「はじめての愛車KP61の走りが忘れられなくて」というオーナーが、あえて選んだバンで楽しむカーライフ
免許を取得してはじめての愛車としてKP61型のトヨタ・スターレットを手に入れたという間芝さん。軽量な3ドアハッチバックボディにFRレイアウトというパッケージで、走りの楽しさが深く印象に残っていたという。
そして、その後さまざまなクルマを乗り継いだものの、当時の楽しさを思い起こし、再びKP61に手を伸ばしたそうだ。
しかし、再び手に入れたKP61のコンディションは今ひとつで、納得できる状態までレストアするには時間とコストがかかりすぎてしまう……。
そんな悩みを抱えている時にこの1982年式トヨタ・スターレットバン(KP61V)を見つけ、1年半ほど前に手に入れたという。
「3ドアの出物を探していたんですが、手頃な価格帯ではなかなか見つからなくて。正直なところ、独特なスタイリングのバンも気になっていたし、若い頃のように走り回ることもないですし。それならドライビングの楽しさはバンでも十分に体感できるというのが購入を決めたポイントですね。このバンはセミレストア状態で手が届くプライスだったのもラッキーでした」
KP61シリーズはスターレットとしては2代目となり、1978年から1984年まで販売された大衆向けコンパクトハッチ。同時期のハッチバック車はどんどんFF化されていく中で、スターレットはFRレイアウトを維持。走りを楽しみたい当時の若年層から絶大な支持を受け、ワンメイクレースなども盛んに行われたモデルだ。
そんなスターレットのなかで、バンはオーバーハング部を延長して荷室を稼いだ実用モデル。エンジンは1982年から乗用モデルと同様の4Kに変更されているものの、リアサスペンション構造はリジットリーフを採用するなど、乗用モデルと異なる部分もある。
“丸目ライトの前期”と“角目ライトの後期”と見分けるのが一般的だが、その狭間ではバン専用デザインもラインアップされていて、後期角目モデル用のヘッドライトベゼルに丸目ライトが組み合わされた間芝さんの個体は、そんなバン専用となる“中期フェイス”であることも特徴といえる。
間芝さんはこのバン特有のスタイリングが気に入っているというだけに、今もっとも気がかりなのはもらい事故だという。特にリアから突っ込まれたら修復が難しいと思われるだけに、常に気をつけて乗っているとのこと。
「乗用車でも純正パーツが製廃になっていたり、中古パーツも少なくなってきているんですが、バンはテールゲートやテールランプが専用品なので、さらに気をつけないといけないんですよ。専門店の復刻パーツでもバンとなると……、昔みたいに『ぶつけて壊したら乗り換える』なんて、もうできないですね(笑)」
そう言いつつも、大切にしまい込むのではなく、普段の街乗りから通勤まで、その走りを存分に満喫しているのはKP61の楽しさを知る間芝さんのこだわりでもある。
搭載している1300㏄の4K-Jエンジンは、ヘッドガスケット交換などコンディションを向上させるためのメンテナンスを実施済みで、今後はキャブをダウンドラフトタイプに変更したり、ミッションを4MTから5MTへ載せ替えたりといった作業も検討中だという。
また、フロントサスペンションは車高調に入れ替え、リジットリーフを採用するリアサスペンションもローダウンしつつ、乗り心地を改善するべくダンパーを変更している。
「車高調はひと昔前と比べると製品は少なくなっていますが、ショップなどで新品も出てくるので安心できますね。この世代だとカートリッジ式のダンパーですが、サイズなども選べますから好みの味付けもできるんですよ」
ハンドリングマシンというキャラクターを活かせる足まわりのセットアップは、過去にKP61の走りを満喫していた間芝さんにとって、現在も欠かせないカスタマイズというわけだ。
室内に関しても、シートはホールド性を向上させながらも派手になりすぎないようにと考えた結果、レカロのリクライニングタイプを選択。ステアリングは定番のナルディ・クラシックで、水中花シフトノブは操作しやすいポジションに合わせて延長するなど、ドライビングのしやすさにこだわった運転席を作り上げている。
オーディオユニットはインパネのデザインに溶け込むようなデザインを探し、パイオニアの旧モデルを見つけて装着。スピーカーなどは車体側に加工をせずに高音質が楽しめるよう、ダッシュボード下にサテライトスピーカーユニットを装着。
ラゲッジスペースにもボーズの置き型スピーカーを組み合わせるなど、こうしたレイアウトも積載スペースが広いバンだからこそ実現できた、と間芝さん。
「普段から乗って楽しむためにオーディオなどは、比較的新しいけどインテリアに合ったモデルを探して組み合わせています。ただこのKP61にはエアコンがないので、夏の昼間はあんまり乗れないのが弱点ですね。エンジンやミッションのバージョンアップだけではなく、いつかエアコンも追加したいなぁ~と思っています」
エアコンレスのため夏場は原付バイクが通勤の相棒になるという間芝さんだが、乗れない間のストレスも大きいというだけに、エアコン導入は意外と早くなるのでは!?
そして、こういった旧車を大切に乗り続けていくには、パーツに関する情報は必要不可欠。そのためKPスターレットに特化したオーナーズクラブ『KP保存会』にも参加し、全国のスターレットオーナーとコミュニケーションを取り続けているという。
こういったネットワークも活用しながら部品のストックを増やすなど、長期保有の準備も着々と進めているというわけだ。
「シンプルなスタイリングは自分の理想のカタチに仕上がったと思います。でもリジットリーフの構造は乗り心地が今ひとつなんですよね。できれば構造から変更したいんですが、それはこれから先の楽しみとして考えていきたい部分です」
愛車をよりいっそう自分好みに仕上げるカスタマイズを長期的プランで実施していくのは、長く乗り続けていく楽しみのひとつ。手に入れた瞬間から快適性が約束された現行モデルとは違い“もっとこうだったらいいのに”がたくさん感じられる旧車は、今後も乗れば乗るほどさまざまな欲求が湧いてくるに違いない。
そして、そんな欲求に対して解消方法を模索し、自分だけの1台に仕上げていく過程も、間芝さんのカーライフの楽しみどころというわけだ。
取材協力:ジャストマイテイストミーティング
(文:渡辺大輔 / 撮影:土屋勇人 / GAZOO編集部)
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