ランドクルーザーは「家族の架け橋」。一家全員がランクルオーナーという夫婦が、40ランクルで叶えたい夢とは!?

11月20日(土)と21日の2日間、静岡県にある大路地ファミリーキャンプ場で開催された「第35回ランドクルーザーズ・ミーティング(LCM)」。そこには歴代ランドクルーザーに乗るオーナーが集まり、仲間たちと久々の再開を喜び、大自然の中で自由に楽しんでいる姿が印象的だった。

そんな中、ひと際目立つカラシ色にオールペンした、よく見ると何やら違う雰囲気がただよう40系ランドクルーザーに目が引かれた。そこでご夫婦でミーティングに参加していた「佐野勉さん」と「佐野幸子さん」ご夫妻にお話しを伺うことにした。

佐野夫妻の乗る40系は、ねじれに対して高い剛性を持つ「ラダーフレーム」と呼ばれる、ハシゴ型のフレームを採用し、先代にあたる20系の堅牢でタフな造りと機動力に優れた走りを受け継いだモデル。
なお、ラダーフレームは、2021年8月にフルモデルチェンジし、新しく生まれ変わった300系まで、歴代ランドクルーザーで採用され続けており、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」たる所以の、重要な構造である。

また40系では、20系が海外市場での需要に供給が追いつかない状態だったことを改善するため、大量生産や品質向上を目指して生産体制も整えられた。1960年にデビューして以降、ホイールベースはショート、ミドル、ロングとラインアップを増やしていき、着実に進化を遂げていった。

そんな佐野夫妻が所有するランドクルーザーFJ43は、9人乗りのミドルボディが特徴的なモデルで、本来はバンの設定がないのだが、ご主人が言うには「FJ43バン」なのだという……。一体、どういうことなのだろうか、聞いてみた。

「オリジナルというわけではなく、前のオーナーさんが後付けしたんです。40の中古車をネットで探していたら、FJ43バンという車体を偶然見つけて、『あれ?バンなんてあったかな?』と興味を持ったんです。ほかにも検討中の40があったので購入しようか迷っていたのですが、よく考えたらバン設定のFJ43は世界に1台だけだということに気づき、愛車として迎え入れました」

「屋根が少し盛り上がっていたり、窓もボディに合わせて作られているなど、よく見るといろいろ違うところがあるんですよ」

前のオーナーがあまり乗らずに車庫で保管していたということもあり、走行距離は3万kmでサビもなく、とても綺麗な状態だったそうだ。
世にも珍しい「バン」というだけでも特別感があったとのことだが、薄いグリーンのボディをカラシ色に塗り替えるなど、より自分の理想のFJ43へと近づけるべくカスタムを施し納車したという。

では、具体的にどのようなところが気に入っているのだろうか?

「角張ったボディライン、細いフェンダー、丸いライトなど、現代のクルマでは見かけることが少なくなったデザインが気に入っているんです。運転したときは、とても嬉しかったですね。古いクルマなので乗っていて不具合が出てきますし、その都度修理しながらとはなりますが、とても気に入っています。」と、自然と笑みがこぼれていました。

「錆びて詰まっていたラジエーターをオーバーホールしたり、配線を新品に組み換えるなど、大がかりな作業もしていますし、オリジナルにシートベルトやハザードランプが付いていなかったので、それらの安全装備もあとから追加しています」

「製造された時代と現代とでは、交通規則や交通事情が違うんです。シートベルトなしなんて今じゃ考えられませんが、昔はOKだったから付いていなかったわけですし。サンキューハザードも、道を走っていればよく見かけますが、昔はなかったんでしょう。ハザードランプは、ブレーキをポンピングしてハザードっぽく見えるようにしていたのですが、ドラム式ブレーキなので、踏みすぎると効きが悪くなって危ないので、後から付けたんです」

「バンの設定がなかったり、現代では当たり前の装備がなかったりと、細部を見ていくと快適性より荷物を積んで走ることを目的に造られたんだなぁと、しみじみ感じます。それが良い悪いじゃなくて、歴史を感じるというか。クルマに求めることも、昔と現代では変わってきているんだなぁ、と感慨深い気持ちになりますね」と、歴史や自動車文化が見えてくるのも楽しみの一つのようだ。

「維持するのも、運転するのも大変なんです」という佐野さん。では、どうしてランドクルーザーに乗り続けるのだろうか? その理由を聞いてみると、『家族の楽しかった思い出が詰まっているから』という答えが返ってきた。

「4駆ブームのときに乗りはじめて、それからずっとランドクルーザーに乗っているので、つねにそばにいて当たり前の存在という感じがするんですよ。ランドクルーザーに乗って家族でキャンプに行ったり、妻とドライブに行ったり、家族で楽しめるクルマというイメージがあるんです。そのせいか、子供達も全員ランドクルーザーを愛車として選んでいるんです。乗り心地も良くはないし、いろいろ大変なのにねぇ(笑)」と嬉しそうに話す佐野さん。

お子さんが大人になった今でも、キャンプに一緒に行くことがあるとのことで、
「ガソリン代が高騰した」
「タイヤはどこのメーカーを履いているのか?」
「オススメのキャンプ場を見つけた」
など、ランクル自体の話や、ランクルの介した共通のカーライフの話で持ち切りになるのだとか。

「家族全員がランドクルーザー好きということもあって話も合うし、年齢は離れているけど共通の話題で盛り上がれるんです。だから、ランドクルーザーは家族の架け橋のような存在ですね。自分の体も、ランドクルーザーも労りながら、長く乗っていきますよ」

今後は、奥様と北海道1周するのが夢だという佐野さん。近い将来、カラシ色のFJ43バンが北海道の大地を駆け抜け、また家族のランクル話に花が咲くことだろう。

(文:矢田部明子 / 撮影:奥隅圭之)

[GAZOO編集部]

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