【お台場旧車天国2018 愛車紹介】時間とお金はすべてクルマのために 21才大学生のフィアット・X1/9オーナー
1972年にフィアットから発売された軽量ミッドシップオープンのX1/9(エックスワンナイン)。旧車天国2018の会場で2台並んで展示されている姿を見て話を伺ってみると、なんと親子でそれぞれ1台ずつのX1/9を所有しているという衝撃の事実!! この記事では、都内の大学に通っている息子さん(21才)の愛車を中心に紹介させていただく。
X1/9ほか数々の名車を所有するクルマ好きの父親のもとで育った伊藤さん。小さなころからサーキットに見学に行くこともあれば、父が出場するラリーのコ・ドライバーを任された経験もあるとか。
しかし、X1/9の所有を決めた直接のきっかけは父が所有していたからではなく、そのスタイリングが心からカッコいいと感じたからだという。
X1/9はフィアットのなかでも希少な部類に入るマシンといえるが、日本では埼玉県にFKRというこの車種を専門にチューニング・メンテナンスを行うショップが存在する。父に連れられて、そのお店によく訪れていたことからだんだんと憧れが増していき、免許を取得するとすぐに親からの借金というかたちで購入を決意した。
購入したのは78年式の1300というモデル。1トンを切る軽量ボディによる走りの軽快さを売りにしているX1/9とはいえ、SOCH直列4気筒NA・1300ccの純正エンジンのカタログ数値は78年式だと61psとなり、かなり非力な部類に入る。
一方で父親のX1/9は1500という、排気量が200cc大きくて約20psアップを施してある後期モデルという違いがあった。
最初にこのクルマを購入したきっかけは外見のカッコよさだったが、いざ乗り始めれば足もよく動くし、山道のワインディングやミニサーキットを走るのが楽しみになってきたという伊藤さん。ノーマルのままでは満足できず、もっと速く走りたいという気持ちが強くなり、メンテナンスだけではなく、走りのことでもいろいろ相談に乗ってもらっているというショップからアドバイスを受け、父と同じ1500ccのエンジンに載せ換えた。さらに燃料システムをキャブからインジェクションに変更し、フルコンピュータのハルテックによる制御でセッティングをおこなっているそうだ。
「外装のこだわりは星型で逆反りしている形が好きで手に入れたATSのホイールですね。事故って鈑金するときに前後のフェンダーをワイドにしたので、それに合わせるためにも7J+10というリムを選びました」
ただ、すでに販売から40年経っているクルマゆえ、トラブルも多く修理のための費用がかさむところがネック。車体を購入するときに親から借りたお金は後回しにしてもらえているが、維持費のためのアルバイトを必死にこなし「彼女を作ったら絶対に首が回らない」という生活をしているという。
また、修理のために乗れない時間も多いことから、いまでは街乗り用にATのスズキ・カプチーノを購入して、本気で走るときやイベントに参加するときにはこのX1/9で、というふうに使い分けるようにした。常に軽量オープン2シーターだけの生活はいくら学生といえど不便のように思えてくるが、「いまの趣味はクルマだけなので問題ない」と言い切るスタンスだ。
「これからやりたいのはまずオイルクーラーを追加したいです。結構頑張って走るとすぐに油温が120度まで上がるので。でもX1/9はエンジンルームに置く余裕がないので、ガソリンタンクを安全タンクに換えてフロントに移植したらできるかなと。あとは重いリトラクタブルをやめて軽い固定式に換えたいです」
学生という立場がありつつもアルバイトしてためたお金を趣味へ全力投球する。クルマ以外のことを犠牲にしながらも愛車をカスタマイズして乗り続けたいという姿勢を見て、昔の自分を思い出す、という読者の方々も多いのではないだろうか。
(テキスト:長谷川実路 / 写真:堤 晋一)
[ガズー編集部]
「お台場旧車天国2018 @お台場」の記事
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