『ランクルの唐揚げ屋さん』としてオーナーの聖地に!?九州を飛び出して参加したミーティングが大きな転機に!

2021年11月20・21日の2日間、静岡県の大野路ファミリーキャンプ場で開催されたランドクルーザーズ・ミーティング、通称LCM。全国各地から年に一度の大規模ミーティングを目当てにランクルオーナーが集まっていた中、こちらの40系ランクルオーナーの花木幸紀さん(35才)は九州の大分県からの参加者だった。

「自分が最初に手に入れたクルマもヨンマルのランクルでした。中学のときに兄貴の同級生がヨンマルに乗っていて、九州でやっていたヨンマルのミーティングに連れて行ってもらったんです。そこから自分も乗りたいと思いはじめて、免許を取る半年前の17才のころ、知り合いからちょうど売りに出されるヨンマル(BJ46)を紹介されました。まわりからは『ボロくて所有するのも大変だからやめとけ』って言われたんですけど、勢いで何も考えずに買っちゃいましたね(笑)」と、ランクルライフをスタートした花木さん。

所有してはじめて旧車を維持することの大変さを知り、手放すオーナーも少なくないそうだが、花木さんの場合はさらにランクル愛がヒートアップし、1台目の40系を所有しながら、2台目のランクルを手に入れようと模索する。

「次に買ったのは水色のFJ56です。最初は大分の中古車買取業者のところに入庫したのを知って話をしてみたんですが、買取業者だったので一般への小売販売はできないと断られたんです。それで諦めたんですが、しばらくしてオークションサイトを見ていたら、水色のボディでまさにそのときに断られたクルマが出品されていたんです。これはもう自分が買えっ!てことだな、と思い切って落札しました」

29才にして40系と50系の2台のランクルオーナーとなった花木さん。ランクルへの入り口がオーナーズミーティングだったように、九州でもしばしばランクルのオーナーズミーティングに参加するような愛車ライフを送っていたそうだ。ただ、活動の拠点である地元を離れ、九州の外に出ることはずっとなかった。

「本州のイベントに参加したのは、3年前に同じ会場で開催されたLCMがはじめてでした」という。今のように花木さんの行動範囲を広げるきっかけとなったのは、プライベートでのとある出来事だった。

「ちょうど3年前のLCMの前に離婚したんです。結婚生活は1年くらいだったんですけど、九州に来ていた菊池さん(ランクル友の会代表兼LCM主催者)に、自分が離婚したことを伝えたら『一人になったなら、人生もう一度楽しめるじゃない!』と励まされたんです。その言葉に背中を押されるようなカタチで、初めてLCMに参加しました」

いままでの九州のイベントは、中学生時代からの顔見知りのランクルオーナーもいる、いわゆる花木さんにとってはホームともいえるイベントだったが、本州で開催となれば知り合いのまったくいないアウェーのイベント。そこで花木さんにとって強みとなったのが、自身のお仕事だ。

「父の代から実家が鶏の唐揚げ屋をやっていて、自分もそこで働いているので、名刺代わりに唐揚げを持っていこうと考えました。店で作った唐揚げを冷凍して持ってきて、現場で温めて配るんです。イベント会場にいる間は、とにかく唐揚げを配って歩き回りましたね」

最初は、お店の営業半分のつもりだったそうだが、地元の名物店にもなっているほどの唐揚げは大好評。結果、ランクルオーナー同士で口コミが広まっていき、今では、花木さんのお店で唐揚げを食べることを目的に、大分へ遠征してくるランクル乗りも増えてきているという。

「3年前に来たときは、ほとんど知り合いがいなかったですけど、いまはクルマのことよりも『唐揚げ屋』と伝えると『ああ、あの人ね』とわかってもらえるようになりました」と、変化を教えてくれた。

今年は、新調したイエティのクーラーボックス(65L)に8キロほどの冷凍した唐揚げを持ってきていて、2日間でほぼ配りきったと花木さん。参加者のみなさんは、お礼にテントで作っている食事に招待してくれるため、花木さん本人は今回のイベント中に会場で火起こしも食事の用意もせずに過ごせたというのも驚きだ。

そのためテントの出し入れも必要なく、用意したのは車中泊のための寝袋だけ。ちなみに寝袋だけはお金をかけるというのもこだわりで、メーカーはナンガ製。冬にも使えるスペックのフィルパワー900というモデルを選んでいた。

そんな花木さんの現在の愛車は、自身にとって3台目となる昭和56年式のBJ46型ランドクルーザー。20代後半だったという前オーナーとは、大分県のコンビニ駐車中に話しかけたことをきっかけに普段も遊ぶ仲になったが、そのオーナーが手放すこととなった車体を3年前に引き受けた。

譲り受けたときは車検もなく、その状態からコツコツとメンテナンスを施していき、現在の仕様へ仕上がった。

「1台目のヨンマルが遊ぶためにイジりすぎて、普段乗ったりするのに苦労するほどだったので、今回はどこへでも苦労せず気軽に乗っていけるように正統派にしてあります」と花木さん。

ミーティングに先駆けて、このランクルにとっての大仕事となったのが今年の1月の長距離ツーリングだった。

「鳥インフルエンザとコロナの影響が重なって、今年1月にお店をしばらく休むタイミングがあったんです。そのときに11日間かけて大分から北海道までランクルに乗って旅をしました。目的はこのミーティングで知り合ったランクル乗りに挨拶するためですね」

最初は九州から四国へフェリーを乗り、そこからは東京を経由して群馬でオフロードを楽しみ、青森の八戸からフェリーで北海道へ上陸し、往復で走行距離は4500キロに登った。その間はホテルに2泊、車中泊を1回するほかは、LCMですっかり仲良しとなった各地のランクルオーナーのもとを訪ねるついでに、家に泊まらせてもらうことができたそうだ。

離婚をきっかけに九州を飛び出して参加したイベントからはじまり、今では全国のランクル乗りに『大分にあるランクルの唐揚げ屋さん』として知られるようになった花木さん。その唐揚げの味がいかがなものか、ランクル乗りでなくとも大分に行った際にはぜひとも味わってみたいものである。

(⽂: 長谷川実路 / 撮影: 三木宏章)

[ガズー編集部]

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