キッカケは『歌ってみた』動画! Vtuber痛車に生まれ変わったタービン交換仕様のアルトワークス

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

『痛車』といえば、アニメやゲームなどのキャラクターでクルマを装飾して楽しむカスタムだというのは、すでに一般的に認知されていることだろう。実際に、個人の趣味レベルはもちろん、スーパーGTをはじめ全日本ラリー選手権や全日本ダートトライアル選手権などモータースポーツ業界でも痛車が活躍するようになって久しい。

そんな痛車も、好きなアニメ作品のロゴを貼ったりCDやぬいぐるみを車内に置いたりすることからはじまり、キャラクターのイラストや声優の写真、作中に登場するロボットを真似たカラーリングなどなど、対象も表現方法も幅広く楽しまれてきた歴史を持っている。

そして、ここで紹介するスズキアルトワークス(HA36S型)のボディ左右に大きくプリントされているイラストのもとになったキャラクターは、数年前からYoutube界を賑わせているバーチャルユーチューバー、つまり『Vtuber』なんだとか!
オーナーの津田英明さん(32才)が愛車のアルトワークスをいかにして痛車に仕上げるに至ったかを、これまで歩んできたカーライフとともにご紹介させていただこう。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

クルマ遊びに興味を持ったのは社会人になってから、と少し遅咲きな愛車遍歴をお持ちという津田さん。
それでも、日常の足としてクルマを選ぶ際には「なるべく人と被りたくない」というこだわりがあったそうで、高校卒業してすぐにクルマ屋さんに相談して手に入れたのはダイハツ・オプティ。なかでもスポーツモデルとしてラインナップされていた丸目4灯が特徴的なオプティビークスを選んだという。
「親からの金銭的な支援もあったので、普段乗って不自由なさそうなクルマのなかで、予算と見た目で選んだのがオプティでしたね。ただ、実際乗ってみると遅いしあまり快適さを感じなくて、乗っていた2年間は少し不満があったんです」

津田さんがオプティに不満を持ち始めたことは、その頃ちょうど津田さん自身のクルマに対する興味が増しはじめていたことも理由のひとつかもしれない。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

「会社に入ると、VIPカーに乗っているような先輩とかクルマ好きの人が周りにたくさんいて、段々と影響されていきました。乗り換えを決める理由になったのも、会社の同期が三菱・コルトのラリーアートを買ったことでした。『うらやましいなあ』と思って話を聞いたらローンをガッツリ組んで買ったということで、自分もローンを組めば欲しいクルマが買えるんだ!と思ってホンダのアコードユーロR(CL1型)を買いました」

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

そして、現在につながるような愛車のカスタムを始めたのもアコードに乗り始めたころからだった。
「パーツを交換したらクルマがどう変わるんだろう?と興味が出てきて、マフラー、エアクリーナー、エキマニ…というように、ライトチューンの範囲ですが順番に試していって違いを楽しむようになりました」

その後、7年間アコードでの愛車生活を楽しみ、28才になったころに軽自動車のスポーツモデルに興味を持ちはじめ、新たな候補車探しをスタートする。

「ホンダのS660か、スズキのアルトワークスで悩みました。どちらも良かったのですが、最終的には現金一括で買える値段だったアルトワークスのほうを選びました。アルトワークスは新車が発表されたときから気になっていて、それから3~4年経っていたのでパーツ選びも自由にできそうなところも良かったですね」

それが、現在の愛車であるHA36S型のスズキ・アルトワークスだ。ところが、2.2LでVTECも搭載されていたアコードユーロRと比べると、乗り始めたころのアルトワークスは走りの面での不満が大きかったという。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス
  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス
  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

「思ったよりも遅かったというのが第一印象でした。ECUの書き換えなどチューニングもやったんですが、それでも物足りず、最終的にはタービン交換することになりましたね」と津田さん。

