ディーラーのメカニックだからこそ惚れ込んだ、100系トヨタ・ランドクルーザーの魅力とSUVとしての完成度の高さ
「取材お疲れさまです!以前もランドクルーザーズ・ミーティング(通称:LCM)で取材されていましたよね。今年も100系の掲載数は少なめですか?GAZOO.comを見ていると、ぜんぜん100系ランクルが出てこないので盛り上げてください!」
参加者のみなさんに声をかけながら、取材車両を探して練り歩いていた我々取材班。そんなときに話しかけてくれたのが、UZJ100W型のトヨタ・ランドクルーザーでイベントへ参加していた坂林慎治さん(42才)だった。
ありがたいことに、普段からGAZOO.comのウェブサイトをチェックしていただいている読者の方で、100系ランクルの掲載の少なさにも気づいていたんだとか。そこで少しでも100系ランクルを掲載してもらえれば、また注目が集まればという気持ちで声をかけてくれた。
ちなみに自身が取材を受けたいというより、最初は知り合いの100系ランクル乗りを紹介してくれる予定だった。ただ、連絡が取れず、「ちなみに私も100系ランクルに乗っているんですが、どうですか?」と、少し申し訳なさそうに提案してくれる姿も嬉しかった。そこで、ぜひと取材させていただくことになったわけだ。
「ランクル乗りのなかでも100系のオーナーは、ほかの世代のランクルとはちょっと異なる印象を抱かれることが多いんですよね(汗)。誤解を恐れずに正直に言えば、100系のランクルって不人気なんです。それまでの80系とは違って、フロントのサスペンションが独立懸架になり、乗り心地は断然よくなって、SUVとしての完成度は高くなったんですけど、こういうミーティングに参加するような濃いランクル乗りの方には物足りないと感じる人が多いみたいですね(笑)」
確かに参加者の姿を見ると、古くからのランクルオーナーはもちろん、ランクルに強い憧れを持った人の多くは、『ランクルらしさ』を求めて40や70、80系を選ぶほうが多数派だ。ランクルも100系からは高級感が増し、それまでの本格クロスカントリー車という印象が薄まったことも要因だろう。
そんな中で100系ランクルを愛車に選んだ坂林さん。その入り口は、釣りやキャンプといったアウトドアの趣味の延長線にあった。
「子供のころから親に釣りに連れて行ってもらうことが多くて、大人になっても休日は自然とそういう趣味に出かけることが多くなりました。また、親がバイク好きだった影響もあって、自動車整備の専門学校に進んで、そのままディーラーのメカニックとして就職して、最初に買ったのはマークIIクオリスでした」と坂林さん。
トヨタ・マークIIといえば、姉妹車のチェイサー、そしてクレスタとともにトヨタを代表するFRセダンとして、走り系が好きなクルマ好きにも人気が高い。しかし、クオリスは、マークIIがベースではなく、FFレイアウトのウィンダムを採用したパッケージングなのが特徴。
90系のマークIIが好きだったという坂林さんは、趣味のアウトドアに使うには、セダンよりもワゴンの広さが重要だったということで、はじめての愛車にマークⅡクオリスを選んだ。このときから、ちょっと人とは違う、でも実用性にはこだわっていたのだろう。
25才になると、ディーゼルエンジンで維持費が安く、より車内が広く快適性の高いミニバンのトヨタ・グランビアへ乗り換える。26才で結婚したあとは、子供も3人でき、お子さんが小さいうちは車中泊やキャンプなどのアウトドアで大活躍したそうだ。
グランビアの広い車内は、家族5人でもゆとりがあり、車中泊といった使い方にも最適だろう。
家族5人でアウトドアを楽しむには、坂林さんにとってグランビアはベストなクルマだったようで、32才のころにディーゼル車規制の影響もあって乗り換えを考えた際も、今度はガソリンエンジンのグランビアを選ぶほど。都合37才まで、およそ10年に渡ってグランビアに乗り続けることになったという。
そんな坂林さんがランクルの購入を考えはじめたのは、2台目のグランビアに乗っていたころだった。
「100系前期のランクルに乗っているお客さんがお店に入庫するようになって、メンテナンスをする機会が増えたんです。自分で触っているうち、いいクルマだなあと思うようになって、グランビアの次はランクルに乗りたいと考えはじめました」と、メカニックらしい発想がそこにあった。
そして、いまから5年前の37才のときに購入したのが、こちらの後期型の100系ランドクルーザーだ。
グランビアと比べると車内は少し狭く、収容人数や積載量が減ることにはなったが、お子さんも成長したことで家族旅行やキャンプを楽しむ機会も減った。ちなみに長男は現在高校一年生になったそうだ。
そういった生活環境の変化もあり、自分が自由に遊べるクルマとしてもランクルを購入したのはちょうどいいタイミングだったのだろう。
キャンプに行くにしても最近は、もっぱらソロでの行動が多いそうだ。そこで車内は、整備士の坂林さんがDIYで行ってきた、ひとりで快適に乗るためのカスタムが施されている。
ラゲージルームには、パイプとジョイントを組み合わせていろいろな形が作れる「イレクターパイプ」を駆使し、キャンプグッズの収納スペースを確保。さらに上段は、コンパネを使ってフロアを設置。板のままではなく、厚めのスポンジをクッションにすることで、寝心地をよくする工夫も施されている。
また、ツーリングエディションで採用されているアルカンターラ生地のシートに合わせて、クッションカバーもアルカンターラ調でリメイクするなど、坂林さんのこだわりが随所に感じられた。
また、グランビアに匹敵する積載性を手に入れるため、ヒッチキャリアとルーフキャリアを車外に装備。ルーフには、その場ですぐに屋根を確保できるARB製サイドオーニングも追加してある。
そして、購入したときから曇っていたヘッドライトは、さりげなく新品に交換してリフレッシュされていた。
「ここを換えるだけで、一気に新車らしい見た目になる」と、ディーラーのメカニックらしいリフレッシュメニューだ。確かに古い樹脂ヘッドライトのクルマは、どうしても黄ばみや曇りが発生するが、交換するだけで全塗装に匹敵するのでは?と言いたくなるほど見違えるようにクルマがシャキッとする。
そんな坂林さんのランクルのインパネには、なぜかポツンと置かれたスズキ・ジムニーのミニカーがあった。
「本当はランクルのミニカーを置きたいんですが、100系だけは人気がないせいか見当たらないんですよね…・」とオーナー目線での悲しい一言。決してほかの世代のランクルのミニカーを置かないあたりが、哀愁を感じつつも100系オーナーとしての坂林さんの愛情の深さをうかがえる部分なのかもしれない。
ランクルオーナーのなかでも100系オーナー同士でのグループがあり、もっと100系ランクルオーナーが増えることを願っているとも話してくれた坂林さん。
「100系の良い点は、とにかくサスペンションの設計による快適性の高さで、普段の乗り心地のよさに加え、釣りやキャンプなどの趣味に使う用途ならちょうどいい」と魅力を語ってくれた。
我々も、この記事を読んで共感してくれる100系オーナーが出てくれることはもちろん、新規に100系に乗りたいと思ってくれるクルマ好きが増えてくれることを願っています!
(文: 長谷川実路 / 撮影: 三木宏章)
[GAZOO編集部]
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