最初は「微妙」だったけど…どんどん『愛車』になっていったカローラアクシオ“GT"TRDターボ
第一印象は「微妙」だったという。
このテの形をしたクルマは街中で毎日見かけそうなくらい平凡だし、運転免許を取得して夢膨らむ18歳の自分が乗るには渋すぎると感じたそうだ。何なら、少しだけダサい…と蚊の鳴くような声で呟いた。
お祖父様のクルマをディーラーへ売却に行ったときに『掘り出し物を見つけた』と両親がオススメしてきたのが、トヨタ・カローラアクシオ“GT”TRDターボ (NZE141)だったという松浦さん。
「地元はクルマがないとどこに行くにも不便で、でも勤め先まで行くためのクルマを買うお金は高校を卒業して間もない自分には無く、これしか選択肢はありませんでした」と話してくれた。
では、どんなクルマに乗りたいと思い描いていたのかというと、WRCで活躍した目も覚めるような真っ青のスバル・インプレッサだったという。ボンネットには穴が空いていて、リヤには大きめの羽をつけて、車高は少し落としてもいいかもしれない♪なんてニヤニヤ妄想していたそうだが、教習所に通ってクルマの価格を現実的に意識しはじめると、社会人1年目の自分には無理があるということをすぐに悟ったそうだ。
だが、松浦さんは言う。その頃の自分に、このクルマが最高なことを教えてあげたいと。
「愛車という言葉の意味を、徐々に理解していきました。そして、お金を貯めたら乗り換えようと思っていたこのクルマは、どうしようもなくなるまで乗り続けたいクルマになりました」
ワンメイクレースなどでも活躍したカローラアクシオをベースにTRDがチューンしたカローラアクシオ“GT”TRDターボは、直列4気筒DOHC 1.5ℓのエンジンに専用ターボチャージャーとインタークーラーを装着することにより最高出力150psを発揮。トランスミッションはFF 5速マニュアルで、足まわりはTRD Sportivoサスペンションフルセットと、松浦さん曰く、その走りは“羊の皮を被ったオオカミ"だという。
「でも最初は、エンジンがちょっと違うだとか、専用のエアロパーツが付いているだとか、普通のカローラアクシオと少し違うということにすら気付いていなかったんです。そんなことよりも、好みじゃないから早くお金を貯めて違うクルマを買おう、ということしかなかったです(笑)」
「そもそも、免許取りたての僕にはマニュアル車であるということがまず辛かったです。高校の決まりで卒業してからじゃないとクルマに乗れなかったから、3月中旬に運転し始めて4月1日に出社でしょ? 慣れる期間がほとんどなくて、何かあって遅刻したらダメだからと家をすごく早く出ていました」
『オートマ車に乗ってしまうとマニュアル車にわざわざ乗ろうと思えなくなるだろうし、今後仕事でトラックやバスといったクルマに乗ることがあるかもしれないから、乗っておいて損はない』というお父様の教育方針で、1台目のクルマはマニュアル車ということが決まっていたという松浦家。理屈は分かるが、免許を取ったばかりでこのクルマを運転して何度もエンストすると、信号待ちのたびに「上手く発進できるのか」と怖くてドキドキして、やっぱりオートマ車が良かったと思ってしまったと笑っていた。
しかし、そんな松浦さんもこのクルマに乗り始めて2年が経った頃には、山道や高速道路を走ると適度なロール感で操る面白さを味わえたり、加速やステアリングの切れ味のよさに気づいたりと、スポーティな特性が楽しいと思えるようになっていったという。
「ちゃんと乗れるようになった、ということだと思います」
週末のみならず、仕事が終わると頻繁にドライブに出かけるようになった松浦さんの姿を見て、あるときお父様がレカロ製のSR-7 GK100を取り付けてくれたそうだ。
「純正シートは座ると少し反発するようなシートで乗り心地が悪かったんです。父が『シートをレカロに変えると違うよ』とアドバイスしてくれたので、試しに変えてみたら…驚きました」
緩いカーブを曲がる際に横に振られていた体がしっかりと固定され、シフトチェンジの際に操作がしやすくなったこと。また、運転しやすい姿勢になるためクラッチ操作も楽になったということを、シートを変えただけなのに!と興奮しながら教えてくれた。
そんな松浦さんの様子を見たお父様が次に提案してきたのは、マフラーを交換することだった。シートであれだけの違いがあったのだから、マフラーを変えると?と想像すると、居ても立っても居られずに即OKを出したという。
効果はテキメンで、アクセルを踏んだ時のレスポンスが向上して加速がスムーズになったし排気の抜けもよくなったと、大きな手応えを感じたという。
「ここら辺から、アクシオが“ただの移動手段"から“愛車"へと変わっていきました。手をかければかけるほど、どんどん自分好みになっていくという変化がカスタムにはあったんです。そして『次はどこをイジろうか?』と考えるのが楽しくなっていきました」
そして、松浦さんはあることに気付いたのだという。性能に対して見た目がおとなしすぎる…羊の皮を被ったオオカミすぎやしないか?ということに。
走りがスポーティーになっているのだから、外装もそれなりにしなければと、モデリスタ製のリヤスカートや、ホンダ・アコード(CL1)用のMUGEN製ウイングを取り付けるなど、外装にも着手し始めたのだそうだ。
特にウイングは他車種用だっため、実際にトランクに取り付けられるのかなどをお父様と検討して何度もイメージしてから装着に至ったもので、かつて乗りたいと思っていたインプレッサを彷彿とさせてくれて特に所有欲が満たされるアイテムなのだ、と感無量の面持ちだった。
ところで、何度も話題に登場しているお父様は、自分の愛車にもかなりカスタムを施しているという。親子でカスタムなんて微笑ましいと伝えると、お小遣い内だとやりたいカスタムができないから息子の手助けをするという程で自分も楽しんでいるのだ、とのこと。「あれは絶対そうだね」という言葉に妙な説得力がある。
さて、話を戻すと、外装がそれっぽくなっていくのに、内装がグレーの樹脂剥き出しというギャップを埋めたくなり、次は内装に手を加えていったとのこと。そこで松浦さんが行ったのが『調べる』ということだという。今まではカスタムパーツを購入して装着するだけだったが、何か流用できる部品はないか?と自分で初めて検索したと笑みが溢れた。
「カローラフィールダーの内装パネルはピアノブラック仕様に加飾されているんですけど、それを流用することができると知ってチャレンジしました。こういうパーツ流用ってみんなけっこう当たり前にやったりしていると思うんですけど、それでも僕にとっては初めてで特別なことに感じました。だって、今までこんなことをしたことなかったから」
ドアパネルを外してパカっとはめる。言ってしまうとそれだけの作業なのに、体中に充実感がみなぎったという。
その後、カーボンボンネット、フロントとサイドのエアロパーツ、ヴィッツ用クイックシフトレバー、OZ製スーパーツーリズモWRCホイール、XYZ車高調という順に交換していったそうだ。そして、それに比例するかのように愛着も湧いていったという。
「見た目や機能性など、変化や効果を実感出来るというのは、予想以上に楽しかったです。クルマいじりって面白いの?と、僕のように思っている方がいたとしたら、ぜひ1回挑戦して欲しいです。絶対に楽しいから!」
松浦さんはこれからもカローラアクシオGT TRDターボモデルとの濃密な時間を積み重ねていくだろう。
取材協力:やまぎん県民ホール(山形県山形市双葉町1丁目2-38)
(⽂: 矢田部明子 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]
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