70スープラを“安心して乗れる”愛車に仕上げ、息子に引き継ぐ
令和の時代に『GRスープラ』として復活したことで、歴代モデルの人気もさらに高まっているスープラ。その祖先にあたるのが初代A70スープラであり、アメ車のようなボディサイズやどっしりした存在感は今でも斬新に映る。栃木県で開催された『クラシックカーヘリテイジカーミーティングTTCM2023』でも、1台のスープラが強い存在感を放っていた。
今回お話を伺った『コヤジ』さんは、20代の頃にタルガトップのA70スープラを所有しており、非常に思い入れが深かったものの家族環境の変化によってミニバンへの乗り換えを余儀なくされ、スープラを手放すことになったという。
普通なら、下取りや買取業者に託すところだが、愛着たっぷりのクルマが知らない誰かの手に渡るのがイヤで、わざわざ信頼できる車屋さんに頼んで“確実に”廃車(=スクラップ)となるよう処分してもらったというから驚かされる。
また、交際当時から結婚するまで乗り続けていたため、実はコヤジさんの奥様にとってもスープラは思い入れのある1台。それまでコルベットに憧れていたという奥様は、ロングノーズ&ショートデッキでアメリカンな雰囲気もある70スープラを気に入ってくれていたそうだ。
それほど思い入れが強かっただけに、息子さんが独り立ちした最近になって「やっぱりスープラにもう一度乗りたい…」と思うようになったのも自然の成り行き。家計の状況なども落ち着いた今こそ『リターン・スープラ』というわけだ。
探し始めて数年、たまたまネットで見つけたのが「状態はわからなかったけど『VVT-iエンジン』に載せ換えられているし、あくまでレストアベースということで割り切っていたので、細かい部分はまぁいいやと思って買ったんですよ」という1992年式のJZA70型スープラ。
ステアリングラックとパワステポンプは交換済みだけれど高圧ホースが暫定措置となっていたり、ワンオフ製作したと思われるフロントパイプの形状がイマイチだったりと気になるところは山積みで、前オーナーがコンディションを維持できなくなって手放したのだろうと感じる点も多かったという。
2020年末に購入してから実にエンジンまわりだけで11カ月も修復に時間がかかってしまい、やっと今年になって乗れる状態に仕上がったそうだ。
修理にあたってはスープラに詳しい後輩からの『あの車種のあれが使えますよ!』といった流用情報やアドバイスがとても役立ったそうで、クラッチマスターはA80型スープラ用、ブレーキは30系ソアラ、電動ファンはスズキ・アルト用、マフラーは20系ソアラ用といったぐあいだ。
さらに、コーションプレートはプラモデルなどに使う転写シールを活用してリフレッシュするなど、見た目にもこだわってリメイクを続けているという。
「まだまだセミレストアの途中で、とりあえず走れるようになった段階です。息子の高校の卒業式もこのスープラで送迎したんですが、同級生は『このクルマ、トヨタマークだけど車種なに?』って反応だったけれど、先生たちには『懐かしい〜』と大人気でした。私の持っている財産はこれくらいしかないので、ゆくゆくは息子に譲ってあげたいんです。今は就職して親元を離れていますが、BMWのZ3を所有してるくらいなのでクルマは好きみたいですね」
“まだまだ途中"と語るが、終着点はどこにあるのだろうか?
「ホイールはいずれチェンジしたいですね。当時っぽい雰囲気を出したいので本当は『レーシングスパルコ』とかがいいんだけど、見つからないので『ワーク・マイスター』3ピースあたりのリムがパリッとあるものが候補かな。エンジンルーム内は自分で塗ったんですけど、ボディもDIYで全塗装にチャレンジしたいです。色はトヨタ純正ブラックのままでね」
「エアロバンパーは当時人気だった『DO LUCK』製のものを入手できたし、ロールバーも手配済みです。ブレーキ系もフロントはフェラーリのF40と同じ型、リヤは20系セルシオの対向ブレーキキャリパーを、一度塗装を剥がして塗り直してオーバーホールしてから装着したいと思っています。排気系もフロントパイプからマフラーまでしっかりと作り込んでいきたいですね」
すでに部品を手に入れて、果てしない野望が広がっているものの、週末しか作業が進められないのでどうしても時間がかかってしまうのが悩みの種といったところのようだ。
昔のパーツや当時風に仕上げる“懐古主義"にはこだわらず、現代の技術やITも駆使しているというコヤジさん。インターネットで使えそうな(流用できそうな)パーツや情報を探すというのはよくある話だが「部品の写真をカメラで撮影して画像検索をかけると似たようなパーツが出てくるので、その中から使えそうなものを試してみることもあります」という方法には思わず『なるほど』と声が出てしまった。海外の部品サイトからも「どうせ安いから、失敗してもいいので取り寄せてみるか…」とアクションに移すという。
もちろん先人たちが報告している流用ワザや加工の情報をネットで調べることも欠かさず、できるだけ新しいパーツを使うことで“安心して乗れる”愛車を作り上げることを目標としているそうだ。それは、いずれこのスープラを息子さんに引き継いだときに、息子さんが困ることのないようにという親心でもある。
「趣味はクルマしかない」と言い切り、奥様もクルマ趣味に理解があるほうなので助かっているというコヤジさん。
「以前、息子に言われたことがあるんです。『好きなものに理由なんてないんだから、自由にすればいいんだよ』と。確かにそうだなと思って、ここまでやれたのかなと。まあ、いろんな部品をかき集めて和室に置いてるので、お客さん用だった部屋がすっかり“部品庫”と化していますけど(笑)」
自分はもちろん奥様にとっても思い入れのある70スープラを、生涯かけて仕上げて次の世代へと繋いでいく…なんともロマンのあるストーリーではないだろうか。
取材協力:クラシックカーヘリテイジカーミーティングTTCM2023
(⽂:TOKYO CIAO MEDIA / 撮影:岩島浩樹)
[GAZOO編集部]
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