妻の後押しで購入したR35が運んでくれた新たな出会い

  • GAZOO愛車取材会の会場であるジーライオンミュージアムで取材した日産・GT-R(R35型)

    日産・GT-R(R35型)



「小さい頃から親に連れられてディーラーに行くのが好きでした」と、クルマ好きに育ったキッカケを語ってくれた『HIRO』さん。神奈川県の出身だが、仕事の関係で大阪府へと移り、現在は結婚を機に奈良県に住まわれている。

その愛車歴は実に華麗で、Z31型のフェアレディZに始まり、HR31型スカイライン、FD3S型RX-7、BNR32型スカイラインGT-Rを2台、間にBH5型レガシィツーリングワゴンを挟んで、GDB型インプレッサ、BNR34型スカイラインGT-R VスペックIIと、ほとんどがスポーツカーで占められている。所有することはもとより、運転することも大好きという想いが伝わってくるラインアップだ。

そして、現在所有しているのが、R35型の日産GT-R。車歴から考えると納得の“人選”ならぬ『車選』といった印象だが、さすがにクルマが超弩級のハイパフォーマンスマシンだけあって、購入前には躊躇もあったそうだ。その経緯を伺うと、話はひとつ前に所有していたBNR34型のスカイラインGT-Rを購入した時へと遡った。

「R34 GT-Rを買った時もそうだったんですけど『本当に欲しいクルマを買いなさい!』って発破をかけてくれるのは、いつも妻なんです(笑)。妻とはR32に乗っていた頃から付き合っていて、私のクルマ趣味も当時からよく分かってくれていたんですよね。結婚が決まった頃に一番欲しかったのがR34だったんですけど、さすがにファミリーカーとしてはどうかな? と思っていたんですよ」

それでも奥さんの力強い言葉が後押しとなり「後悔のないクルマ選びをしよう」と決心したHIROさん。念願だったBNR34型スカイラインGT-RのVスペックIIを購入し、それから15年ほどの歳月を供にしてきた。

「R34は本当に気に入って、ほぼノーマルのままずっと乗っていました。ベイサイドブルーという色で、やっぱりGT-Rには青が似合うな、と思うきっかけにもなりました。ただ、15年の歳月が経つとあちこち手当てしなければならないところが増えてきてしまって…。足まわりのブッシュ類を総入れ替えしないとダメなところまで来ると、あれやこれやで200万円近い見積もりになったんですよね」

ここから先、R34 GT-Rに乗り続けるには、しっかりと手を入れなければならない段階まで突入したことで、今後をどうすべきか熟慮していたHIROさん。そんな時、耳に入ってきたのが、R35型GT-Rの生産が終了し、もう新車では購入できなくなるかもしれないといった噂だった。
スカイラインという名前こそ付かないものの、GT-Rの正統な後継車であり、現時点においてその最終進化形でもあるR35のことは、HIROさんも発売当初から気になっていたそうだ。

「マニュアルミッションのクルマに乗り続けたいという気持ちはあったんですけど、それより何よりR35 GT-Rの速さが異次元であることも分かっていましたから、一度は乗ってみたいという気持ちが高まっていったんです」

そう語るHIROさんの心情に、R32とR34のGT-Rを乗り継いできたからこそ『最新のGT-Rがどんなものか知りたい』という、知的欲求と好奇心が入り混じっていたことは想像に難くない。R34との別れは切ないが、生きているうちにR35にも乗ってみたい! という、クルマ好きとしての本能がHIROさんを駆り立てた。

「そうした流れで妻にも相談することにしたんですけど、答えはやっぱり『一番欲しいと思うクルマを買ったらいいじゃない』という感じでした(笑)。本当に感謝しかないです。それでR35 GT-Rの購入に本腰を入れ始めたんですけど、ちょうどその時、運よく大阪の専門店で新車に近い中古車に出会ったんです。内装と外装の仕様も希望通りだったので、これだ! と購入することにしました」

そういった経緯で購入したHIROさんのR35 GT-Rは、内装のカラーが選択可能なプレミアムエディションというグレード。外装色がR34で大好きだったベイサイドブルーにオマージュを捧げた新色の“ワンガンブルー”である一方、内装はゴージャスなアンバーレッドという組み合わせで、ちょっと欧州車を思わせるような大人びた雰囲気に、HIROさんも大満足だ。

「乗るとやっぱり走りは別物で、すべてが高次元でした。自分にはもったいないくらいだと思いますけど、機会があればサーキットも走ってみたいですね。あと、乗り換えたと同時にこのクルマのインスタアカウントを開設して、自分でもよく写真を撮るようになりました。海外の方からの反応も多いのが嬉しいですね(笑)。それがキッカケでR35に乗っている仲間との繋がりもできて、最近はR35オンリーのツーリングにも参加するようになりました」

そんな風にカーライフの変化も楽しんでいるHIROさんだが、ちょっと困るのがノーマルのまま乗ろうと思っていたのに、仲間と集まると個性が埋没してしまうことであった。
「ワンガンブルーも割と珍しい色のはずなんですけど、R35好きだけで集まるとけっこういるんですよね(笑)」と、苦笑いを浮かべる。

そこで、純正プラスアルファのさり気ないカッコ良さを追求することにしたHIROさん。まずはホイールを、R35の中でもスペシャルな存在であるGT-R NISMOの純正ホイールに交換。さらにブリッツのカーボンリップスポイラーを追加した他、フロントグリルにカーボンシートを貼り付けるドレスアップも施工されている。

エンジンは購入前からNISMOのスポーツリセッティングが施されていたそうだが、ちょっとした変化も楽しもうと、GT-R NISMOのエンジンヘッドカバーを取り付けた。今後も純正の延長線上にあるカスタマイズを、ちょっとずつ楽しめればと意気込む。

そして、奈良県に住んでいるHIROさんならではの工夫が、地元のご当地ナンバーである『飛鳥ナンバー』を付けているところだ。プレートには朱雀が力強く羽ばたく様子が描かれ、オレンジとワンガンブルーのコントラストはいやが応でも良く目立つ。イベントなどに参加すると『これはなんですか?』と聞かれることがあまりに多いため、現在はオリジナルの説明書を製作し、ダッシュボードの上に置くようにしているそうだ。

「そういった感じで、人との交流が生まれたのも良かったことのひとつですね。いつも集まるR35のミーティングには、20代から60代まで幅広い年齢層の仲間がいて、毎回のように刺激を受けています。こんなところも、R35に乗ったからこそ得られた一番の財産かもしれません」

様々な車歴を経て、ついには国産最高峰のハイパフォーマンスマシンのオーナーとなったHIROさん。GT-Rの次なるモデルが登場するのか否か、それはまだ誰にも分からないが、R32やR34がそうだったように、R35もいつしか歴史的な名車として振り返られる時が来るだろう。ぜひHIROさんにはそんな時代を目指しながら、これからもR35ライフを楽しく過ごしていっていただきたい。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)

[GAZOO編集部]

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