少し遠回りをして愛車にしたS2000。オーナーが購入を即決した理由とは

2年前にそれまで乗っていたマツダ・RX-8(SE3P)からホンダS2000に乗り換えを決意し、無限仕様の相棒を購入。一期一会の出会いを逃さず、即断即決で手に入れたという愛車とのカーライフについてお話を伺った。

1994年から2009年まで発売されたホンダ・S2000。ホンダを代表するFRピュアスポーツカーとしていまでも愛好家たちの間で高い人気を誇り、現在も中古車価格が高騰し続けているモデルだ。
多田さん(31才)は、そんなS2000に憧れを抱きつつも、1台目の愛車として選ぶリスクや価格面から一度は購入を見送ったという。しかし、その2年後に意を決してS2000の購入に踏み切ったという。彼がどのような気持ちでこのクルマの購入を決意したのか? そして実際に手に入れてから2年乗り続けた今は愛車にどんな思いを抱いているのか? じっくりとお話を伺った。

「もともと父親がホンダ好きで家のクルマはずっとホンダ車でした。子供の頃はそんな父親にクルマのイベントに連れていってもらったりしていたので、自然とクルマ好きになりましたね。でも当時一番憧れていたのはホンダ車でなくRX-7でした(笑)。だから4年前に初めて自分のクルマを買おうと思った時にはS2000かRX-7が欲しいと思ったんですが、どちらももうすでに値段が上がり始めていたことと、愛車としていきなり乗ることに不安もあったので、いろいろ考えた結果RX-8を選びました」

ちなみに、RX-8はご自身最初の1台ということもあってメーカー認定車で探していたところ、走行距離2万kmで100万円という個体を広告で見つけて京都の舞鶴まで行き「外装もめちゃくちゃ綺麗だし、カスタムされていた部分のメーカー純正パーツへの交換とかもやってくれるというので今しかないと思って」と即断即決したのだとか。

ちなみに多田さんがはじめての愛車としてRX-8を購入したのは2019年で26才の頃だが、彼が免許を取得したのは21才の頃で、愛車を手に入れるまでの5年間は通学や通勤には自転車で通える距離だったこともあり、クルマを使わない生活を送っていたという。
「免許を取得した学生の頃はちょうどクルマへの熱が低かった時期でした。免許をマニュアルで取ったのも、化学系のメーカーに就職が決まっていて、そういうところは工場が併設されていて軽トラに乗る機会があるだろうからという理由でした。スポーツカーに乗るからというわけではなかったけれど、今となれば取っておいてよかったなと(笑)」

  • ホンダ S2000 (AP1)

そうしてRX-8でのカーライフをそれなりに楽しんでいた多田さんだったが、2年前に転機が訪れる。
「久々にS2000の相場を見ていたら、ドーンと上がっていまして。RX-8を買った4年前は250万円くらいが平均だったと思います。でも2年前に見たときには300万円くらいが平均になっていて…これからもっと相場が上がりそうだし、会社のクルマ好きな方にロードスターに乗せてもらってオープンカーの楽しさを体感したこともあって、乗り換える決心をしました」

  • ホンダ S2000 (AP1)

そして、この無限仕様のS2000が売りに出ているのを発見した多田さんは「値段的にも買えない金額じゃないし、追加装着されているパーツや状態も良さそうだ」と名古屋まですぐ見に行って、RX-8の時と同様に他と比較することもなく即断即決で購入に踏み切ったという。

  • ホンダ S2000 (AP1)

「クルマが売りに出された週の週末にお店に行ったんですが、ほかにも問い合わせが結構きていたみたいで、僕が買えたのは『最初に来てくれたから』という感じでした。そうそう、RX-8はそのお店に下取りに出したのですが、1週間以内には売れていたので『スポーツカー市場って加熱しているんだな』と実感しましたね」
悩んでいたらタイミングを逃していたかもしれないことを考えると、多田さんの “これだ!”と思った時の行動力と決断力が奏功したのだなと改めて感じさせられる。

