「昔乗っていた愛車クラウンを買い戻した」中古車ショップ店長の愛車遍歴

2022年にこれまでのイメージを一新する大規模なモデルチェンジをおこなったトヨタクラウン。長い歴史において数々のオーナーの元で思い出を育んできた車種であり、沖縄県にある中古車ショップの代表をつとめる平田裕貴さん(32才)にとっても、クラウンという存在はこれまでの愛車遍歴の中で最も思い入れのある車種だという。
撮影会にご来場いただいたトヨタ・クラウンハイブリッド アスリートG(AWS210)とともに、そのエピソードを伺った。

「クルマ好きになったのは、たぶん自分のまわりの人たちの影響が大きかったですね」と振り返る平田さん。沖縄で生まれ育ち、仲の良い友人同士で過ごしてきた中で、高校生になる頃には自然にオートバイから乗り物遊びをはじめるようになっていったという。
「16才で免許を取って最初に買ったのはスズキのアドレスV125というスクーターでした。そこからすぐにゴキって呼ばれていたスズキのGSX250というバイクに乗り換えました」

「親戚が中古車屋をやっていて、自分が小さい頃から工場に行って遊ばせてもらうことがあったんです。クルマを買ってからも、壊れたときやイジるときにお世話になって、たくさん迷惑もかけたなぁと(苦笑)」
そういった経緯もあり、バイクを自分でカスタムすることも少しずつ覚え、高校を卒業するころには『いずれ自分でも中古車屋をやりたい』と自身の進路も固まっていたそうだ。
「販売がメインなのは前提として、自社で工場を持って整備できることが理想だったから、まずは自分で整備ができるようになろうと、高校を出て専門学校に進学しました」
高校時代にも乗り物好きな友人は多かったというが、沖縄県内の整備専門学校ではさらにそんな友人たちが増え、平田さんの初めてのクルマ選びにも強く影響を与えたという。

「バイクに乗っていたころからドリフトに憧れていたんです。だから、最初に買うクルマもドリフトができるFRのクルマがいいなと考えていたんですが、あまり自分の好きなイメージのFRのベース車が見つからなかったんです。当時の専門学校の友人たちのあいではラグジュアリー系なクルマが流行っていたので、自分もドリフトはいったん諦めてFF車のセフィーロを買いました」
日産・セフィーロの最終型となったA33型セフィーロ(海外名:マキシマ)は、欧州車らしさを感じるデザインに加え、海外市場を見据えたロングボディ化が特徴的なモデル。ビッグセダンと呼ぶにふさわしいスタイルに、ラグジュアリーさを求める平田さんは大いに興味を惹かれたという。

2年にわたる専門学校でのカーライフをセフィーロと一緒に過ごした平田さん。
卒業後は中古車屋になる将来を見据えて整備工場に就職し、整備技術を磨きながら独立資金を貯める日々を送ることとなる。
そして、2台目のクルマに乗り換えたのは整備士として就職するタイミングとちょうど同じ時期だったという。

「セフィーロを買った頃にまわりで流行っていたラグジュアリー系がひと段落して、今度はみんな100系のチェイサーやマークIIに乗り始めたんです。それで、自分もターボ車に乗りたいなと思いつつ、ちょっと被らないようにしようと、値段も60万円くらいで手頃だったクラウンに目をつけました」
そうして2.5L・直列6気筒の1JZ-GTEエンジンに惹かれ170系のトヨタ・クラウンを購入した平田さん。かねてから興味のあったドリフトにチャレンジしてみたいという気持ちもあり、オートマだった車体に5速マニュアルミッションを移植するカスタムなども行ったそうだ。

「当時、本土(本州)ではマニュアル化したクラウンは珍しくなかったんですが、沖縄では見かけたことがなかったんです。だからマニュアルミッションに載せ替えて公認を取れば目立てるな、という気持ちもありました(笑)」
完成したクラウンには2年ほど乗り、念願だったドリフトをする機会もあったという。

「今度はみんなが1世代新しいクラウンなどV型エンジンのクルマに乗り出したんです。それで自分もまた買い換えようという雰囲気になって、3.5Lの2GRエンジンを搭載したIS350を買って乗り始めました」
平田さんはレクサス・IS350を購入後、イベントなどに展示するための目立つカスタムにもそれまで以上に力を入れるようになったというが、そこには平田さん自身がクルマづくりを見て衝撃を受けたというプロショップの存在があったという。
「当時、専門学校時代の友人がそこで働いていて知り合ったお店なんですが、IS350やスカイラインクーペにオーバーフェンダーを付けていたり、沖縄で20クラウンの210フェイス化を流行らせたりと、凄かったんです」
そうして仕上げたIS350だが、その所有期間はさほど長くなかった。というのも、かつての愛車だったマニュアル載せ換えの170系クラウンが平田さんの知り合いの中古車屋に下取りで入庫したという連絡を受け、縁を感じたこともあって買い戻すことを決意したのだという。

さらに、その時期に念願の独立も果たし、沖縄県糸満市に中古車ショップ『INB FLEX』をオープンすることとなった。
「自分のお店ができたのが27才のころですね。まずお店を知ってもらおうと、買い戻したクラウンをイベントに出展できるようなデモカーとして仕上げることを決めました」と平田さん。エアロパーツはシンプルながらも、鉄板でワンオフオーバーフェンダーを作り大経ホイールを装着。最終的には足まわりや駆動系、タービン交換などまで実施したという。
いちど自身の手を離れてからも再び愛車として返り咲き、独立後の苦労をともにしたこのクラウンは、平田さんにとってまさに思い出のクルマだと振り返ってくれた。

そして「いまは時代の流れもあって、そのときほど思い切ったカスタムはしなくなりましたが、なるべくシンプルにカッコよくという方針は変わらないですね」と話す平田さんが今回の撮影会に乗ってきたのは、2013年式のトヨタ・クラウンハイブリッド アスリートG(AWS210)。

下取りとして入庫したクルマをベースに、リップスポイラーやトランクスポイラーを追加するなど普段乗りの快適さを維持するカスタムを実施。純正ホイールも黒に塗り直し、ボディカラーとマッチングした全体的に落ち着きのある仕上がりとなっている。
「速くてカッコいいのに燃費もいいなんて最高」とお気に入りだ。

しかし、こちらのクラウンは撮影会後に「購入したい」というお客さんが現れたため、次の相棒としてレクサスの『F』シリーズの1台であるGS Fを手に入れたという。
「ずっとセダンに乗り続けてきたし、仲間同士で遊んでいた頃から速いセダンに乗ることがこだわりだったところがあるので、GS Fはそれの究極系という感じですね。長く乗っていきたいです」と平田さん。

まだGS Fにカスタムを施すまでは踏み切れずにいるというが、これから平田さんが新たな愛車をどう仕上げていくのか?楽しみなところだ。

また、国産セダンとのかかわり合いが深い平田さんだけに、これまでの愛車ライフにおいて重要なポジションにあり続けてきたクラウンを、再び手にする日がやってくるのは、それほど遠い未来ではなさそうだ。

取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ

(⽂:長谷川実路 / 撮影:平野 陽 / GAZOO編集部)