【お台場旧車天国2018 愛車紹介】31年間乗っても愛情を持ち続けられる魅力あるデザインのいすゞ・ピアッツァJR120型

お台場にさまざまなジャンルの旧車が日本全国から集結する人気イベント『お台場旧車天国2018』。その会場内で、この鮮やかなイエローのボディはひときわ目を引く存在だった。
デザインに惚れて3年落ちだった車体を中古で購入後、クルマ人生において1台目というピアッツァを31年間愛車として乗り続けているというオーナーさん。この初代JR120型のいすゞ・ピアッツァがそこまでオーナーを惚れさせているルックスをしているのは、イタリアのカーデザイナーの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロによるデザインを元にしたショーカーを、ほぼオリジナルの外観を保ったまま量産市販車へ再現したという当時でも例を見ないデザイン手法を用いた経緯があるためだ。

当時から近未来的なルックスを意識しているボディだが、いま見てもまったく古めかしさを感じないのはボディを黄色にオールペンしつつ、社外ホイールやグリル、フェンダーラインを黒くすることで全体が引き締まって見えるカスタムセンスもあってこそだろう。
通常バンパーの前後先端部はボディとは別色の黒に塗られているが、あえてその部分までをボディカラーと同一に塗装していることも秘訣かもしれない。
「24才で就職して初めてのクルマが欲しくなって、そのとき予算を無理してでもこのクルマを買いました。そこから31年間所有を続けているあいだ、最初は純正の赤色だったんですが色が落ちてきてしまったので平成2年に最初のオールペンをしました。そのときも黄色でしたが、平成12年にもう一度塗り直しました。再塗装する際に部分塗りでは色を合わせられないということだったので、フェラーリの純正色に使われていた黄色を選びました」

外装については、限定の特注色に塗装されたレイズ・ボルクレーシングTE37以外のパーツはすべて純正パーツを使用している。一方で、ヘッドライトやボンネットなどが通常のピアッツァに採用されている開閉式の2灯ではなく、角目4灯仕様にも変更されていることにも気づく。これは販売後半にかけてヤナセによって販売されたモデルであるピアッツァ・ネロのもの。そのため、この車両はピアッツァをベースに改造したネロ仕様であるともいえる。

ピアッツァを所有しつつ、人生2台目のマイカーとして選んだのはシトロエンのエグザンティア。こちらも24年前に購入し、ずっと所有しているとのことだが、あくまでオーナーさんにとってのメインカーはこのピアッツァ。会社には自転車通勤のため、もっぱら乗るのは休日のツーリング。ドライバーを飽きさせないこの魅力は、車内から眺めるピアッツァ独特の風景にもあるだろう。
外観に負けじと近未来的な要素がふんだんに盛り込まれた、コラムの左右にスイッチが並ぶコックピットのようなインパネ。このXEというグレードは、そのなかでも特にデジタルメーターが採用されている上位モデルだ。AT4速というのもいまとなってはマニュアルの方が希少に思えるが、当時の最先端技術をアピールするメーカーの象徴的な部分として懐かしくもある。

また、室内も外観と同じように黄色と黒のツートンのカラーリングで統一感を増している。デットニングを施したドアにスピーカーを後付け、トランクにはこだわりのアンプとウーファーボックスを配置しているとあれば、街乗りの楽しみも一層増すことだろう。車体購入後比較的早くに購入したというレカロのリクライニングシートも、純正で採用しているレカロと比べ生地の出来がよく、現在でもまったくヤレを感じない乗り心地を維持しているそうだ。

しかし、日常的にピアッツァを使用しつつ31年間も乗り続ければ、数々の大きなトラブルに遭遇してきたという。過去には保管中の車庫が放火にあい、リヤ側の外装を大きく損傷したこともあったそうだ。また、タービンからのオイル漏れによるエンジンの全損にもあったが、パーツや補機類がまだ手に入るころだったのが幸いした。これも、考えようによってはパーツが絶版となったいまとなっては、可能なうちにリフレッシュができたいい思い出(!?)でもある。

こちらのピアッツァに搭載されているエンジンはSOHC・2Lターボ、カタログネット値で150馬力を出力する。走りに凝っていたという時期にパワーアップを模索し、純正はレギュラーガソリン仕様だが、点火時期を遅らせるチューニングを施し現在はハイオク仕様として乗っている。
また、購入当時から渋滞のエアコン使用時にオーバーヒートしやすい傾向があった。アマゾンで購入したファンをエンジンルームに後付けし、ボンネット内のエアフローを改善することで昨年からエアコンを使っていてもノントラブルで快適に運転できるようになったそうだ。
最近でもそういった工夫をしているのを見ると、31年間付き添った現在でもピアッツァへの愛情は決して薄れていないという姿勢が伝わってくる。そんな野本さんはピアッツァだけのオーナークラブ「SOP TECHNICAL CLUSTER」の名付け親でもあるという。
SOPというのはSlave of Piazzaの頭文字。自分たちを「ピアッツァに魅了された奴隷」と呼ぶのはちょっと言い過ぎな気もするが、ピアッツァは日本の自動車史においても、そういった熱狂的なユーザーを生み出してしまうほど魅力のあるクルマだと言って間違いないはずの1台である。

[ガズー編集部]

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