス】
ドリフトをはじめとしたモータースポーツシーンで、今も多くのファンに親しまれているAE86(以下ハチロク)。日本のスポーツカーの中でも名車として語り継がれることも多く、それだけに今も若者から年配まで幅広い層からのニーズも高止まりしている。
しかし、すでに30年の時間が経過し、その間に様々なオーナーの手に渡っていたことから「車両コンディションはほとんどがグズグズ。市場に出回っている車体の9割以上がレストアベースと考えた方がいい」というのが専門店であるインパルスの答え。
もちろんレストアを考えた時、すでに純正パーツの製造が終了していることも考えられる。というより、ほとんどのパーツが絶版品となっているため、パーツ調達の方法から考える必要があるというわけだ。
そこでインパルスがリリースするカーボンボディパネルに注目が集まっている。そのラインアップはさすが専門店というべきで、レビン/トレノ、2ドア/3ドアともに続々と製品化されているのだ。
これらのパネルはすべてノーマルのプレスラインで作られているのがポイント。よくある社外フェンダーのようにワイド化やダクト装着などが行われず、素材自体はドライカーボンながらノーマルのスタイリングで仕上げられるというわけ。これは「より多くのオーナーに対して役立ててもらいたいから」とのこと。
もちろんラインアップするボディパネルはほぼ1台分丸ごとが目標。そのため純正では溶着されているルーフやリアクォーターなどもすべて張り替え用として用意している。
「この張り替え作業がレストアを支える肝」と語るのは代表の田嶋さん。当時の工法では溶接されていた部分はシール性が悪く、そこから水分が侵入しサビが発生していたという。
しかし現在の新車ではパネルの接合はすべてボンドによる接着で行なわれている。このボンディング工法をしっかりと熟知したショップで行えば、水分の侵入は防げるため、サビなどの劣化は防げるようになるそうだ。
もちろんドライカーボン製のパネルなら、そもそもの腐りは心配なし。20年後、30年後にも満足できるレストアが実現できる、ハチロクファンにとって救世主と呼べるアイテムではないだろうか。
(テキスト:渡辺大輔/写真:平野 陽)
[ガズー編集部]
「東京オートサロン2019 @幕張メッセ」の記事
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