「クルマは生きるための原動力」、GT-Rとの出会いは幼少期のミニカー
これまで数々の愛車を所有してきたというオーナーが、GT-R(R35)を購入しようと思ったキッカケは、長男にせがまれて買ったハンバーガーのオマケ、 好きなクルマに乗るために頑張れたし、嫌なことがあった日も笑えたというカーライフをお伝えします。
みなさんが現在の愛車と出会ったキッカケはどんなだろうか?
本やインターネットで見かけたり、身近な誰かが乗っていたり、クルマ屋さんで一目惚れしたり…きっとさまざまな出会いがあり、その瞬間は忘れられない思い出のひとつとなっているのではないだろうか?
『ほっちゃん』さんとGT-Rとの出会いは、近所のマクドナルドだったという。
学生たちの取り留めのない声の束、子供に「ポテトの塩をこぼさないで!」と注意しているお母さん、休日出勤なのかスーツでスマホの画面を見ながら黙々とビッグマックを食べているサラリーマン。そんなバラエティに富んだ人達が共存する騒がしい店内で、ほっちゃんさんはGT-Rに一目惚れしてしまったという。
混乱しないように一応書いておくが、マクドナルドはクルマ屋さんではなく、お財布に優しい値段で、美味しいハンバーガーをすぐに提供してくれる庶民の味方のファーストフード店だ。
「息子が、マクドナルドでハッピーセットを注文したいとせがんだんです」
注文したのは、子供向けメニューのハッピーセット。その内容は、チーズバーガー、ジュース、枝豆とコーンのサラダ…だけではない。おそらく、大半の子供たちがこのメニューを頼む理由は、それについてくる“オモチャ"が欲しいからだ。
いろんなキャラクターやメーカーとコラボをして、ハッピーセットを頼まなければもらえないオモチャを目当てに、子供達はチーズバーガーを注文するのだ。ほっちゃんさんの息子さんも例外ではなく、セットについてくるトミカ目当てにチーズバーガーを頬張った。そして手に入れたのが『2017年日産GT-R』だったというわけだ。
「あれ、顔が変わった?バンパーにダクトが付いてるじゃん!?」
思い込みとは怖いもので、ほっちゃんさんの中でGT-R(R35)のイメージは、フロントフェイスがツルリとしていて愛嬌のある中期型で止まっていたそうなのだ。それがいつの間にか、スタイリッシュでカッコいい顔に進化を遂げていたことに、ミニカーを見て気付かされ、驚きを隠せなかったという。
スープラ、NSX、インプレッサ、ランエボ、ハチロク、ストーリアX4、ブーンX4、マスタングGTなど、40数台もの愛車を乗り継ぎ、その当時の流行を取り入れながらカスタムやドレスアップを楽しんできたというクルマ好きのほっちゃんさんがそれを知らなかった理由は、車歴の中に1台も日産車がないほど敬遠していたからだそうだ。何故そうなってしまったのかというと、これまたミニカーが原因である。
時を遡ること20数年、小学生のほっちゃんさんは『来店者全員にXXXのミニカープレゼント!』というチラシを見て、ミニバンの購入を検討していたお父様と一緒にディーラーへと向かったそうだ。ところが、ミニカーをもらえるのは購入した方のみだと断られてしまい、それがショックで何となく嫌いになってしまったのだと笑いながら話してくれた。
この一連の流れを見ると、セールスマンはミニカーがいかに重要なアイテムであるかを知らなければいけないだろう。
脱線してしまった話題をもとに戻すと、ミニカーをキッカケにほっちゃんさんが手に入れたのは2018年式の日産・GT-R Track edition engineered by NISMOだ。
GT-Rの好きなところは、もちろんフロントフェイスの男らしい面持ち、そして丸型4灯のテールランプだという。“GT-Rといえば”というトレードマークだと満足そうに話してくれた。個性的な形は夜になると赤く光り、さらにそれが強調されるという。
340km/hまで表示するスピードメーターも、このクルマがいかに速く走れるかを見せつけられている感じがして、運転席に座るたびにワクワクしてくるのだそうだ。
