自然体で「今」を楽しむオーナーが選んだ相棒は、ラヴァオレンジクリスタルシャインのボディカラーをまとった2017年式レクサス(AGZ10型)
「あの頃のクルマは魅力的だった」という、ため息のような言葉をよく見聞きする。旧車には、現代のクルマにはない魅力があることは否定しない。しかし、現代のクルマだからこそ享受できるものもあるはずだ。単なる「食わず嫌い」なだけなのだろうか?時代が変わったように見えて、変わってしまったのは、もしかすると自分自身なのかもしれない…。
今回登場する68歳の男性オーナーは、こう考えているそうだ。
「自分が若い頃は、クルマがどんどん進化している時代だったし、キャブレターからインジェクションになったときは、すぐスタートできることに感動したものです。そのときの好奇心のようなものは今でも変わりなく持ち続けていて、進化している電気自動車や自動運転にも興味があるんですよ。クルマという存在は、ただの移動手段ではなくなっていますし、この先はもっといろんな機能が備わるかもしれない。例えば、かつては「携帯」電話だったけれど、通話する機能はもはやスマートフォンの一機能にすぎません。クルマにもそんな未来がくるかもしれないですよね。走ることプラス、楽しいことの可能性に期待しています」
今回の主人公は、以前紹介したマツダ・ユーノスロードスターV-SPECIALⅡ(NA8C型)のオーナーと同一人物である。
オーナーは多彩な愛車遍歴の持ち主で、スバル・360カスタムをはじめ、スバル・ff-1スポーツ、ホンダ・S600、トヨタ・スポーツ800、日産・バイオレットSSSハードトップ、ホンダ・クイントインテグラ 5door GSi、日産・プリメーラTm(P10型)、日産・フィガロ、マツダ・ロードスターターボ(NB型)、初代ロードスターの限定車であるM2 1001、そして現在も所有するユーノスロードスターV-SPECIALⅡといったクルマたちを乗り継いできた。
初代ロードスターのような古いクルマも大切にしながら、決して懐古主義ではなく、最新技術も積極的に受け入れ、試してみたいという好奇心と柔軟性の持ち主だ。そんなオーナーがユーノスロードスターV-SPECIALⅡと同時に所有するのが、今回紹介する2017年式レクサス・NX 200t F SPORT (AGZ10型、以下レクサスNX)だ。2018年に迎えてから約1年が経つ。普段乗り用だそうで、年間走行距離は約1万キロだという。
レクサスNXはコンパクトSUVとして2014年に発売され、同ブランドのなかでもひときわ高い人気を誇ったモデルだ。オーナーの愛車は「ラヴァオレンジクリスタルシャイン」と呼ばれる、鮮やかでありながらどこか気品が漂うオレンジのボディカラーが目を引く。
このクルマのボディサイズは、全長×全幅×全高:4630×1845×1645mm。「8AR-FTS」型と呼ばれるエンジンの排気量は1998cc、直列4気筒、直噴ターボエンジンが搭載され、最高出力は238馬力を誇る。
レクサスには、通常のモデルに加えて「version L」 「F SPORT」 「I package」と呼ばれるグレードが存在している。そのなかでも「F SPORT」は、Fのコンセプトに基づき、専用パーツでチューニングを施したモデルとなっている。インテリアも、スポーティかつレクサスらしい質感があふれる仕上がりだ。
オーナーの個体は、レクサスの認定中古車店で手に入れたという。数々のメーカーオプションが装備されており、F SPORT専用品のホイールの他、スペアタイヤ、パワーバックドア、アクセサリーコンセント、プリクラッシュセーフティシステム、ルーフレール、ムーンルーフ、左右確認サポート付きパノラミックビューモニター、三眼フルLEDヘッドランプなどが装着されている。
このクルマで気に入っている点を、オーナーに尋ねてみた。
「エンジンの滑らかなフィーリングとレスポンスでしょうか。安定性はヨーロッパ車には及ばないけれど、自分の生活スタイルに合っているので、点数をつけるとすれば90点以上。とても満足しています」
このクルマと出会ったきっかけは?
