サーキットも走るファミリーカー、レガシィツーリングワゴンが人生の道標
「興味のない人からしたら、クルマは新しい方が高性能で、わざわざ数十年前のクルマを買ってきてお金をかけて乗るような行為など馬鹿げていると思われるでしょう。でも…」
2000年式のスバル・レガシィツーリングワゴン(BH5)を愛車として所有するオガワさんにとって、クルマは単に性能や価格で選ぶだけの道具ではないという。
そもそも両親など周りにクルマ好きはいない環境で育ったというオガワさんがクルマに関心を持つようになったのは、幼稚園のころから一緒に育ってきた親友の影響だったという。
小学校低学年の頃にその友人がグランツーリスモや頭文字Dにハマったのをキッカケに、ほぼ洗脳されるようにしてクルマ好きになっていったというオガワさん。授業が終わるとゲームセンターでレースゲームに熱中する日々を過ごし、中学生の頃にはすでに自動車に関わる仕事に就くことを見据えて香川高等専門学校の機械科に進学。
「香川高専ではソーラーカーやエコカーを製作したり競技に参加したりする『次世代自動車研究部』に入って最終的には副部長になり、就職後は設計職を目指すようになっていきました」
高専でも、エンジン設計などの授業を担当してくれたラリーレプリカGC8乗りの恩師をはじめ、クルマ好きの同級生や先輩後輩など、クルマという共通の話題を通じて多くの出会いに恵まれ、現在でもお互いの愛車を並べて写真を撮るなど交流が続いているそうだ。
そんなオガワさんが19才でクルマの免許を取得し、はじめての愛車として手に入れたのはスズキ・カプチーノ。
「その頃はあまりお金もなかったので維持費の安いカプチーノを買ったんですけど、これがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。ノーマルの程度の良い車体を購入して、バイトで維持費を捻出しながら外装も自分好みにして乗っていました。ところが2年くらい乗った後、通勤中の貰い事故で廃車になってしまったんです」
当時、すでに交際中だった現在の奥様との結婚を視野に入れていたこともあり「これを機に次は落ち着いたマニュアル車を」とトヨタ・アルテッツァを購入したものの、いまいちフィーリングが合わず結局1年半くらいで手放してしまったという。
「その頃は最初に勤めていた機械設計会社を辞めて、興味のあった中古車屋で営業兼整備見習いの仕事をしていた時期だったのですが、たまたま下取りで入ってきたタントカスタムに乗り換えました。これがこれまでの人生で唯一のAT車でしたね。でも、その後にまた別の機械設計会社に転職して通勤距離が伸びたら左手と左足が寂しくなって…(笑)」と、タントカスタムを奥様に譲って、日産・マーチ12Sを購入したそうだ。
「マーチはライトチューンされていて軽快に動くし燃費も良かったのでかなり楽しかったんですけど、妻の誕生日祝いに往復800kmの遠出をした時に『家族でもっと広々と乗れて長距離も快適かつ安全に移動できるクルマが欲しい』と感じたんです。そして、どうせならワインディングやサーキットにも行こうと思ったら行けるような楽しいクルマがいいなと。そんな時に見つけたのがこのクルマでした」
こうして『ファミリーカー兼サーキット走行なども楽しめる趣味グルマ』という条件を満たす1台として手に入れたのが、3代目レガシィツーリングワゴン(BH5)のGT-B tune。280psを発揮するツインターボエンジンと5速MTの組み合わせに加え、専用サスペンションやスポーティな内外装があたえられたグレードだ。といっても、はじめから車種やグレードなどにこだわって探していたわけではなく、たまたまインターネットネットオークションで発見したのが、このクルマだったのだとか。
「確か13万円くらいだったんですが、淡路島で開業医を営む方がリフト付きガレージという最高の環境で保管していた車両で程度が抜群だったうえに、3人乗りのバン登録に変更してあったので維持費も安いという理想の1台でした。もちろん即決で購入しましたね」