いっぽうで、その斜め左下のシフトノブは、あまり見ないようにしているという。ノブの上にボタンがついて、いかにもオートマという仕様があまり好きになれないらしい。
「仕事のクルマや家族のクルマ以外は、マニュアルミッションの設定があるクルマに関しては必ずマニュアルを選ぶようにしていたので、唯一そこだけが気になるポイントですね」
なぜここまでマニュアル車であることにこだわるのかというと、父親から譲り受けた初めての愛車MR-Sで、クルマを操ることの楽しさを覚えてしまったからだという。
「青春時代はマニュアル車でサーキットを走りまくっていました。“走る"ではなく、とにかく朝から晩まで“走りまくる"っていう感じでした(笑)」
当時、頭文字Dという漫画にかなり影響を受けていたというほっちゃんさんは、自分の運転スキルでターボ車より良いタイムをNA車で出すというストーリーに憧れていたのだとか。自動車整備士になるための学校に通っていたほっちゃんさんは“ノンターボだけど速い"という設定に憧れる友達とともに、ターボ車を追い抜こうと自身の手で足まわりのセッティングを変えてみるなどしていたのだという。
「クルマの性能で負けるというのが嫌だったんですよ。もしそれで自分の方が速かったらカッコいいじゃないですか」
ところが、仲の良い友達がおなじNA車のインテグラ タイプRでほっちゃんさんを軽々と抜いていくのだそうだ。悔しくて特訓していたが、一緒に走るので練習量もおなじだから友達の腕も上達し、その差はまったく縮まらなかったと笑いながら話してくれた。
「運転のスキルじゃ追いつきそうにないから、チューンして差を埋めようとしたんですよ。でも、おなじ学校に行っているからチューンアップの知識や技術も一緒だし、おなじようにバイトをしているからパーツを買うタイミングも同時期くらいなんです。『マフラー変えたんだ!』って言ったら『奇遇だね俺も!』みたいな感じで、永遠に追いつかないんですよね〜(笑)」
その後、転機があって乗り換えたNSXでも友人のR33型GT-Rにあっさりと抜かれてしまい、やっぱり次はターボ車にしようと心に決めてスープラを購入したそうだ。
ノンターボ愛好会の仲間たちも、それを見て「ターボってすごいね」と深く頷き、ターボ車への乗り換え談義で軽く3時間は盛り上がったという。
「こうやって改めて話していて思いますが、本当に青春の1ページですよね。クルマのおかげで、人生において何事にも変え難い素晴らしい時間を過ごすことができました」
エアコン&パワーステアリング無しでロールバーがガチガチに組んであるストーリア X4の乗り心地が悪かったり、納車したばかりのピカピカのジムニーでオフロードコースに行ってボディに傷が付きまくったりと、所有してきたクルマの台数だけ思い出があるという。
「クルマが好きという気持ちは、誰にも負けないんじゃないかと思っているんです。幼稚園の頃は毎日クルマの絵を描いて、4才の時はスポーツカーの名前が全部分かったし、小学生のころはエンジンの型式が言えるようになったくらいクルマ漬けの毎日でした。そんなに夢中になれるものを見つけたから、嫌なことがあった日も笑えた。いつも『あのクルマを買おう』と頑張れたんです。自分の人生は、クルマがなくちゃダメだったかもしれないと本当に思います」
夢中になれることに出会うのは運命かもしれないが、そのために頑張るのは本人の努力だ。ほっちゃんは、今日もどこかの道を走っていく。大好きなクルマに乗って、大好きな家族と、どんどん進んでいくのだ。
- 取材協力:
- 『神栖1000人画廊』(茨城県神栖市南浜)
『日川浜海岸』(茨城県神栖市日川)
かみすフィルムコミッション
(⽂: 矢田部明子 撮影:平野 陽 編集:GAZOO編集部)
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