FR車で15年間続けたジムカーナにGRヤリスで新たなチャレンジ「いつかは沖縄から本州の大会に」
免許を取得してから15年にわたってRX-7(FD3S)でジムカーナ競技にチャレンジしてきたというオーナーが、新たな相棒として選んだのは四輪駆動のトヨタ・GRヤリス(GXPA16)。競技を中心に据えたカーライフや、それを支えるご家族の声なども伺った。
ブラックとグリーンを基調としたボディグラフィックが目を引く存在感抜群のトヨタ・GRヤリス(GXPA16)。持ち主である沖縄県在住の海ぶどう王子さん(34才)は15年間にわたってジムカーナに真剣に取り組んでいて、このGRヤリスも発売直後にジムカーナ競技の新たな相棒として購入したマシンだという。
海ぶどう王子さんはなぜジムカーナにハマり、数ある競技向きスポーツカーの中でこのヤリスを選んだのか。そしてどんなカーライフを送っているのか? そこにある熱い想いを伺った。
小さい頃からクルマがずっと好きで、免許を取得してからはずっとスポーツカーに乗ってジムカーナ競技を続けているという海ぶどう王子さんが、最初に購入したクルマはマツダのRX-7(FD3S)。
「高校生の頃から一番カッコいいと思っていたFD3Sに乗るっていうのはずっと決めていました。ジムカーナはそのFD3Sを通して出会った人たちに誘われて20才くらいから始めたんですけど、はじめてみたら思っていた以上におもしろくて。このGRヤリスを買うまでは、何台か乗り換えてはいるもののずっとFD3Sで競技に出ていました」
それ以外にも、競技用のNBロードスターを所有していたり、普段乗り用にシルビアやRX-8を所有していたこともあるなど、これまで乗ってきたスポーツカーの愛車たちはすべてFR車だったという海ぶどう王子さん。
そんな彼が四輪駆動のGRヤリスを購入したのは、いったいどんな心境の変化があったのだろうか。
「一昨年、FD3Sから乗り換えるにあたり、最初はNDロードスターやGR86などFRのクルマを考えていたんですが、お世話になっているショップさんからGRヤリスを提案されたんです。ジムカーナにはクラス分けがあるんですけど、同じチームに四駆クラスに参戦しているメンバーがいて、その人とも勝負してみたいと思っていた時にタイミングよくいただいた話だったので『だったら買おう!』と決めました」
海ぶどう王子さんが購入したのは、2020年式のトヨタGRヤリス (GXPA16)。競技車両のベース車用に設定されたRCグレードのマニュアルミッション車だ。
トヨタが1999年まで発売していたST205型のセリカGT-FOUR以来となる四輪駆動のスポーツカーを発売したことで話題になったGRヤリスは、ラリー競技やスーパー耐久などさまざまなモータースポーツシーンで大活躍中だ。
そんな相棒とともに新たなチャレンジをスタートさせた海ぶどう王子さん。しかしRX-7とGRヤリスの特性はあまりに違うため、競技で使うとなると一筋縄ではいかなかったという。
「まず自分が四駆に乗るのが初めてだったので、今までとはクルマの動かし方がぜんぜん違って、それに慣れないといけない。それに新しいクルマの電子制御などにも慣れないといけないんです。ABS制御の効き方だったり、温度が上がると制御が入ってパワーが出なくなったりするから走る直前までエンジンをかけないようにしたり、それ以外にもいろいろな特徴やクセを理解しないとベストな状態で走れません。とにかく仲良くなるのにとても時間がかかっている感じです」
さらに、発売から間もないGRヤリスは、まだジムカーナに合ったセットやチューニングの情報も皆無の状態で、お世話になっているショップ『クランクネオ』のスタッフさんと一緒に試行錯誤しながら少しずつセッティングを変更してきたという。