納車1ヶ月後にまたしても追突事故に遭い、しばらく乗れない期間があったものの、修理ついでにエアロを交換したのを皮切りに、少しずつカスタムも施してきたという。
「まず前後バンパーとサイドステップ、それにホイールとタイヤを交換しました。エアロはぜんぶバラバラのメーカーで、それぞれ形を見てカッコいいと思ったものを選びました。ウイングはレガシィ用を買ったけれどモデルが違ったのか全然合わなくて、加工してなんとか取り付けました。ボンネットもネットオークションで割れがひどくて安かったものを購入して、自分で修理して装着しました」
車内を見ると目に飛び込んでくるのが、インパクトのあるピンク色のフルバケットシート。
「コレは一番最初のカプチーノに乗っていた時にクルマ屋さんからいただいて、それからずっと使っとるんですけど、身体にピッタリくる感じなんですよ。あとはハンドルを変えたり、子供が汚しても掃除しやすいようにシートカバーを装着したりしていますね」
整備経験もあるオガワさんは、メンテナンスや作業などもできるところは自分で行うようにしているという。そうやって自分の手で愛車を快調に保ち、より自分好みにカスタムしていくたびに愛着が増しているに違いない。
こうしてオガワさんがこのレガシィツーリングワゴンに乗り始めて2年半。家族を連れてのドライブや旅行、徳島県にある阿讃サーキットでのスポーツ走行などに加え、昨年2月から『四国レガシィ』という集まりに参加するようになったことで、さらに楽しい日々を送れるようになったという。
「四国在住のレガシィオーナーの集まりなんですが、レガシィに一生乗ると宣言しているオジサマ方や、すでに10年近く乗っているという女性オーナー、レガシィB4とAE111トレノを所有する若者、免許取り立ての女子など、ものすごく濃いメンバーに囲まれて楽しい日々を過ごしています。そうそう、そのうちのひとりが自分の働いている工場で作業や塗装などもやってくれたりするので、すごく助かっているんですよ!」
仲間たちと一緒にオフ会をしたり、集まって一緒に作業をしたりと、レガシィツーリングワゴンでのカーライフをよりいっそう充実させてくれる存在となっているそうだ。
そして、この日の撮影に同行してくれていた奥さまにも、このレガシィの印象とオガワさんのクルマ趣味についてどう感じているのかを伺ってみると「正直、音がうるさくてガタガタするのであまり快適ではないです(苦笑)。でも、クルマのことをよく知っているところは頼りになるし安心できますね」との回答。奥さまの本音を聞いて「ふたりとも後ろでぐっすり寝ていてくれるから、てっきり快適なのかと思っていたんだけどなぁ」と苦笑いするオガワさんの表情が印象的だった。
ちなみに、そんな奥様の現在の愛車はルノーカングー。
「このカングーもレガシィ同様に4ナンバー登録に変更したり、車中泊をしてみたり、昨年は初めてカングージャンボリーに参戦したりと、徐々に思い入れの深い相棒になっています」
「生活の変化や金銭的な事情などでレガシィを手放すときはいずれやってくると思うので簡単に『一生乗る』とは言えませんが、でもその時が来るまでは精一杯愛情を込めて接してあげられたらと思います。それにこういう趣味を続けていけるのも、理解がある妻はもちろん、今まで出会って付き合ってくれた方々のおかげなので、今後も周りの方々や家族を大切に、この趣味を続けていきたいですね」
幼稚園からの親友、学生時代の友人たち、そしてレガシィツーリングワゴンを通じて知り合った尊敬できる仲間たち…オガワさんにとって、クルマとは、こうしたかけがえのない人々との出会いや繋がりをもたらしてくれる大切な存在なのだ。
取材協力:高知工科大学 香美キャンパス(高知県香美市土佐山田町宮ノ口185)
(⽂:西本尚恵 / 撮影:平野 陽 / 編集:GAZOO編集部)
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