選んだのは、アルトワークスのカスタムを得意とする福岡県のJaws山本自動車製のタービンキット。装着にあたっては知り合いのツテを通じ、石川県のチューニングショップTMワークスに作業を依頼し、R35GT-R用燃料ポンプを使用して燃料供給量を増やしたり、キャパシティを超える純正クラッチも強化品に交換したりと、パワーアップのための本格的なカスタムメニューが施されている。
また、それに合わせてオイルクーラーといった冷却系のカスタムも追加。冬季の過冷却を防ぐためのカバーは津田さんの自作とのことだ。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス
  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

アコード時代にはあまり手がけなかったというオーディオもカスタムしたりと、これまでとは変わった方面での楽しみ方をするようになっていった津田さんとアルトワークスのカーライフ。そして、2020年の夏、現在の痛車仕様に仕上げることとなった、決定的なキッカケが訪れることとなる。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

「それまではVtuberといったジャンルも、とくに詳しいわけではなかったんです。だけど、たまたま目に入った『歌ってみた』のコラボ動画を見たときに衝撃を受けて、ぜひともこのキャラとイラストで痛車を作りたい!という気持ちになりました」
そう津田さんが話すのが、Vtuberの『ときのそら』さんと『Kotone(天神子兎音)』さんがコラボしたアニメ『おジャ魔女ドレミ』の主題歌『おジャ魔女カーニバル!!』の歌ってみた動画だった。

Vtuberといえば、普段は2Dや3DのCGによるキャラクターを用いてYoutube配信を行っていることが一般的だが、2人のVtuberがコラボ出演されたこちらの動画は、おジャ魔女ドレミの世界観に合わせた2Dイラストをイラストレーターの『となりける』氏が担当した作品となっている。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス
  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

とくにそのイラストの2人の姿が気に入ったという津田さんは、兵庫県の痛車カスタムショップとして有名な痛車クエストファクトリーにて、実際の動画内と同じイラストをモチーフにしたデザインのラッピングを施工するに至ったという。

デザインは、キャラクターの個性に合わせたピンクと水色のグラフィックを左右に分かれるようにレイアウト。運転席側に『ときのそら』さん、助手席側に『天神子兎音』さんを配置し、リヤのトランクをセンターに2人が並び合うというコンセプトで制作されている。

  • 『がうる・ぐら』が描かれたスズキのアルトワークス

そこから1年後、ボンネットには津田さんのアルトワークスにとって3人目となるキャラクターの『がうる・ぐら』さんのグラフィックも追加する。これは、タービンキットを使用したJaws山本自動車の名前のもとになっているサメと、キャラのモチーフがぴったりだったという経緯が大きく関係しているそうだ。
こうして、アルトワークスに乗り始めてからミーティングへの参加機会も増し、SNSの仲間も多くなることでアルトワークスを続けて乗っていく楽しみも増えていった津田さん。痛車乗りとしての念願だった『DayDream』という痛車限定展示イベントへの出展が叶ったというのも喜びのひとつだが、なによりも嬉しかったのは、実際にモチーフとしたVtuberである『ときのそら』さん、『天神子兎音』さんの2人からツイッターでコメントをもらったことだという。

  • 『ときのそら』と『Kotone(天神子兎音)』が描かれたスズキのアルトワークス

「痛車に仕上げて3ヶ月くらい経ったあとに参加した、アップガレージ京都八幡店のイベントで撮影してもらって、それがアップされた姿にコメントをしてくれた2人のツイートは、記念として額に入れてとってあります」と津田さん。普通のアイドルなどと異なり、インターネット上のみがほぼ唯一の活動の場であるVtuberという存在が相手ならではの交流の仕方かもしれない。

津田さんのアルトワークスはファンアートを載せて走る愛車でありつつも、同時にVtuberが活動するインターネットと現実世界を結ぶ、彼女たちにとっての新たな表現の場としてある存在だといえるのかも知れない。

取材協力:大蔵海岸公園

(⽂: 長谷川実路/ 撮影: 稲田浩章)

[GAZOO編集部]

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