こうして多田さんが手に入れたS2000(AP1)は、無限パーツ満載の2000年モデルだ。
「おそらく最初のオーナーさんが購入時に無限製のマフラーやホイール、ダックテール、ブレーキ関係などを追加して買ったんじゃないかと。ボディラーは白が欲しかったんですけど、基本的にS2000の中古のほとんどがシルバーなんです。好きな白や青でも探してみたんですけど、同じ条件で比較すると50万円も相場が高いんですよ(苦笑)」

「エンジンルームのタワーバーやエアインテークパネルなども購入時から装着されていたものです。運転席のシートはもともと装着されていた純正の革シートがパリパリに割れてしまっていたので交換しようとしたんですが、純正シートはちょっと高かったことと僕の身長だと天井に頭を打ってしまうので、着座位置を低くしたいなと思ってローダウン用シートレールにレカロシートを装着しました。一度会社の女の人が座ったら、前が見えないって言っていました(笑)。あとはエアクリーナーを交換したり、ブッシュやマウント関係の補修部品をいくつか交換したりしました」

そして、多田さんがこだわったところが、オーディオやシフトノブだ。
「シフトノブはインテグラ タイプR純正品に交換しました。オーディオはもともと純正だったんですけど、故障して音がおかしくなってしまったので交換することにしました。純正スイッチを活かしてリモコンで音量を上げるように配線を繋いでもらったのがポイントですね。結構バランスがとれていて音がいいと褒めてもらえることは多いです。まあ、高速道路に乗るとあまり聞こえないですが(笑)」

このS2000を手に入れてから2年が経過するという多田さんは、通勤こそ自転車を使っているものの、クルマが生活必需品とも言える地域だけに普段乗りとして日々愛用しているという。
「無限パーツが装着された外装デザインも気に入っていますし、エンジンもよく回るので走っていて本当に楽しいです! ただ、オープンにして走っているのは2割くらいかもしれません。夜とかだったらすぐ開けて走ったりするんですけど、高速道路で開ける勇気はないですね。ちょっと音が凄すぎて無理かなって(苦笑)。カメラも好きなので、一眼レフはトランクに積んでいてよく出先で写真を撮ったりもしますよ。あとはセキュリティにも気を遣うようにしていて、ハンドルロックやタイヤロックを常備しています」

  • ホンダ S2000 (AP1)

S2000と共に過ごすカーライフを楽しんでいる多田さん。しかし2シーターのオープンカーという特性上、不便に感じることもあるのだとか。
「ドアポケットが存在しないので、ちょっと財布を置いたりすることができないんですよね。あとカップホルダーもあるにはあるんですが、500mlのペットボトルだとシフトノブに当たってしまうので助手席に放り投げていますよ(笑)」

多少のマイナス要素は感じつつも、会話をしている時の表情や口調からは、そんな部分を含めてこのクルマが大好きなのがとてもよく伝わってくる。
そしてそんな多田さんがこの日持参してくれたのがS2000の当時物のカタログ。実はこれ、大のホンダ好きの多田さんの父親が発売開始当初に手に入れたカタログなのだという。

「当時の父はS2000を買うか真剣に悩んでいたみたいで、当時は存在したホンダベルノ店でこのカタログを手に入れたそうです。ただ、S2000が出た時は僕がまだ8才で、流石にこれでファミリーカーは無理だと諦めたそうですよ(笑)。そんな父は今S660に乗っていてそれなりに満足しているみたいですが、このS2000をすごく気に入っていまして。たまにこれで実家に帰ると、1日保険に入って乗り回したりしていますね。あとは『もし転勤とかでクルマに乗れなくなったらここに持ってこい』と父が密かに自分のものにできるよう狙っているので、阻止しないといけないなって(笑)」
どうやら親子の血は争えないということだろう。

「もし今後乗ってみたいとしたらトヨタのGRカローラ、あとは新型タイプRも気になってはいます。まあ買えなさそうですし、このクルマを手放す予定もないですけどね(笑)。2ヶ月後には初の車検を控えています」
一期一会の出会いを逃すことなく即決購入したこのS2000を相棒に、充実した日々を送る多田さん。これからもぜひお父さんと仲良くホンダ車カーライフを楽しんでほしい。

取材協力:萬翠荘(愛媛県松山市1番町3丁目3-7)

(⽂:西本尚恵 / 撮影:西野キヨシ / 編集:GAZOO編集部)

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