「春のドライブシーズンが待ち遠しい!」ホンダ S2000が初めてのマニュアルスポーツ車
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ホンダ・S2000(AP2)
奥様を助手席に乗せて、軽快なサウンドを響かせながら虹の松原に現れたオープンスポーツカー。
オーナーのシュンさんは、18歳で自動車免許を取得後、大好きだった漫画『シティハンター』の主人公と同じ赤いボディに白いルーフというカラーリングのBMWミニ(F56型)を初めての愛車として購入したという。
オシャレなスタイルや、オートマチックながらも軽快な乗り味に当初は大いに満足していたが、購入から3年が過ぎようとした頃から次第にマニュアルミッションのスポーツ車への興味が湧き始めることに。
「もともと、スポーツカー好きだったんです。これは父親の影響ですね。僕が子供の頃だったのであまり記憶には残っていませんが、プレリュードやトルネオをあれこれイジって乗っていたようで、当時のクルマ雑誌に掲載されたという話も聞いたことがあります」
そんなシュンさんが新たな愛車の候補として挙げたのはホンダ・S2000、日産・フェアレディZ(Z32型)、トヨタ・スープラ(A70型)など昭和の終わりから平成初期にスポットライトを浴びていたクルマたち。クルマに詳しい方ならご存知の通り、この時代の国産スポーツカーはアメリカでも非常に人気が高く、徐々に『25年ルール(アメリカでは原則、右ハンドル車は輸入禁止だが、製造から25年が経過した車両はクラシックカー扱いとなることでこの規制から除外される)』の対象となっていることから、状態の良い車両は次々に海外へと流出。これに引っ張られる形で国内市場でも中古車相場の高騰が続いている。
「年式的にそのルールの瀬戸際にあるのが第一希望のS2000で、すでにジワジワと価格が上がり始めていたので『ホンキで買うなら今しかない!!』と思い、ネットで物件を探す日々が続きました。すると数週間後に新潟県のスポーツカー販売店で理想に近い車両を発見したんです。遠方なので実車を見に行くのは困難で、ネット内の情報だけが頼りということで正直なところ不安もありましたが、お店側と電話やメールでのやり取りを何度か行い、購入を決断しました」
それから数日後、九州まで陸送されてきた車両は、写真を見ても分かる通り走行15万kmオーバーの個体とは思えないほど素晴らしいコンディション。車体周りはもちろん、レッドのレザーシートも乗り降りによる擦れや褪色はほとんど無く、前オーナーの保管環境が良かったためか各部の経年劣化も最小限に留められていた。
こうして取材会の2ヶ月ほど前、2023年10月に納車されたS2000。ちなみに、このクルマの購入をシュンさん以上に楽しみにしていたのがお父様だったという。
「父もS2000が大好きなんです。ネットで探している時から『これはいいゾ!』ってノリノリで勧めてくるし、納車された時も僕より先に運転席に乗り込んで喜んでいました。いえ、全然イヤな気持ちなんて無かったですヨ。これまで20年、育てくれたことに本当に感謝していますし、逆に喜んでもらえて嬉しかったです。今は仕事上、ハイエースに乗っていますが、何やら遊びグルマとしてCR-Zを買おうか悩んでいるみたいです」
息子からこんなに素敵な愛車を見せられたら、お父様の仕舞い込んでいたクルマ好きな気持ちに火がついてしまうのも当然だろう。
1999年に登場した“リアルオープンスポーツカー”S2000は、2003年と2005年のマイナーチェンジを境目にそれぞれ前期、中期、後期と大別されるが、シュンさんの車両は後期に分類される2005年式のAP2型。
中期型から変更となったエクステリアは、前期型と比較するとヘッドライトやテールランプの意匠が異なっているのが特徴だ。
そして後期型はなんといっても排気量がそれまでの2Lから2.2Lに拡大されたF22Cエンジンを搭載することで、よりトルクフルな特性へと進化しているのがポイント。さらにギヤ比の変更で実用域の使い勝手が向上、アクセル開度を電気信号で伝える『ドライブ・バイ・ワイヤ』方式によってステアリングフィールもリニアに生まれ変わっている。
そんなS2000を手に入れたシュンさんは、初めてのマニュアル車ということで最初こそ操作にギクシャクしたものの、すぐに自在に扱えるようになったとか。それもそのはず、シュンさんはレーシングカートの経験があり、佐賀県のカートコースで行われたソディ社製マシンによるワンメイクレースでは、年間シリーズ2位。大会で愛知県のコースにも遠征したというほどの腕前の持ち主なのだ。とはいえ、このクルマでサーキットを走るつもりは無く、高速道路や郊外のワインディングなど普段乗りの中でシャープなハンドリングや独特のVTECサウンドを存分に楽しんでいるという。
「ルーフはまだ数回しか開けたことがないけど、やっぱりオープンカーって気持ち良いですね!レッド&ブラックで統一された内装色もオープンにした時に映えるし、昔のF1みたいなデジタルメーターもこのクルマの雰囲気にマッチしていると思います」
カスタマイズやモディファイに関してはまだ球体型のシフトレバーを装着した程度で、購入時から付いていた少々スポーティ過ぎるデザインの社外ステアリングやアルミホイールの交換(もしくは小キズの修復)、S2000タイプS用純正リアウイングの装着といった、ノーマル+αの範囲内で自分らしい個性を少しずつ加えて行く予定とのこと。
ホンダとしてはS800以来となるFRレイアウトがもたらす卓越したドライバビリティと、オープンならではの爽快さが美点とされているS2000だが、タイトなキャビンや最小限のトランクスペースなど実用面においてはなかなかキビシイところがあるのも事実。S2000に限らず、2シーターのスポーツカー愛好家の中には別にもう1台、日常の“アシ"となる軽自動車やコンパクトカーを保有しているパターンは珍しくないが、2年前に結婚もしているシュンさんのご自宅にあるのはこのクルマのみ。まったく余計なお世話ではあるが、不便さを感じたことはないのだろうか?
「確かに、乗り心地はフツーのクルマと比べればハードだし、会社の仲間たちと遊びに出掛ける時に一人しか乗せられないのは不便ですが、基本は僕たち二人だから特に問題はありません。ずっと欲しかったクルマですし、オープンにしても、ルーフを閉じてもバランスが崩れないスタイルも本当に気に入ってます。エアコンもしっかり効くし、燃費も意外と良くて、リッター10キロくらいは走ってくれるんですヨ」
これについては取材に同席頂いた奥様も同意見で「型が旧いオープンカーを買うと聞いて最初は驚きましたが、本人が好きならまァ、良いんじゃないですか(笑)」と、優しい眼差しでシュンさんを見守っていた。
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ホンダ・S2000(AP2)
すでに納車から2ヶ月あまりが経過しているものの、仕事が多忙のため2人で長距離ドライブに出掛けたことはまだ無く、これから先、気候が暖かくなった時期には阿蘇方面まで足を伸ばしてみたいと語るシュンさん。子供の頃からの憧れだったというスポーツカーライフは、まだ始まったばかりだ。
取材協力:虹の松原森林浴の森公園(佐賀県唐津市浜玉町浜崎)
(⽂: 高橋陽介 撮影: 西野キヨシ)
[GAZOO編集部]
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