「実は、最初からレクサスを探していたわけではありませんでした。もともとヨーロッパ車が好きだったので、シートヒーターとサンルーフ付きの輸入車を探していました。しかし最近は、サンルーフ付きのメルセデス・ベンツやBMWが少なくなってきた印象です。意外にも、レクサスはサンルーフが装着されているクルマが多いことを知り、探してみると近所のディーラーに、この個体があったんです」
「ラヴァオレンジクリスタルシャイン」と呼ばれるインパクトのあるボディカラーだが、このオレンジ色にこだわったのだろうか?
「クーペ(RC F)にオレンジがあるのは知っていたけれど、SUVにも設定があることは知りませんでした。妻にも相談してみたところ、好きなクルマを買えばいいよとの許可を得たので、実車を確認するためディーラーへ足を運んでみたんです。実際に見てみると、想像していたよりも素敵な色で、陽に当てると色みが良い感じに変化します。オレンジは色合いが難しいボディカラーという印象ですが、私はもちろん妻も気に入りました。以前は赤や黄色のクルマにも乗っていましたし、そんなに抵抗がなかったんです。それに、ダークカラーより視認性のよいオレンジは、安全にもつながると思いました」
レクサスNXを選んだのは、安全や安心を重視したのだろうか?
「安心感はかなり重要だと思っています。年齢的にも、気づかないうちに余裕がなくなってくるんですよね。これからもクルマを長く楽しんでいくためには、事故やトラブルを極力避けなければなりません。万一、何かあったとしたら、乗りたい気持ちも削がれてしまうと思いますから。視認性の良いボディカラーや最新の安全性能は、運転する余裕につながり、集中につながり、安定につながると思います」
他のヨーロッパ車との比較はしたのだろうか?
「輸入車といえば、故障しやすい箇所があって、それを気にしながら乗るのも、ある種の楽しみだとは思います。しかし、実際に高速道路で止まってしまったこともありましたし、時と場合によっては大きなトラブルに遭遇することもありえます。輸入車と比較して、壊れにくく安心感のあるレクサスは、普段乗りとしていい選択肢だと思いますね。輸入車の場合、どうしてもマイナートラブルに見舞われることがありますが、日本車ではそういったケースは非常に少ないという安心感にもつながっていると思っています」
この鮮やかなレクサスNXを所有して変化したことは?
「ラヴァオレンジクリスタルシャインのインパクトは大きいですね。会話のきっかけにもなりますし、覚えてもらいやすいです。それに、目立つので『見られている』という緊張感から、正しい運転を心がけていますし、良い意味で気持ちが引き締まります。この色がオプションではなく、通常の価格で選べるレクサスは良心的だと感じています。定番のボディカラーではないので、リセールバリューが云々と言う人もいますけれど、長く乗るのなら関係ないし、そもそもリセール目的でクルマに乗っていません。事実、リセールを気にするより、得られるものははるかに多いですよ」
最後に、今後愛車とどう接していきたいかを尋ねてみた。
「このレクサスNXは、今の自分に合っていると思っています。私は、アガリの1台にするなどの決めごとは、自分の中ではしないようにしています。もしかすると魅力的なクルマが見つかれば、その次があるかもしれない。言葉では『一生モノ』とそのとき言ってしまうかもしれないですが、時間が経てば状況は変わってくるし、そうなるのが自然だと思うんですよね。縛られることなく、自由に長くクルマを楽しんでいたいです。そして、常に新しいことに興味を持ちたいですね。クルマの操作も新しいほど複雑ですが、わからなければ人に聞けばいい。そこでコミュニケーションも生まれるわけですから。結局、クルマって、いいものなんですよね」
新旧のクルマを愛するオーナーは、驚くほど自然体でカーライフを愉しんでいた。自分自身を縛らないことで、新しいクルマの魅力が見えてくるのかもしれない。そして「今を楽しむ」ことも、カーライフを長く楽しむための秘訣なのかもしれない。柔軟性と好奇心を併せ持つオーナーの話につい引き込まれてしまった取材となった。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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