“ツインカム24”のエンブレムに憧れて。30年越しの想いが叶ったセリカXX 2000GTとの出会い
トヨタを代表するスペシャリティカーとして、いまでも国内外問わず多くの旧車ファンを魅了するセリカ。そして、そんなセリカの上位車種として1978年に登場した『セリカXX』もまた、名車として名を残すモデルのひとつだろう。
海外では『スープラ』という名前が与えられ2世代にわたって発売されたセリカXXは、当時のセリカが4気筒エンジンを搭載していたのに対して6気筒エンジンを搭載し、内外装ともに豪華装備を持つGTカーとしてクルマ好きの羨望を集めた。
3世代目からは日本でもスープラの名前で発売されるようになったが、こちらはセリカではなくソアラと共通のプラットフォームとなったことなどから『スープラではなくセリカXXが好き』というコアなファンも存在するほどだ。
新潟県在住のフェニックスさん(66才)も、これまでに4台のセリカを所有し、現在はセリカXXを愛車として所有しているというオーナーのひとり。
クルマ好きでこれまでにも様々なクルマを乗り継いできたフェニックスさんが、このセリカXXを愛車として手に入れ、大事に所有し続けているのは、若い頃に叶えることができなかったある強い想いがあったからだという。
「もともとスポーツタイプのクルマが大好きで、若い頃にクルマを買ったお店から『ウチに来ないか』と誘われて10年くらい小さなクルマ屋さんで働いていました。
メンテナンスなど細かい事も社長から教えてもらってやっていましたが、私は販売が主担当だったので、22才ごろまでの間に自分でもダルマセリカ、マークⅡが2台、ハコスカ、セリカ2000GTなどたくさんのクルマに乗ってきました。
なかでも、お客さんに売った一週間後に事故でオシャカになってしまったセリカ2000GTは特に記憶に残っていますね(苦笑)」
「そのあとに買ったのが1981年に発売されたセリカXXでした。一目で気に入って飛びついて買ったんですが、それが私にとって初めての新車で、長岡市内では2台目だったそうです」
フェニックスさんが当時購入したセリカXXは1981年に発売された2代目の2.0LのGグレード。しかしその1年後、さらに性能の良いツインカム24エンジン1G-GEUを搭載した『2000GT』が追加ラインアップされたことで、フェニックスさんはひどくガッカリしたという。
しかし、この2000GTに乗りたかったという想いが、時を超えて叶うことになる。それが今から10年前のことだ。
セリカXXに3年か4年くらい乗ったあとは、スターレットの新車やコロナなど、またセリカ以外のいろんなクルマを乗り継いでいたというフェニックスさん。
そして、若い頃はたくさんのスポーツカーに乗ってカーライフを楽しんでいたものの、ある程度の年になってからはワゴンやハイエース、バンなどに乗るようになり、心の中では「ハコスカやセリカLBとかフェアレディZとか乗りたかったな」という想いを抱えながらも、乗れない代わりにクラシックカーイベントの会場などにはよく足を運んでいたそうだ。
「今のセリカXXを買うキッカケとなったのは、10年前に福島の西会津で開催されていたクラシックカーの展示イベントに行ったときです。
その頃の私はセリカXXに乗りたいなと思ってカタログをフリーマーケットで購入したりしながらも、実際には手なんか出せないだろうなと思っていたし、ちょうどバイクにもハマっていたのでそっちの方向にいこうかなとも考えていました。
でも、そこでたまたま出会った知り合いが、このセリカXXの前オーナーさんの友達だったんです。そして、前オーナーがこのセリカXXを売りたがっていることを知り、即決で『買う』と決めてしまって…」
ちなみに、この日のイベント会場にはそのセリカXXは並んでいなかったものの、フェニックスさんは以前、長岡のクラシックカーイベントに車両展示されていた時に見たことがあり、その時のセリカXXの姿が記憶の中にしっかり残っていたそうだ。そのため「あのクルマだったらぜひ欲しい!!」と即決するに至ったのだという。
こうしてフェニックスさんの愛車になったのが、1982年式の2代目セリカXXで、若い頃に乗り損ねた念願の2000GTツインカム24バルブの前期モデル。良い出会いに恵まれ、約30年越しの想いがかなったというわけだ。
「正直ずっと旧車を買わなかったのは、やっぱり維持にお金がかかるし、冬に乗ったら融雪剤のせいで錆が発生するから無理かなと思っていたからです。それでもこの2000GTツインカム24は、ずっと、どうしても乗りたいと思ったんですよ。きっと以前乗ったことのあるGクラスとかだったら買っていなかったですね」
「実際に手元にきた時はとても嬉しかったです。それに、実際に所持してみると今のところエンジンが壊れたこともないし、外装も腐ってないので旧車にしてはお金はかかってないほうだと思います」
実際、ボディはとても綺麗で、聴き心地の良い上品なエンジンサウンドを聴かせてくれる。
さらにフェニックスさんからすると、実際の乗り心地も「年式が年式で劣化していますしエンジンの力はそんなにないですけど、高回転まで回るので気持ちいいですよね。昔乗っていたXXに比べるとパワーもあります!」と大満足のようすだ。
もちろん、何もせずここまで調子が良いわけではない。
「吸排気系はフジツボ製マフラーにトラストのエキマニ、エアクリーナーなどを交換しています。それにガソリンホースやプラグコード、クーラーやコンプレッサーなど走りや快適装備に関わる消耗品はひと通り交換しています。乗るのが不安になるとつまらなくなるし、飽きますからね」
メンテナンスに関しては細かいところはディーラーに依頼し、難しいチューニングなどはドリフト走行に精通する知人にお願いするなど、整備対策は万全。しっかり手がかけられたエンジンルームは美しい輝きを放っている。
そんなフェニックスさんは、前オーナーが手がけた箇所も含め、このクルマのスポーティーなスタイリングをとても気に入っているとのこと。
「このリヤスポイラーとドアミラーは前のオーナーさんの手によって輸出用のスープラから流用されたものですね。私の持つ2000GTの前期型は本来はまだフェンダーミラーで、ドアミラーが採用されたのは後期型からなんです。またホイールは通常14インチなんですけど、このモデルは純正オプションで15インチがありまして、それを履かせています」
車内も基本的には購入時のままだが、唯一ステアリングとシフトノブだけはご自身で交換したそうだ。
「これは純正のバケットシートなんですけど、空気を入れて膨らませることでバケットシート化するんですよ。おもしろいですよね。またコンソールにはこんな純正ライトもあっていまでもちゃんと点きますよ。まあ使ったことはないですけど(笑)」
そんなフェニックスさんは、今後のセリカXXとのカーライフついてどのように考えているのだろうか。
「私も66才ですからいつまで持ち続けられるかはわからないですけど、こういうクラシックカーは次に乗る人にも大事にしてほしいですよね。
私自身も買ってから錆びないようにずっと車庫に除湿機をかけていたりと大事にしています。特に私の初期型のツインカム24はタマ数もかなり少なくなっているので、次のオーナーでこのクルマが潰れることは避けたいです。将来的には話がわかってくれる方に譲りたいですね」
若い頃に乗りたかったクルマと、40年後の現在をともに過ごすフェニックスさん。だからこそ、そんな懐かしさや思い出の詰まった大切な1台をこの先もずっとずっと残していきたい…。そんな彼の熱い想いをしっかり受け継いでくれる次のオーナーが、いつか現れるに違いない。
取材協力:万代テラス
(⽂: 西本尚恵/ 撮影: 金子信敏)
[GAZOO編集部]
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