絶滅危惧種のランドクルーザー20系。心が折れそうになりながらも、本気で乗り続けていく理由とは?

11月20日(土)と21日(日)の2日間、静岡県にある大路地ファミリーキャンプ場で開催された「第35回ランドクルーザーズ・ミーティング(LCM)」。そんな同イベントで出会ったのがランドクルーザー20系に乗る小南大地さん。

ランドクルーザー20系は、1960年頃まで製造され、ユーザーの使用用途に応えるべく、ホイールベースやボディ形状など、さまざまなバリエーションがラインアップされていたのが特徴だ。
ボディを構成するラインには、各所にアールが採り入れられ、丸目のライトと相まって親しみやすい雰囲気になっている

小南さんの愛車である「ランドクルーザーFJ21KB」には、戦後のバスやトラック輸送を担った高速エンジンとして開発されていたF型ガソリンエンジン(3878cc直6/105ps)が搭載されている。
戦後の日本が産業や経済の復興に勢いづいてきた時代に登場したモデルで、ラゲッジスペースへの荷物の積み込みを容易にするためのリアゲートを備えるなど、あらゆる労働の現場を支えるために、実用的な機能が付いているモデルだ。

「このクルマが大好きなんですけどね。手がかかるクルマだから心が折れそうになりますよ。維持するだけではなく、運転するのもすべて大変なんです。でも、乗ってしまうんですよねぇ……。なんでだろ……」。そうは言いつつも、愛おしそうにFJ21KBを見つめる小南さん。

ランドクルーザーは、幼少期に専門誌で見て、いつか自分も乗ってみたいと憧れていたクルマだったという。
「デザインもそうですが、歴史を知ると、古い時代に製造されたランドクルーザーに魅力を感じたんです」とのこと。小南さんの乗るFJ21KBは、現在のランドクルーザーの礎となった、古く歴史のあるクルマなのだ。

「60年以上も前のクルマになるので、博物館以外でお目にかかることができるとは思ってもみませんでした。そして、そんな貴重なクルマに乗っているということが、未だに信じられないときがあります」と、今でも新鮮さが薄れない魅力があるランドクルーザー20系。

FJ21KB は、前オーナーが年齢的に維持するのが難しいということで譲り受けたそうだが、お気に入りポイントは、フェンダーやボンネットのボディラインだという。

「当時は現代のように機械で大量生産するのではなく、木型にはめ込み叩いて形成していたんです。だから、同じように見えて、まったく同じ個体が1台もないんですよ」とのこと。FJ21KBは、小南さんが1番乗りたかったランドクルーザーで、その夢は叶ったものの、実際に乗りはじめると戸惑うことも多かったといいます。

「本を読んでFJ21KBがどんなクルマなのかという知識はあったんですけど、現役で走っている個体がほぼいないので、聞ける人もいないし、自分でなんとかしなければいけないのが辛いところですね」とその苦労を話す。

とくに部品に関してはかなり苦労しているようで、オークションに出品されているFJ21KBっぽい部品を一か八かで、しかも片っ端から購入しているそうだ。

「当たればラッキーというか、ガチャガチャみたいなもんですよ(笑)。仕事中も休憩時間のたびに、オークションに部品が出品されていないか探すんです。というか、毎日四六時中探しています。正直ね、ランクルから離れたいときがあります。忘れたいというか」と、古いクルマだけに苦労も絶えない様子が、取材中に何度もひしひしと伝わってきた。

そう話す小南さんに、そこまでしてFJ21KBに乗る理由は?と聞くと力強い口調で答えが返ってくる。

「次の世代に残すためです」

今は、たまたま自分がFJ21KBに乗っているだけで、何十年後、はたまた何百年後は違う誰かと走っていてほしいというのだ。

「ランクルは、メンテナンスさえしっかりすれば、ずっと走り続けることができるクルマなんです。FJ21KBには走り続けてほしいから、今は僕が頑張って維持しようと思っています。FJ21KBに乗っているというよりも、現段階では僕が乗らせてもらっているという感覚に近いですかね」と、その言葉、そしてFJ21KBを見つめるその目からは使命感のようなものが強く感じられた。

それを聞いていた長男の穂高君は、目をキラキラさせながら「次は僕が乗るよ。ランドクルーザーは一番カッコいいクルマだからね!」と。
「頼むよ」と言った小南さんに、照れくさそうに笑った穂高君とのやり取りが、とても素敵で見入ってしまいました。

戦後の日本から現代まで、日本を走り続けているランドクルーザーFJ21KB。走る道が土から舗装された道路に変わり、街は区画され高いビルが立ち並ぶようになった現代。
変わりゆく日本の街並みを走るFJ21KBは、これからも“使命感”を抱くオーナーたちによって、何世代にも渡ってずっと走り続けていくことだろう。

(文:矢田部明子 / 撮影:奥隅圭之)

[ガズー編集部]

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