【鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2018 愛車紹介】異色のスーパーカー、パーヴィス・ユーレカを7年かけてDIYで完全復活&カスタマイズ
世界にはこれまで数百といわれる自動車メーカーが存在し、それぞれに独自のモデルを生み出している。実際に世界的なメーカーのみではなく、現地に根付く小ロットメーカーやコンバージョン、キットカーなどの生産数が限られるメーカーも含めれば、その実数を把握することは不可能かもしれない。さらにそれらのメーカーが過去に発売したモデルともなると、まだ見ぬクルマは数かぎりない。そんな超希少種と出会うことができたら、手に入れてみたくなるという人も少なくはないだろう。
1975年式パーヴィス・ユーレカ。その名前を聞いてどんなクルマかすぐにわかる日本人はごく限られているだろう。逆に、その姿を見て車種を当てられる人もほとんどいないし、むしろその存在を知っているという人も皆無に等しい。
「昔からスーパーカーが好きで、ひと目見た瞬間に購入を考えました」そう語るのはオーナーの中山さん。クルマ&バイク好き一家に育ち、スーパーカー好きの母親からの影響もあったため、この超希少種を23才の若さで手に入れてしまった変態(褒め言葉)だ。
ちなみにパーヴィス・ユーレカはオーストラリアで生産されていたキットカー。オーストラリア以外の国ではスターリング・ノヴァという名前で販売され、ハリウッド映画の「キャノンボール」でも登場していたというから、こちらの名称の方が有名かもしれない。
ベースとなるプラットフォームはフォルクスワーゲン・タイプ1(ビートル)を利用するため、空冷エンジンを搭載するRR方式が採用される。この構造によってフロントは薄く低いフォルムの造形を可能とし、よりスーパーカー然としたスタイリングを実現しているというわけだ。油圧開閉のキャノピーをはじめSF映画に登場しそうなフォルムながらも、パワートレインは超アナログというギャップはオーナーの心に響いた特徴ともいえる。
購入当初のコンディションは目を覆うほどの状況だったという。ボディこそファイバー製のため腐りなどがなく修復は意外と簡単かと思われたが、水没車ということもあり機関系や電装系は散々なコンディション。
しかし、そんな状況でも超アナログなVW・タイプ1がベースということもあり、エンジンやミッションなどの調達は大きな手間もかからなかった。そのため購入後1年ほどは乗回すことも可能だったという。
しかし、やはり各部のコンディションは日に日に悪化するため、長く乗るためのレストアを開始したというわけだ。
基本的にはファイバーボディの修復やインテリアの造形がメインメニュー。これらはお店に任せるのではなく、すべて自分の手で行いたいと考え、FRPやカーボン張りの技術を独学で学んでいったという。
その結果、ボディの修復だけでなく好みに応じたカスタムも気軽に行うことができた。例えばヘッドライトはFD3S用のインナーをくり抜き、ポリカーボネートでカバーを作成。さらにインパネはフルカーボンで使いやすく見栄えも良い造形に変更。メーターはバイク用のデジタルを流用するなど、コストを抑えて楽しみながら作り上げていったのだ。
さらにファイバーワーク修得によって、ボディだけでなくチョロQもワンオフで製作するなど、溢れる愛情は現物だけでなくオモチャにまで投入するほど。
エンジンはVW・タイプ1用なら今も新品が手に入るため、1600ccをベースに吸気系はウェーバーのIDA40をツインで装着。マフラーはスズキ・GSX1300Rハヤブサの純正サイレンサーを流用するなど、こちらもコストを抑えたチューニングを展開。スタイリングからすればもう少しパワーがあってもと考えたものの、車体の強度を考えた結果、現在のスペックに収まったという。
ちなみにボディ自体はファイバー製なのでいつでも修復できるが、フロントガラスはもはや手に入れることができない重要パーツ。エンジンパワーを上げてボディに負荷がかかると、ガラスにまで被害が及んでしまう可能性があるので気をつけているというわけだ。
70年代に思い描かれた近未来的フォルムに油圧制御のキャノピー。このギミックは見る人の度肝を抜き、車種不明感と相まって注目度は抜群。超希少種に恋をしてその修復技術まで修得し7年もの間モチベーションが続いたのは、この唯一無二の独自性があるからこそ。いわゆる普通車とは違った存在価値が所有欲を満たしてくれる、オーナーにとってはまさにスーパーでスペシャルな存在なのである。
[ガズー編集部]
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