「自分が練習に行く時はお店のスタッフさんも一緒に来てくれて、相談しながらいろいろと試していきました。購入して2年経つけれど、ようやくだんだん仲良くなってきましたね。最初は思い通りに操ることができなかったけれど、デフのセッティングをメインにいろいろ変更していくうちに、クルマがいい動きをするようになってきています。2022年はほぼショップに預けっぱなしの状態で、大会のたびに仕様変更をしていました」
ちなみに駆動系や足まわりを中心にセットを変更しているこのGRヤリスだが、以外にも車内はステアリングとバケットシートを装着して軽量化している程度なのだとか。
詳しく話を伺えば伺うほどジムカーナへの本気度が伺えるいっぽうで「普段の街乗りはホンダのN BOXです。20代前半はセダンとかにも乗っていたけど、どこに行くのもクルマを停めるのにも軽自動車がやっぱり一番楽ですね(笑)」と、オンオフの切り替えがはっきりしたカーライフを過ごしているようだ。
ちなみに、とても気になっていたド派手なエクステリアのデザインについても伺ってみることに。というのも海ぶどう王子さんご本人は、撮影中も「目立ちたくないんです」とサングラスにマスクを身につけているほどシャイな方だったからだ。
「競技車両なので、目立った方が盛り上がるから見た目は派手でいいかなという感じです。デザインは専門の方にお願いして一気にこの仕様にしてもらいました。デザインの候補は何種類かあって、FRのころはオレンジに乗っていたのでオレンジとも迷ったんですけど、最近実家の家族がカワサキのバイクに乗っているので、揃えてグリーンにしてもらいました」
そう、実は海ぶどう王子さんのご実家は、そのニックネームの通り海ぶどうを栽培する自営業者。よく見るとボディにもローマ字で『MOZUKU&PUCHIPUCHI UMIBUDOU』と大きく貼られていることに気づいた。
「僕は結婚して実家とは別の場所で暮らしていますけど、仕事場には家族みんなが集合します。とうちゃんや弟もバイクやクルマが大好きなんですよ」
そんなご家族のバイクとお揃いのカラーリングにしているところからも、海ぶどう王子さんの優しい人柄が垣間見える。そしてこの取材時には、奥様と生まれてから半年という可愛らしいお子様も、奥様の愛車フリードで同行いただいていた。
ということで、せっかくなので「出会いは奥様からの逆ナンだった」という奥様にもジムカーナに情熱を傾ける旦那様についてお話しを伺ってみた。
「出会った頃はジムカーナをやっているなんてまったく知らなかったんですけど、父親がクルマの修理工をしていて、もともとジムカーナで遊んだりもしていたんですよ。私は父子家庭なので、結婚相手にはお父さんと仲良くしてくれる人を探していて、そんな人を見つけることができました! 私抜きでもお父さんとクルマの話をして楽しんでいたりするので嬉しいですしありがたいです。ジムカーナをやっている姿もすごくカッコいいですよ!」と、奥様は全力で海ぶどう王子さんを応援している強力な味方だ。
お子さんに顔を向けて「表彰台に登るところを見たいね」と微笑むご家族の温かい声援を一心に受けて、仕事にジムカーナに精を出す彼の今後の目標はというと…
「もっとGRヤリスのセッティングを煮詰めていきたいですね。本当は全日本ジムカーナにも参戦したいと思いますけど、養殖関係の仕事なので長期間の遠征に行くのは難しくてで…でも、今後は本州で開催されている大会にも出てみたいです」
サングラス越しで表情ははっきりとはわからないが、ジムカーナへの熱い情熱が言葉の節々から感じられる。
今後もGRヤリスを武器に、沖縄の地で海ぶどう王子さんがますますジムカーナで活躍をしていく姿が目に浮かぶようだ。そしていつかはこのグリーンバイナルのGRヤリスが全国のジムカーナ大会で躍動する日が来ることも楽しみにしたいと思う。
取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ
(⽂:西本尚恵 / 撮影:土屋勇人 / 編集:GAZOO編集部)
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